会社の日記

やれやれ、今日は遅くまで残業だったなぁ。

お先に失礼します、と上司の烏天狗に声をかけると、おう!気を付けてな!と威勢のいい返事が返ってきた。ぶっきらぼうだが、心根の優しい良い上司だと思う。
河童先輩がちらちら見てくる。奇妙なふるまいが不気味だけどわるい河童ではない。尻子玉を何度か狙われたことがあるが、それは河童の生理現象のようなものだから仕方ない。

執務室を出てロビーまで降りると、ひょうすべさんと豆狸ちゃんが立ち話をしていた。ひょうすべさんはおしゃべりで場を明るくしてくれるから良い妖怪だが、たまにしつこい時がある。豆狸ちゃんが少し困っているように見える。
あ、ひょうすべさん!さっき、河童先輩が探してましたよ!
ひょうすべさんは、お!そうかい!とそそくさと執務室へ上がっていった。ひょうすべさんは河童先輩に気があるのだ。

豆狸ちゃんはにやにやしている。
吉村さん、嘘ついたでしょ。
僕はそしらぬ顔で答える。嘘じゃないよ、思い違いをしただけだよ。
わたし、嘘はわかるのよ。人を騙すのは得意だもの。
ほお、そうですかと頷いていたら頬っぺたにキスをされた。
助けてくれてありがと。豆狸ちゃんはいたずらに笑いながら去っていった。
こわい狸である。

駐輪場に着くと、まだ輪入道が6つも残っていた。みんな遅くまでがんばってるなぁ。
僕は輪入道に乗り込む。わっしょい!わっしょい!と絶叫しながら走る輪入道は、うるさいけど自動運転だから便利だ。老朽化した社屋を支えているだいだらぼっちに会釈をしてから家路につく。

最後まで読んでくれてありがとー