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世界の株式市場



 世界の株式市場は、コロナ変異型の感染が広がっている中でも、比較的堅調に推移しています。米国は高値圏にあり高値更新を続けており強さが際立っています。

日本は欧米並みに好調とは言えませんが、大きく下落することもなく推移しています。6月以降、外国人投資家が売り越し基調であるため、力強さがないところが気になるところではあります。



7月には、IMFが世界経済見通しを更新しましたが、2021年の見通しが4月の予想から修正されています。

米国は+0.6%で7.0%、ユーロ圏は+0.2%で4.6%、英国は+1.7%で7.0%と先進国は軒並み上方修正で先進国平均も+0.5%で5.6%になっていますが、日本だけが-0.5%で2.8%と一国だけ蚊帳の外です。

A.S.E.A.N.5か国も-0.6%で4.3%となっており、先進国有利が鮮明です。



株価も欧米有利になっており、年初からの上昇率は米国S&P500が+18.4%、欧州各国も15%から24%程度の上昇率になっている一方で、日本は2.3%程度の上昇率に留まっています。上海、香港などもほとんど上昇してませんし、フィリピン、タイなどのように下落している国もいくつかあります。例外はインドだけで、20%超上昇しています。



一方で、世界的にも昨年から今年初めぐらいまでの上昇が大きかったため、最近の比較的小動きな状況は「弱い」と感じさせる面もあります。



これには、主な理由が三つあると考えられます。

一つ目は、コロナによる「ロックダウン」等の政策は各国が取りにくくなっているため(財政負担が大きすぎるため)、デルタ型の感染が広がっても経済は回復するというシナリオが定着し始めていることを背景に、「金利が上昇する」と予想する投資家が多く、そのためGAFAMを筆頭にした世界のデック系株の下落を気にしている面があります。

コロナによる財政出動により各国が金利を低下させ、市中に膨大なマネーを流し続けたことが、空前の金余りを生み、その資金が株、商品、不動産、高額品などに流れ込み、株などが上昇しましたが、経済が回復すれば金利が上がりはじめ(実際には現在は6か月前よりも金利は下がっています)、逆に株などから資金が流出していく、その時に最も打撃を受けるのがGAFAMを筆頭にしたテック系株だと想定されているからです。



二つ目は、米国がGAFAMなど巨大IT企業の「解体」に本気で取り組むのではないかという強い懸念です。

富が集中している巨大IT企業解体の指揮を執ると思われる、米国連邦取引委員会(FTC)の委員長に、アマゾンを筆頭にした巨大IT批判の急先鋒であるリナ・カーン氏が就任したことにより、その懸念は益々高まっています。

同氏は法学者でありビジネス経験が全くないため「ビジネスの常識」や「資本主義の常識」が全く通用しないと見られています。

さらに、反トラスト法担当のトップにもグーグル批判の急先鋒の弁護士ジョナサン・カンター氏が就任したため、余計に懸念は強まっています。

20年以上前にマイクロソフトが同じようなことになり、最終的には4年間の抗争の末司法省と和解しています(解体はされなかったが2012年まで司法省の事実上監督下に置かれた)が、1980年代には巨大通信会社AT&Tは事実上解体されています。



三つ目は、中国共産党のテック系企業の締め付け強化です。

アントファクトリーの上場延期(事実上は当面断念)、アリババ、テンセントへの締め付け強化、学習塾産業への規制強化、滴滴出行への規制、ゲーム会社への新たな締め付け、そして次のターゲットはTikTokだという観測がWSJから出始めています。



アリババ、テンセントは時価総額を大きく落としており、特にアリババは世界の時価総額ランキングトップ10から脱落しました(先週末現在)。

今年になってから、中国テック系企業の時価総額はあわせて100兆円以上が吹き飛んだといわれています。(損失を受けた投資家は世界中にいます)



これらは、世界の経済、市場にとっても大きな懸念材料であり、日本でも任天堂株が急落したり、SBGが春以降下落し続けている(約35%の下落)ように影響が出始めています。



これらはすべて先を予測する上での「懸念材料」であり、投資家は気分的には「そろそろ天井ではないか、そろそろ売っといた方が良いのではないか」などと考えているので、昨年のような強気になれないのが正直なところだと思います。



しかし、最も下落が気にされているGAFAMの株価は堅調です。

7月30日の米国市場では前日発表されたアマゾンの4月から6月の決算で売上高が市場予想を下回ったこと、7月から9月も経済回復に伴い、売上高の伸びが弱まると自ら予想したため、「アマゾンショック」が起こり、一時8%安と急落しましたが、その後は戻り基調です。直近高値からの下落率も11%程度で踏み留まっています。

他の3社(マイクロソフトは高値更新中)は直近の高値から2~3%程度安い水準で推移しており、大きく下落するような状況ではありません。



直近のGAFAM合計の時価総額は約1,020兆円程度を保っており、これは東証の時価総額735兆円を大きく上回っています。たった5社で東証の約1.5倍になるというのは驚愕に値すると思います。



さらに、GAFAMの今期の予想利益合計は約32兆円超であり、日本の上場会社すべての利益の合計約44兆円の70%超という、これも驚愕の数字です。



また、GAFAMは社債発行を上手に利用して、自社株買いを積極的に行っており、今年の自社株買い総額はアップルの約9兆円弱を筆頭に5社で約20兆円程度と推定されており、5社合計の設備投資額約11兆円の2倍弱の金額を投じるとされています。



寡占・独占に近い状態は、多額の利益を生むことに繋がっており、信用力の高さから来る超低金利での資金調達を合わせて、実に30兆円以上の金額を自社株買い(株主還元)と設備投資に使える体力は、他を寄せ付けない状況であると言えると思います。



このようにGAFAMの圧倒的な強さをみると、最も値下がりリスクがあると考えられるGAFAMの株式を「手放す」ことに逆に投資家が「恐怖」を感じてしまい、「持たざるリスク」を感じる投資家が多いことが、逆風の中でも「堅調」な株価を維持していると考えられます。





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