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”思いつき”定義集Ⅱ㉛「ま・み」

【マス(mass)】マス・コミュニケーション、マス・ゲームなど身近なところで使われているが、その正体は不明。意味自体は大衆・群衆といったところだが、マスとは基本的に「消されている」がゆえに成り立つ概念である。メディアで匿名・ペンネームが使われるのはその判りやすい証しの一つ。実態はあるはずなのに見えない(invisible)存在とも言えそうだ。
 例えば、個人がマスコミに攻撃されると、マス=「個性のない数」がバックになって個はその威力の前に跪くことになる。マスは文字通り個をどこまでも圧殺するための武器になり得る。個がマスの構成要素であるにもかかわらず、個はマスに抗う術を持ち得ないのである。
◆注:他の意味もあるがここでは最頻と思われる「マス」で。

【まずい】①美味しくない料理への侮蔑的表現。おもに味そのものについて使用されるが、誰と食べるか、飛び交う会話にもよる。嫌いな人との会食は可能な限り回避するのが賢明か。まずい料理も美味しく味わう術はある。
②別言すると「ヤバい」。心中穏やかでいられない状態(「まずいことになったぞ」)。失言・暴言・ハラスメントなど政治家や組織の幹部をはじめ責任ある地位にある人に襲いかかることが多い。もっとも、言い訳のテンプレートも多数用意されているので、さほどのダメージはないだろう。

【みじめ】残念ながら常にどこかに存在する、大半の人が経験する心理状態。いつぞやの自分という人もいれば、今の自分という人もいる。
 程度の差もある。とことん凹む人には慰みが処方箋(「大したことないよ!」)。実際のところ「大したこと」など大して存在しない。傍から見て「みじめ」でも、まれに無自覚な人もいる。この場合、処方箋は不要。というか見つからない。

【民族浄化(ethnic cleansing)】「他民族」を排除して「自民族」のみの世界を一定の範囲内で創出しようとする、永遠に実現しない試み。手段としては差別・迫害・追放・殺害。客観的には妄執に突き動かされた「異常」。主観的には自覚なき脅迫観念に突き動かされた「正常」。いずれの行為にも大儀として「正義」という文字が跋扈する。どこにでも起こり得る。
 ジェノサイド条約が認定されたルワンダ。旧ユーゴスラヴィアのボスニア・ヘルツェゴヴィナやコソヴォ、そしてイスラエルによるパレスチナ(アラブ)人虐殺などがある。
◆推し文献:いずれも古いが読む価値はあると思う。千田善『ユーゴ紛争』(講談社現代新書、1993年)、N・ステファノフ、M・ヴェルツ編『ボスニア戦争とヨーロッパ』(朝日新聞社、1997年)、M・イグナティエフ『軽い帝国――ボスニア、コソボ、アフガニスタンにおける国家建設』(風行社、2003年)、I・パぺ『イラン・パぺ、パレスチナを語る』(柘植書房新社、2008年)。

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