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イライラを最小限にするポーズシナリオ

Karen Pryor Academy ライブエピソード#30では、スエーデンのトレーナーエヴァ・バーティルソンを迎えて、トレーニングの構造的側面についてお話を聞きました。

Eva Bertilsson紹介

物心ついたときから動物が好きだったエヴァは、馬やウサギを飼って育ち、1990年代初頭からドッグトレーニングの世界に足を踏み入れました。当初から積極的な強化トレーニングに取り組み、愛犬とともにさまざまなドッグスポーツに参加し、ハイレベルな服従競技やアジリティのナショナルチームの一員となる。行動分析学の修士号と動物福祉への情熱を持ち、現在は教育者、コンサルタントとして、さまざまな環境、さまざまな動物種と接しています。

ビジネスパートナーのエメリー・ジョンソン・ヴェーグと共同で、カルペ・モメンタムを運営しています。エメリーとエヴァは、幅広いトピックでセミナーやオンラインコースを教えており、シームレストレーニングセッション、スタートボタン行動、フローチャートなどのコンセプトで知られています。彼らはTAGteachの教員であり、人間にとっても動物にとっても最高の学習環境を作ることに尽力しています。エメリーとエヴァは20年前にアジリティーフィールドで出会いました。彼らの著書「Agility Right from the Start」では、トレーニングに対する彼らの哲学と体系的なアプローチを紹介しており、ドッグアジリティー愛好家のみならず、すべてのトレーナーにとって価値のある本になっています。

エヴァはスウェーデン西部のリュングスキルという村に住んでおり、そこで毎年開催されているCCCカンファレンス(Choice, Control & Communication)の主催者しています。彼女はFearFreeのスピーカーであり、Swedish Association for Behavior Analysisの理事でもあり、ネットワーク作りや人と考えをつなぐことを楽しんでいます。製品やオンライン教材を扱うウェブショップABC247を営んでいます。

トレーニングの構造的側面とは

トレーニングといえば、教える行動のみに焦点を当てられがちですが、トレーニングセッションを取り巻くすべての環境を外しては語れません。例えば、ある行動を教える時、その行動そのものとその行動を学ぶために必要な行動(リラックス、焦点を合わせる等)も欠かせません。同時に考えなければならなのが、
◆どの様に発展させていくか
◆トレーニングスペースの準備はどうするか
◆トレーニングの開始はどうするか
◆終了はどのようにするか
◆一つの行動からもう一つの行動への移行はどうするか
◆強化子をどう与えるか
これらを一つ一つを明確にし体系的に構成して初めて、ストレスフリーなシームレストレーニングができるのです。

ポーズシナリオ(ポーズ行動)

ポーズをどのように捉えるか、エヴァはとてもユニークな考え方「ポーズシナリオ」を紹介しています。

トレーニングセッションでは特定の行動を取るわけですが、トレーニングが終了、または休憩中は、何も起こっていないわけではありません。ポーズ(休憩中)にも動物は行動をしているのです。つまり、トレーニング終了(休憩)は他の行動に移るキューであって、その休憩中に取るポーズ行動を特定しトレーニング行動から円滑に移行することで、動物のストレスは軽減出来ます。

学校の構成を想像すると解りやすいかもしれません。授業が終わった後の休憩時間や放課後は、何もしない時間ではなく、休憩時間には運動場に出て遊ぶや自由に本を読む等、放課後は部活に向かう等、何をすべきかそこには既にシナリオがあるのです。

スタートボタン行動

スタートボタン行動とは、私たちの犬が何か他のことが起こることに対して許諾する行動のことです。例えば、ブラッシングの前のチンレストがこれです。スタートボタン行動の鍵は、動物がそれを行うための選択肢を持っていることです。彼はそれをしないことによって、拒否を示すことができます。

エヴァはポーズシナリオからスタートボタン行動に移るにも、沢山の思考をちりばめています。どのようにセッションを始めたいか、セッションの環境をどう維持したいか等で、どんなスタートをするべきかを慎重に選ぶ必要があります。

セッション終了のキュー

多くのトレーナーが関心を寄せ、時に議論に発展するセッション終了のキューにも、エヴァは独自の見解を見せています。

セッションの終了は様々なキューで表現できます。
◆トレーナーの身体を位置・向き
◆セッションの場所
◆ステーション等の材質
◆強化子の与え方
大事なのは、そのキューが「終わり」を示すことではなく、次の行動への始まりのキューになる事。セッションが終わった後にどんな行動に移行してもらいたいかを念頭に入れてキューを選んでいきます。

例えば、トレーナーが背中を向行けたことで、セッションの終了を理解しその場を立ち去る犬もいれば、明らかにセッションをする場所を特定し、その場所から移動してもらうことでセッションそ終了させる場合もあります。犬ではなく、トレーナー自身が移動してセッションを終了させることもあります。セッション中は手から強化子を与えていたものが、終了で床にばら撒くことでフードサーチに移行し、意識をトレーナーから切り離すことで終了することもあります。

時間と共に行動がどう変化していくかを意識し、生活の全体像を把握し構成することで、コアとなるトレーニングセッションをより効率よくよりストレスフリーに行うことができます。


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