見出し画像

生理が遅れた私の、3日間の記録


※妊活に関する、赤裸々な記録です。人によっては、少々不愉快な表現があるかもしれません。とくに、不妊治療をされている方はこの文章を読んで「何を言うとるんや」と思われるかもしれません。それくらい愚かです。愚かですが、私の率直な思いと学びを記したいと思いました。どうかご理解いただいた上でお読みください。



7月2日

生理が来ない。
今日は生理開始予定日だったはず。朝から夫と出かけ、イオンモールで遅めの昼食を取ったあと、いつも生理の際に感じる腹痛と吐き気に見舞われた。急いでトイレに駆け込んだが、来ていない。いつもはこの感覚だと確実に「来ている」のだが。
トイレの個室の中で、私は静かに興奮を抑えた。



私たち夫婦はこの4月から妊活を始めた。付き合った当初から2人とも子どもは欲しいと思っていた。入籍したのは昨年の夏だったが、仕事が立て込んでいたのと結婚式を無事に終えるまでは…という思いから妊活には至っていなかった。そして3月に結婚式を終え、私が職場を異動になったタイミングで、いざ解禁となったわけだが。


正直に言おう。私はちょっと甘く考えていた。いや、だいぶ甘く考えていた。どのくらい甘かったかというと、妊娠は避妊せずに性行為をすればすぐにできるものだと思っていた。初月である4月、いよいよ私も母になるのか〜とのんきに考えていた私は完全に頭がお花畑だった。

1ヶ月、2ヶ月と経っても私の生理周期は規則的だった。ネットで調べてみたら、健康な若いカップルであっても、一度の性行為で着床する確率は3割程度だそうだ。3割。3回に1回。単純な私は「次はできるだろ…」と思った。それが今月のことだ。


その日の夕刻、こっそりとドラッグストアに行って検査薬を買った。私は比較的生理周期がきっちりとしている。誤差は1日か、あって2日。
これはもしかして、もしかすると。自宅のトイレで震える手で検査薬を手にして、出た結果はしかし陰性だった。

少しがっかりしたが、検査薬が使えるのは生理予定日を7日過ぎてからなので、これはいわゆるフライング検査だ。まだ反応物質であるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が十分に分泌されていないだけの可能性は大いにある。夫には確実なことがわかるまで、まだ言わないでおこう。

布団に入ってからもなかなか寝付けず、妊娠超初期症状についてスマホで検索し続けた。チクチクするような腹痛、吐き気、味覚の変化、眠気、頭痛、喉の痛みなど。「生理前の症状に酷似しているから判別は難しい」とする記事があるかと思えば、「明らかな体調の違いがあってすぐに気づいた」という体験談があったり。要は人には人の妊娠初期症状ってことか。私はそわそわとしながら、眠りについた。



7月3日

月曜日、仕事をしながら気にしていたが、生理が来る気配はなかった。お腹はチクチクといえばチクチク痛む。いつもは腹痛と下痢症状があるのだが、今回便はあまりでていない。これは着床痛…??と仕入れたばかりの知識が頭をもたげ、居ても立っても居られず、帰りにドラッグストアで新しい検査薬を買った。クリアブルーという商品だったのだが、これが残念ながら不良品だった。どちらの窓にも線が出てこなかったのだ。ネットで調べると、どうもこの商品は不良品が多いらしく、仕方なくまた新しい検査薬を買うことにした。何をしてるんだろうとバカバカしくなってきたが、もしかしたら陽性が出るかもしれない、と思うと買わずにはいられなかった。ネットにもそういう人たちがたくさんいたのが救いだった。

追加で検査薬を買ったものの、昨日の今日ですぐに線が出るとも思えなかったので、とりあえず一晩おくことにした。
着床後は急激にhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が増えるらしい。生理予定日には陰性でも、その後日を跨ぐごとにうっすらと線が現れるそうだ。

この日も布団に入ってからネットで情報を漁った。「フライング検査」で調べてみると、ネットの海の中には同じような状況の人がたくさんいた。彼女たちの様子はさまざまだった。
その中に「薄く線が出て喜んでいたが、その後日に日に線が薄くなって消えてしまった」というものがあった。

え?一度陽性だったのに陰性になることがあるの?

さらに調べてみた先で、「化学流産」という言葉に出会った。

化学流産とは、血液中または尿中のhCGというホルモンが陽性になることによってのみ妊娠と診断され,通常の妊娠に移行しないような場合を指す。

つまり、妊娠検査薬で一度陽性が出たにも関わらず、妊娠が成立せずその後生理が来てしまうというものだ。
化学流産は流産にはカウントされない。一瞬だけ繋がり、静かに去ってしまった生命。


それ以外にも、着床して胎嚢が確認できたものの、その後心拍が確認されず流産と診断される場合もあるらしい。また妊娠が成立しても、12週未満で流産してしまう確率は約13%だという。子どもは産む際に大変なのだということは何となくイメージしていたけれど、出産に至るまでの道のりがこんなに厳しいものだったなんて。

果たして私は本当に妊娠できるのだろうか。昨日の浮かれ具合がすうっと嘘のように引いていき、落ち着かない気持ちで眠りについた。


7月4日


前の晩は結局あまり眠れなかった。明け方、もう一度検査薬を使った。結果は陰性。もし妊娠が成立しているなら、少しくらいは線が入ってもおかしくないのだが、今回も真っ白だった。これは望み薄だなと、少し勘づいた。仮にもし着床していたとしても、そこからきちんと胎動が確認できるまでに成長するかはわからない。胎嚢が確認されても心拍が止まってしまうかもしれない。昨晩に調べたことがよみがえり、少し辛くなった。

その日はできるだけフラットな気持ちで働くことを心がけた。が、気持ちはふわふわしたままだった。今日も生理は来なかった。

夜、夫から「ねえ、今月生理来た?」と聞かれた。「来てないよ」と答えると「え!?」と少しそわそわしている彼は、2日前の自分のようだった。いたたまれなくなったので、検査薬を使ったこと、陰性だったことを打ち明けると、夫は小さく笑って「そっか、こればっかりは分からないからね」と言い、きゅっと抱きしめてくれた。
夫の優しさは嬉しかったけれど、その夜は少し辛かった。




翌日、職場でトイレに行ったら血が出ていた。茶色い血。これがどういう意味をもつ出血なのかはわからない。もしかしたら初めから何も起こらなかったのかもしれないし、何かが産まれて、人知れず消えていったのかもしれなかった。
すっきりしたような、切ないような、泣きたいような。そんな感覚で仕事をした。


妊娠、出産は何があるかわからない。頭ではわかっていたはずだった。けれども、知らないことがあまりにも多かったことに気がついた。
妊娠しても、必ず継続できるとは限らない。ある日突然、理由もわからず生命が消えているかもしれない。出産までにこれだけの障害がある。妊娠は一律ではなく、それぞれにグラデーションがあることに今回初めて思い至ったのである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?