吉野の魅力に触れて 〜吉野アンバサダーの活動を通じて〜

 「吉野アンバサダー」の水田です。アンバサダーとして、私は「よしノート活性化チーム」と「PRチーム」に所属して活動しました。期間中、11月にプライベートで1回、吉野ビジターズビューロー主催の視察ツアーで1回、計2回、吉野を訪れました。どこか神秘的な魅力を感じて心惹かれていた吉野。実際に訪ねてみて印象に残った場所について触れてみたいと思います。

吉野杉の家

 「吉野杉の家」は吉野川のほとりに佇む吉野の木材を使用して建てられたコミュニティハウスです。建築家の長谷川豪の設計によって2016年に建てられました。同年に東京のお台場で開催された「HOUSE VISION2016東京展」に出展するため建物を一旦解体して東京に運び、展示会が終了した後に再び、この地に移築されました。1階はコミュニティスペース、2階は宿泊スペースになっています。全て吉野の木材を使って建てられていて、1階部分は杉、2階部分は檜(ひのき)が使用されています。そして杉の皮を擦って和紙として使用しているなど、吉野の木材をふんだんに使っています。
 吉野は林業が盛んな地。建物の前を流れる川は山で伐採されて、吉野川で降ってきた木材の集積場だったとのことです。ここで木材の本数や長さなどをチェックした後、日本各地に送られていったとのことです。郡山市にある奈良県立歴史民俗博物館では吉野の林業をテーマにしたコーナーがあり、吉野杉の伐り出しのジオラマや国指定重要有形民俗文化財に指定されている「吉野林業用具と林産加工用具」の展示を思い起こしながら眺めることができました。宿泊はAirbnbで受け付けているとのことでした。

吉野杉の家
住所:〒639-3113 奈良県吉野郡吉野町飯貝624

吉野杉の家

中井春風堂

 金峯山寺は修験道の総本山で吉野山のシンボル。世界遺産にも登録されています。その金峯山寺のそばにあるお店が中井春風堂。この店では吉野山に自生する葛の根の澱粉(でんぷん)のみを用いた吉野の伝統的な食材「吉野本葛」を使用した「吉野本葛餅」と「吉野本葛切」を食べることができます。メニューはこの2種類のみ。「吉野本葛」の美味しさを味わってもらうために、香りの強い他のメニューは提供しないというこだわりです。そしてなんと、店主の中井さんが説明を交えながら、実際に作り方を実演してくれます。最初に「葛」という植物について、そして「吉野本葛」と「吉野葛」の違いなどについてパネルを使った分かりやすい説明の後、いよいよ調理へ。材料は葛の粉と水のみ。「本葛餅」は一晩水になじませて水を吸いやすくなった葛の粉を鍋に入れて火を通します。白い葛の粉が透明になって、弾力が出てきたら鍋から出して切り分けます。「本葛切り」は水で溶いた葛の粉を湯煎で固めて、最後にバットごとお湯に漬けると、葛の粉が白から透明になります。冷えると白く濁ってしまうとのことで、お湯の中でパットから外して切り分けます。一瞬のタイミングのズレも許されない職人技。「吉野本葛」にかける店主の中井さんの情熱を感じることができます。
 出来上がった「本葛餅」、「本葛切」は店内のイートインスペースで食べることができます。賞味期限は何と「10分間」。それ以降は白く濁ってしまい、弾力感がなくなってしまうとのことです。「本葛餅」「本葛切」のまろやかな食感が黒蜜、きな粉とマッチして何ともいえない美味!電話やメールでの予約は受け付けていないとのこと。吉野に来ないと味わえない、吉野ならではの味覚をぜひ堪能できること間違いなしです。

中井春風堂
住所: 奈良県吉野郡吉野町吉野山545
営業時間:10:00~17:00(オーダーストップ16:30)
4月、11月を除く水曜日、第2、第4木曜日は定休。年末年始を除く冬季は平日休業

中井春風堂

櫻本坊

 櫻本坊は上千本にある天武天皇・持統天皇の勅願寺という由緒ある寺院。ある冬の日に桜が咲き誇っている夢を見た天武天皇(当時は大海人皇子)が役行者の高弟あった角乗にそのことを尋ねたところ、「桜の花は花の王と云われ、近々皇位に着くよい知らせです。」と答えたとのこと。その後、壬申の乱に勝利して、皇位についた天武天皇は夢で見た桜の木があったとされる場所に建立した寺院が櫻本坊であるとのことです。天下統一を果たした豊臣秀吉が吉野で花見を実施した時には研修ツアーで訪れた際にはお寺の伯舟さん、安寿さんがお寺のこと、修験道のこと、薬膳料理のことなどについて丁寧に説明してくださり、境内を案内してくれました。
 寺は現在でも修験道の修行の場として、大峰奥駈修行などを行っているとのこと。また修験道を垣間見ることができる写仏・写経などの修行体験も実施しているとのことです。大講堂内の「百畳の間」からは吉野の景観を一望することができます。豊かな自然の中で信仰を育んで受け継いできた吉野の悠久の歴史を感じることができます。

櫻本坊
住所:奈良県吉野郡吉野町吉野山1269
拝観時間 8時30分~16時(不定休)
拝観料:500円

櫻本坊

 ここで挙げたのは3箇所だけですが、他にも多くの素敵な場所を訪ねることができました。活動期間中、2回だけの訪問でしたが、吉野はどこか心が落ち着き安らぎを感じることができる場所でした。新型コロナウィルスの先行きがまだまだ見通せないですが、これからも吉野に足を運び、吉野に関わっていきたいと思っています。

【記事を書いた人】
水田 壮彦(みずた たけひこ)
大分生まれ、福岡市育ち。現在は東京都在住。観光を通じた地域活性化に関心を持ち、旅行会社で「こだわりのオーダーメイドの旅」を提案している。奈良大学文学部文化財歴史学科卒業。博物館学芸員資格。日本考古学協会賛助会員。

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