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「赤星ゼミの考今学」第2話

(船の上、赤星、碧、桃の3人)
桃「わあ!見てください!とうとう到着ですよ!軍艦島!」
[竜ヶ崎桃, 研究生, 21 歳(元気なおてんば娘。明るい性格テンションも高いが礼儀も正しく 好かれやすい)]
(見開きかページ大きく使って軍艦島の絵、ただしこの時の軍艦島の建物はほとんどが崩壊していて跡地のようになっている。)
桃「(どうして私たちがここに来ているのかというと…)」

(回想、研究室にて)
桃「先生!国家認定考古学者になったら今まで入れなかった遺産や建造物に一緒に連れて行ってくれるって言ったじゃないですか!」
碧「駄々をこねるなよ。子供じゃあるまいし。」
桃「碧君は私たちいない間にいろいろ見れたからいいじゃん!紫苑君もそう思うよね!」
紫苑「いや、おれは別に。(早く帰りたい…)」
赤星「まぁまぁ、落ち着きなさい。」
(赤星、契約書を取り出す。)
桃「なんですかこれ?」
赤星「軍艦島へ入るときの契約書だ。なんでもまだ崩壊する危険性があるから”何が起きても自己責任である”ことの規約書を書く必要が…」
桃「軍艦島!?」
赤星「約束してたからね。まぁ立ち入るのはもう建物が崩壊し終わった安全地帯のみになると思うが。」
桃「そんな、滅相もございません。ありがとうございます赤星先生!」
碧「(先生が一番行きたかったんだろうなぁ…)」
赤星「ちなみに2人まで同行が許されているんだが。」
(碧、無言で手を挙げる)
(回想終わり)

桃「正式名称を端島とするこの島はかつて軍艦島と呼ばれ世界遺産にも登録されました。しかし、建物の風化が始まり2026年には建物の一つが完全崩壊。その危険性から島は完全立ち入り禁止となり、崩壊がさらに進んだ現在”廃船島”とも呼ばれています。さらに2030,40年代には誰もいないはずのこの島に人影が見えたという都市伝説が広まり”幽霊船”とも呼ばれたこともあるそうです。」

栗須優剛「素晴らしい。よく調べてらっしゃいますね。」
[栗須優剛, クリスホールディングスCEO, 37歳]
桃「ありがとうございます!そりゃあもう下調べするのは当たり前ですよ!」
赤星「私からも感謝申し上げます。栗須社長自ら同行してくださるとは。」
栗須「いえいえ、とんでもない。挨拶が遅れました。この軍艦島の管理を任されているクリスホールディングスのCEO、栗須優作です。
なかなか入れる場所ではないのでぜひ楽しんでいってください。」
赤星、碧、桃「ありがとうございます!」

(一同上陸)
栗須「さぁ、到着です。皆さん足元にお気をつけて。」
(中心の大き目の建物数軒を残して他は瓦礫と草木が生い茂っている。3人が感動しながら中心を見上げているような構図)
栗須「調べて頂いていた通り、この島の建物はほとんどが瓦礫の山になっており草木も生い茂っている状態です。それでも中心の建物は原型をとどめており、まさに奇跡といってもいいでしょう。」
(はしゃぎながら探検する一同)(ダイジェストで)

(赤星と碧がコソコソ話。歩きながら)
碧「栗須社長、メディアで見た通りの人でしたね。」
赤星「ああ、顔も頭もいいうえに人当たりもいい。完璧超人とは彼のことを言うんだろうね。」
碧「でも実際はどうなんでしょうか。クリスホールディングス。今でこそ日本いや世界トップの大企業ですが、会社の設立当初は黒い噂の絶えない企業だったそうです。」
赤星「碧君もよく調べてるじゃないか。」
碧「当然ですよ!会社を設立したのは栗須晃平。この人もかなりの曲者で極度の優生思想家だったそうです。2017年に創立されて以来社長は代々その家系で継がれていて、今では日本の大国柱。となっていますが…」
赤星「まぁ、怪しむ気持ちもわからなくないがね。
少し補足させて貰うと、この栗須晃平が本を出しているのは知っているかい?」
(電子書籍を取り出そうとする。優勢思想を語った本。)

(ここで横槍が)
栗須「どうか、しましたか?」
(覗き込むように)
碧、赤星「い、いいえ。」
栗須「さて、ここが唯一残っているアパート群、通称最終団地です。」
赤星「素晴らしい。実際に見るとまさに圧巻だね。」
桃「先生!早く見に行きましょうよ!」
栗須「お待ちください。
ここから先は危険エリアです。契約書にも記載した通り、いつ崩壊するかわからない、命の保証がないエリアです。いくら国家認定ライセンスをお持ちの赤星先生であってもここは引き返すことを強くおすすめします。」
赤星「…そうだな。ここで引き返すことにしよう。」
桃「先生、そんな!ここまで来て眺めて帰るだなんて、納得いきませんよ!」
赤星「いいかい、桃君。私は君たちの先生として君たちの命を預かっているんだ。だからこの先にはいかせるわけにはいかない。絶対にだ。二人とも、わかってくれるね。」
碧「はい、わかりました。」
桃「ううぅ」

赤星「ということで、この先は私一人で行ってきます。」
碧、桃「ん?」

赤星「そりゃそうだろう。これを目の前にして手を引けなんて無理な話だよ。」
桃「そんなっ…」
碧「(まぁ、そんなことだろうとは思いましたよ。)」
赤星「ということで栗須社長、二人のことお願いしてもいいですか?。」
栗須「はい、わかりました。赤星先生もくれぐれもお気をつけて。」

(赤星最終団地探検)
赤星「間近で見るとやはりすごい劣化だな。」
(アパートの中を軽く探索)
赤星「(これは…)」
(何かに気づく赤星)

(さらに中心部へ探索を広げる、何かを発見)
赤星「なんだこれは。こんなものがここに存在していいのか。これは明らかに、
1900年代の建物ではないぞ!」
(2000年代中盤に作られた巨大な施設。ツタまみれ。3軒連立している。)
(赤星、施設の探索開始)
赤星「なんなんだこの建物は。明らかにほかの物と系統が違う。中は…
さすがにもぬけの殻か。」
(キッチンと広めの空間を発見)
赤星「ここは食堂か…かなりの人数での食事ができそうだな。」
(ホテルのようにたくさんの部屋があるフロアを発見)
赤星「これは…ここで生活をしていた人がいたのは確実なようだな。とすると補強工事をしていた際の仮説住宅?それにしては建物がしっかりしすぎているし…だが軍艦島にホテルがあったなんて情報も見たことがない。そもそもこんな危険地帯にホテルなんて…」
(医務室を発見。手術台もある)
赤星「医務室まであるのか。ただ、医務室にしては本格的というか…この島唯一の病院といったところか。」

(さらに探索中、窓の外を見る。似たような建物が裏側にあることを発見する。)
赤星「なっ…1軒だけじゃないのか…
せめていつ建設されたものなのか正確な年数がわかればいいが…
とにかく向こう側の建物も調査してみよう…」

碧サイド
桃「んんー!やっぱり行きましょ!我慢できないわ!」
碧「はぁ、いうと思ったよ。いいか?もし事故があったとして、お前は怪我して治ればいいかもしれないけど、一番大変なのは先生なんだ。責任を負った先生の免許剥奪は確実だし、その責任は竜ケ崎には負えないよ。」
桃「だからってここでじっとしてろなんて、あなたは研究者の風上にも置けないわね。」
碧「正しい研究者だったらここで待つことができると思うけどね。」
栗須「まぁまぁ、二人とも。喧嘩はよしてください。もし何か起きた時私が全責任を負います。それでどうですか?」
桃「いいんですか?」
碧「おい竜ケ崎!」
栗須「そんなに信用できませんかね。何なら契約書でも書きましょうか?」
碧「どうしてそこまで。」
栗須「いえ、私も立ち入ったことがなかったもので。私もこの先にあるものを見てみたいんですよ。」
(栗須、不穏な笑み)

赤星サイド
赤星「どれこっちの建物は…結構系統が違うな。」
(黒板のある教室を発見)
赤星「これは教室か!?まさか生活どころか教育まで?」

(3棟目も探索しながら)
(3棟目は運動ができる場所、発電装置や雨水ろ過装置等もある。)
赤星「ここで何が起きていたんだ。ただ、ここで起きた出来事をクリスホールディングスの人たちは全く知らなかったのか?そんなはずはない。ここには自家発電装置や水道も通っていた形跡もある。ここまで大規模なことができるのは何かしら大きな力が動いていたのは確かだろう。」
赤星「まだ手がかりが足りない…もう一度建物を調べなおしてみよう。見落としがあるはずだ」

碧サイド
(施設を発見)
桃「何これ!?ほかの建物と明らかに雰囲気が違う!」
碧「軍艦島にこんなものがあるなんて、聞いたことないですよ!」
(施設を発見して驚く一行)
碧「栗須社長、これは一体?」
栗須「これは、私も初めてみますね。」
桃「とりあえず中に入ってみましょう。」

赤星サイド
(2棟目に戻りながら)
赤星「これは…」
(赤星が発見したのは2046年の卒業制作。巨大な木造の一枚絵とともに名前、年齢が彫られている。)
赤星「これを逆算すると、この一連の出来事の始まりは2033年前後か。このころの出来事で関わりが深そうなのは…」
(年表を取り出し探し始める。)
赤星「これでもない、これも違う…」
(とある記事を見つける)
“2033年、天才たちが消えた年”
(若い才能ある者たちの連続現役引退、失踪事件)
赤星「まさかこれって。」
(ヒントを思い出す赤星)
“幽霊船” ”最終団地” “クリスホールディングス”“ 優勢思想” “栗須晃平の本” “契約書” “才色兼備な栗須優剛”
赤星「これがすべて繋がっているとしたら。」
(青ざめた顔で碧、桃がいる方向へ走り出す。)
赤星「くそっ、これはまずい!何ならあいつら全員連れてこさせるべきだった!」

碧サイド
(手分けして探索。碧一人と桃、栗須)
碧「なんだこれ、ここに人が住んでたってことか?
おーい竜ケ崎!そっちはどうだ!」
桃「うーん、こっちも特に残ってる手がかりは無さそう。」
(栗須が桃の背後に忍び寄る)

赤星「学生たちが、危ない!」


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