YELLOW SUBMARINE

 グローバル企業に就職したのに関わらず英語ができない僕は2年間で日常会話レベルの英会話を身につけることを義務づけられていて、半ば強制的に週に一度の英会話スクールに通っています。授業料も交通費も会社もちなのだから文句はないのですが、成果を出さねばどんな目に合うかわからないのでまあまあのプレッシャーは感じてます。
英会話スクールは初心者向けのコースということもあって非常にゆるい雰囲気で、授業のはじまりは講師の世間話(英語で)から始まります。たいてい、世間で流行ってるものとか、週末に何をして過ごしたかとかを講師が話して、なんとなく雰囲気で受講者に話をふったり、ふらなかったりします。その日はビートルズの好きな曲は?、でした。ビートルズ好きの僕は脳内で「『come together』!」と即答しましたが、普段そんなキャラでもないくせに急にとびつくのはやばいと思い、とりあえずは静観していました。すると、この講師にしては珍しく、十人くらいいる受講者全員に一曲ずつ答えるように言ってきたのです。
いかにビートルズが世界的に有名であっても、そこは活動期間1960〜1970年のロックバンド。ほとんどの受講者はノーコメントでした。それでも、わずかにストロベリーフィールズとかレットイットビーとか返答があると、イギリス人女性講師は嬉しそうに曲を口ずさみ、いかにその曲が素晴らしいかコメントします。特に『strawberry fields forever』はお気に入りなのかノートパソコンから曲を流して聴かせてくれました。
ああ!、ここで僕は逡巡します。『come together』と答えてよいものか。この曲を知ってる人はわかるでしょうが、人気曲ではあるものの明るい曲ではありません。もしもまかり間違ってこの陽気なイギリス人がこの曲をかけようものなら、ここまでの和やかな空気は音をたてて崩れ落ち、ジョージの独特なギターリフとジョンの奇妙な節回しのヴォーカル、そして、彼の才能は枯渇したのか!と音楽評論家に言わしめたトチ狂った歌詞によって地獄の教室と化すでしょう。ちょっといいかも。
そして、僕の番がきた。

 「And you?(あなたは?)」

 「Ah,  『YELLOW SUBMARINE』.」

笑顔が弾ける講師。エンジニアのあなたにピッタリね。あの曲はエンジニアっぽいもの。
なんだかすごく納得顔の講師。
講師が口ずさむイエローサブマリンを聴きながら、僕の脳内でカムトゥギャザーが流れる。

古ぼけた母艦に乗って、あいつはのんびりご機嫌さ
……

今日の音楽
The Beatles「YELLOW SUBMARINE」
フツーに好き。いい曲。
冷静なときにビートルズで好きな曲を聞かれたら、この曲、もしくは「PENNY LANE」と答えたい。
冷静じゃないときはカムトゥギャザーかマクスウェルズシルバーハンマー。

最後まで読んでくれてありがとー