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私たちは錯覚している


『仕事の技法』著:田坂広志(講談社、2016/1/20)

なぜ、「プロフェッショナルの書いた本」が溢れているのにも関わらず、「プロフェッショナルになる人間」は少ないのか?

この疑問を解くために「知識」と「智恵」の違いを理解しなければなりません。
「知識」とは言葉で表せるものであり、書物で学ぶことができるものであり、それに対して、「智恵」とは、言葉では表せないものであり、経験を通じてでしか掴めないものになります。

そして、多くの読者が間違えてしまうことは何か。
それは「知識」を学んだだけで、「智恵」をつかんだと思い込んでしまうことです。

本を読む人の多くがこの現実離れした錯覚に陥ってしまいます。
本に書いてある、「ポイント」、「心得」、「技術」にマーカーを引くだけで、読者は何かを掴んだと錯覚します。単に、その知識を記憶しているだけということにも関わらず、著者の智恵を掴んだと錯覚します。そして、マーカーだらけの、智恵の溢れすぎた本を読み返し、現在の自分にとって何が大切なのかを見失ってしまいます。

書物を読み、今、現在の自分が掴むべきと感じたものを仕事で何度も何度も実践して、智恵として体得する。同じ本でも、読む人が抱く課題や問題意識によって線を引くポイントは異なるにも関わらず、現実感や問題意識の無い人のマーカーの線は多くなっていきます。

気付かないといけません。簡単に手に入るものなど何もないと。時間をかけずに熟成するものなど何もないと。得やすいものは失いやすく、それらは代替可能であると。
あなたの後生大事にしている「時間」を「経験」にかえてきたのが、プロフェッショナルなのです。

元三冠王の落合選手のバッティング論を聞いて、頭で理解しても、誰も実践出来ないのです。「できそうだな」と、現実離れした錯覚に陥っているだけなのです。
現実感が無く、浮遊していた私は本書を読み、大変反省することになりました。
働く人に本書を贈ります。