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ケルト人と謎の古代人スキタイ(7)

前回告知した通り、スキタイが持ち込んだと思われる、古代ギリシャ神話と日本神話の類似点を紹介していきます。

<イザナギの黄泉の国訪問とギリシャ神話のオルペウス伝説>
有名なイザナギの黄泉の国訪問の話ですが、妻であるイザナミが火の神を産んだ時に大火傷を負ってしまい亡くなります。
イザナギは亡くなったイザナミを上界に連れ戻そうとして、危険を冒して冥界に降りながら、結局は失敗してしまします。
相愛の二人でしたが、イザナミがイザナギの冥府到着前にすでに冥界の食物を口にしてしまったために、原則的にはもう生者の仲間入りはできなくなっていました。しかし、イザナミは「然れども愛しき我が汝兄の命、入り来ませること恐し。かれ還りなむを。しまらく黄泉神と論はむ。我をな視たまひそ」と言って、黄泉の神から帰還の許可を取り付けるために、再び殿の内に入っていったとされています。
 イザナミの上界への帰還を決定的に不可能にした理由は、その場に残されたイザナギが、イザナミの帰りの遅いのにしびれを切らして「どうか私を見ないでください」という彼女の禁止に反して、火を灯して殿の中に入っていき、腐乱した屍体となった亡妻の姿を見てしまったことでした。
一方、ギリシャ神話のオルペウスですが、妻のエウリュディケが毒ヘビに噛まれて落命したので、オルペウスは妻を取り戻すために冥府に入りました。彼の弾く竪琴の哀しい音色の前に、冥界の番犬ケルベロスもおとなしくなり、冥界の人々は魅了され、みな涙を流して聴き入りました。ついにオルペウスは冥界の王ハデスとその妃ペルセポネの王座の前に立ち、竪琴を奏でてエウリュディケの返還を求めました。オルペウスの悲しい琴の音に涙を流すペルセポネに説得され、ハデスは、「冥界から抜け出すまでの間、決して後ろを振り返ってはならない」という条件を付け、エウリュディケをオルペウスの後ろに従わせて送りました。目の前に光が見え、冥界からあと少しで抜け出すというところで、不安に駆られたオルペウスは後ろを振り向き、妻の姿を見てしまい、それが最後の別れとなってしまったのでした。

<アメノウズメとバウボ>
上に出てきた妃ペルセポネは、元は母のデメテルととともに、上界で仲睦まじく暮らしていたのですが、ハデスに突然冥界に連れ去られてしまいます。しかもこの誘拐は、神々の王ゼウスの承認のもとに行われたものであったため、デメテルは深い恨みを抱き、神界を離れて人間の世界を放浪しました。
あるときデメテルはエレウシスにきて、ケレオス王の館に招かれます。デメテルは娘のペルセポネを奪われて以来、一言も口を聞かず、一片の食物も口にしていませんでした。しかし、このケレオス王の館で、王妃とその侍女、そしてバウボという女性から受けた真心のこもったもてなしによって、彼女はいくらか心を和らげ、長いあいだの断食に終止符を打ちました。
一説によるとこの時、デメテルが出された料理をいっこうに口にしないことに業を煮やしたバウボが、自分の性器を露出させて笑いを誘い、ついに食事をすることを承諾したのでした。
それに対応する話として日本のアメノウズメは、天岩屋に隠れたアマテラスを招き出すために、岩屋の前で踊りながら恥部を露出し、神々を笑わせました。

<アマテラスとデメテル>
アマテラスが岩屋に閉じこもったのは、スサノオの乱暴に対して憤ったためであり、またこのようにして日神が隠退した結果、世界が暗闇になり、無秩序状態に陥ったとされています。
デメテルに関しては、他にもアルカディア地方において別の縁起譚が伝承されています。
デメテルはある時、アルカディア地方を通りかかった時に、彼女に対し情欲を燃やしたポセイドン神によって後をつけられていることに気づきました。彼女はとっさに一頭の雌馬に姿を変えて周囲の馬の中に混じって、ポセイドンの目をくらませようとしました。しかしポセイドンはデメテルの変身を目ざとく見破って、自らも牡馬になるとデメテルを捕まえて、無理やりに情欲を遂げたのです。
この結果、デメテルは大女神とアレイオンと呼ばれる一頭の神馬を産みました。
この事件から、デメテルはポセイドンの理不尽な行為に憤り、山中の洞穴のの中に閉じこもって、作物を成育させる大地女神としての機能を果たすことを辞め、世界を飢饉に陥れたのでした。困惑したゼウスは、運命の女神モイライを派遣して説得にあたらせ、ようやく洞穴から出させることができたのです。
そしてアマテラスが岩屋に篭った原因は、弟のスサノオが神聖な織屋で作業をしていたアマテラス(分身とみられるワカヒルメ)のもとに、生きながら皮を剥いだ馬を投げ込み、驚きのあまり手に持っていた梭を性器に突き立てて重症を負ってしまったことが原因でした。
さらに、デメテルに乱暴を働いたポセイドンは、クロノスとレイアという同じ父母から生まれた弟に当たります。ポセイドンはご存知の通り海の支配者であり、また原初的性格においては、地下水をつかさどり地震を起こすなど、大地、ことに地下の世界と関係の深い神格であったとされています。
一方アマテラスを怒らせたスサノオも弟であり、最初は父のイザナギから海の支配者に任命され、結局は地下の根の国の主になっております。
古事記に「天にまゐ上りたまふ時に、山川悉くに動み国土皆震りき」といわれているように、その移動によって地震を引き起こす神格であることを思わせてもいるのです。

今回紹介した以外にも、ギリシャ神話と日本神話の類似性はありますし、南方起源の神話などと照らし合わせると、日本の神話とのパラレルは世界各地に多く存在しています。
ワンワールド史観を学ぶ者として、今更ながら嘗てはワンワールドだったんだな。と神話を通して実感することができました。
独自の言語や文化が各地域の地理的自然条件や気候風土によって発展、成熟していき、独自性を形成していくことによって、現在の姿に変貌を遂げていったことが朧げながらに想像することもできます。
ここまで書いてきて、この回の内容で思うことは、時代の流れもさることながら、女性の役割の大きさです。
男は暴れて地震を起こして、なんだか情けない限りですが、
女性を怒らせてアマテラスやデメテルが御隠れになって飢饉が起こった時も、ウズメやバウボに身体を張って助けてもらっていることを考えると、混沌とする今の時代に女性をより一層大事にすることが求められていると痛切に感じます。

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