見出し画像

インサイダー取引

ドンキの元社長が自社の公表前の重要事実を知りつつ、友人に「自社株の取得を推奨」した疑いで逮捕されましたが、簡単に解説させて頂きますね。

(某居酒屋にて…。) 久々に友人とプライベーでト一杯やることになったA社(上場会社)の社長B氏は友人との会話も弾み、お酒の量も増えていました。現在A社はある上場企業と合併の交渉をしており、概ね合意しており、数週間以内に会社として「正式にプレスリリース」する予定になっていました。お互いの会社の話しになりB氏は、

「うちの会社の株上がると思うんだよね・・・」

と思わず口が滑りました。

それを聞いた友人は、翌日市場でA社の株式を買いました。それから数週間後、合併が正式に発表されA社の株式は大きく値上がりし、友人は大儲けしました。ドンキ元社長の逮捕理由である「株式の不正推奨」とは、このようなことを指します。

「うちの会社の株上がると思うんだよね・・・」(ドンキ元社長の実際の言葉ではありません、私の推測です)と言っただけで「何で上がるのか根拠は言ってません」が、上場企業の「公表前の重要事実※」を知る役職員が、このようにつぶやきのように言ったことにより第三者が株式を売買すれば(損得は関係ありません)、立派な犯罪になるということです。(規則で重要事実に該当する事象等は決まっていますが、ここでは省きます)。

なお、不思議に思われるかも知れませんが「何で上がるか根拠を言ってない」ことにより、大儲けした友人は「無罪」となります。これが「合併するから」と根拠を言っていたとすれば、友人も逮捕(又は課徴金納付命令)されることになります。

したがって、このような例では、友人が実際に株を売買してなければ、A社社長も問題ないと言うことになります。

今回のような「理由を言わずに推奨する行為」は2014年から「違法」とされるようになりました。それ以前は「違法」と認定されるには「上がる・下がる根拠」が必要であったのですが、この抜け道を使って実質的なインサイダー取引が主にベンチャー経営者を中心に横行していたので、法律が強化された背景があります。

上場会社は「インサイダー取引」に関しては、役職員の研修などを通じて厳しく指導しているのが一般的です。

しかし、上記のように「何気ない一言」が大事になってしまうこともあるということですね。

インサイダー取引は、行政権の行使である「課徴金納付命令」で済む場合がほとんどですが、当時者の当該会社での「地位」や「悪質度合い」「金額」などを考量して、刑事告発される場合もあります。今回は後者になったということだと思います。(2014年以降の根拠を明示しない推奨という行為について、刑事告発されるのは初めて)。なお、一部報道では、「後日、追加で購入することを勧めた」とされていますが、これが事実だとすれば「大罪」と言わざるを得ないと個人的には思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?