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通崎睦美さんの「木琴」

通崎睦美さんの『今、甦る!木琴デイズ』が20回を迎える。


通崎睦美さんは、「木琴奏者」である。

今の時代、木琴といえば「マリンバ」を指す。木琴には大きく、主に高い音で硬い音で響く「シロフォン」と、主に低い音で柔らかい音で響く「マリンバ」とがある。

今の芸大・音大の打楽器専攻で、鍵盤を専門とするといったら、基本的に「マリンバ」が思い浮かぶ。マリンバは音域が広く、同時に鳴らせる音も4~6と多いため、編曲もオリジナルも独奏で演奏しやすい。また、アンサンブルで演奏するにも、他の楽器との調和をはかりやすく、メロディにも伴奏にも対応できる。オリジナル作品も数多く作られ、前衛音楽としても、ポピュラー音楽としても親しまれている楽器である。

一方の「シロフォン」は、独奏で演奏することは難しい。同時に鳴らせる音は概ね2で、3以上になると響きが渋滞して、聞き取りづらくなってしまう。技術的にも鍵盤の幅が狭く、音色のコントロールも難しいので、独奏のハードルは高い。だから、大抵はピアノ伴奏が前提となる。また、アンサンブルの中でも、たとえそれが大編成の吹奏楽であっても、圧倒的に目立つ音域と音色によって、立ち位置の難しい楽器になっている。当然、オリジナルの曲は少なく、マリンバを前提として書かれた曲を演奏することが多い。だが、マリンバとは音域も音色も違うので、実際には違和感や演奏上の困難を生じることも多い。

そんな中で、いわゆる「シロフォン」を演奏するのが、通崎睦美さんだ。厳密には、「木琴」と称している。確かに、一般的なシロフォンとは響きが違う。平岡養一という名木琴奏者の楽器を受け継いでいるのだが、そこには唯一無二の響きがある。


僕が通崎睦美さんの演奏に出会ったのは、CDだった。「スパイと踊子」というタイトルだった。

数々のマリンバの演奏は聴いていたし、演奏していたし、CDもたくさん持っていたけれども、このCDには「木琴」とあった。「マリンバ」とは違うのか。「シロフォン」でもないのか。それが気になって、購入した。

聴いてみると、それまでに聴いたことのない音色が広がっていた。もちろん、録音環境もあるのだけれど、なんとも心地良い響きだった。軽やかで、それでいて深みのある響きをしていた。


このCDとの出会いが、後に卓上木琴で演奏を始めるときの後ろ盾になっていた。マリンバでもシロフォンでもない「木琴」の可能性を知ることができたことは大きかった。

僕が現在演奏している「卓上木琴」は、シロフォンに近い。だが、一般的なシロフォンよりもずっと音域は狭く、響きが少ない。共鳴管はなく、音盤も狭い。それでも、その演奏の手軽さと、独特の響きに可能性を見出している。


通崎さんの演奏会にも行きたいと思いつつ、なかなかその機を逸しているのだが、今年は一度はチャンスをつかめたらと思っている。

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