60 デジタルの力

デジタルによる民主主義というのが実現できるのでしょうか。
オードリー・タンさんの『デジタルとAIの未来を語る』という本を読んでみました。
本の中ではオードリーさんが重視する、政治の透明化によって色んな人の意見が政治に反映されるシステムについて書かれていました。
通常、誰もが自分の意見が反映されると思えば、本気で考えて意見を述べるでしょう。
しかし、日本のような1億人以上の人口が一堂に会することができる場所はありません。
オードリーさんが突いたのはまさにそこでした。
デジタル空間であるならば、誰にでも一定程度の実現可能性があるということです。
もちろん、デジタルのリテラシーが高くない人々もいます。
そういった人々に対しては、デジタルを押し付けたりせず、その人たちが参加できる方法を考えていく。
ただし、デジタルの技術を教えることも同時に行い、デジタルが使える人々を増やしていく。
台湾では地方から情報インフラの整備を進めているようです。
そして、オードリーさん自身が社会から自分が持っていない新しいものの見方を学ぼうとしている姿勢を持っています。

オードリーさんは情報公開を実践しています。
そして、市井の人々の意見を積極的に募っています。
選挙権のない高校生のアイデアが実際に採用されたこともあるそうです。
何だか徳川吉宗の目安箱のようですね。
私は台湾の政治の姿勢に誠実な態度を感じました。
そして、人々も積極的に様々な社会課題を挙げてくる。
市民が自分事として問題を捉え、社会を良くしようと取り組んでいる。
理想論のようなことを実際にやれているところが素晴らしいです。


しかし、考え方は日本と台湾は似ている部分も多くあると思いました。
資本主義は効率主義を生み出し、日本もその考え方で動いている部分はもちろんあります。
ただ、一方で人とのつながりを軽んじない良さも一方であると思っています。
それは今のデジタルネイティブの世代にもあるし、高い年齢層の方々も持っている。
両者は協力し合える。
そして、デジタルはそれを実現できる場所になる。
そんな可能性を感じた一冊でした。


少子高齢化の問題を乗り越える最前線にいる日本にとって台湾はとても参考になると言えるでしょう。
台湾の人口は2300万人ほどということで、もちろん日本にはそのまま当てはまらないケースもあるかもしれません。
ただ、台湾と日本の関係は、中国と日本の関係とはかなり違います。
日本と台湾のつながりは、今後も大切にしていくべきだと思います。


社会で日々生活する人々は未来へのあるべき姿を捉えています。
そして、そうでない人も捉えている人と一緒に考え、話せる機会があれば、考えるようになるでしょう。
これは選挙権の有無に関わらず、ということです。
選挙年齢に達していなくても、考えることはできるというのがオードリーさんの考え方です。
要するにお上で決めて、大衆を取り込まないと考えるのではなく、みんなが求めている価値観というのはそんなにずれたところにはないと考えた方が妥当なのではないか。

たとえば、今では多くの人が地球環境問題や持続可能といった話を無視できなくなってきているでしょう。


しかしそんなことを大真面目に考え、実践する場はまだ少ない。
そんな場所が現実にあったとしても、忙しい中わざわざ出向く気にもなれない。
でも、デジタル空間ならば少し考え方が変わるかもしれません。
オードリーさんの本をぜひ、読んでみてください。


私は次世代の経済のあり方が気になっていたので、この本を読んで少し光が見えてきた気がしています。

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