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犬のためのリラクゼーションテクニック

Karen Pryor Academy ライブエピソード#31では、クリストファー・パコル獣医師をゲストスピーカーに招いて、犬をリラックスさせる重要性とテクニックについてお話を聞きました。

クリストファー・パコル獣医師

Christopher Pachel, DVM, DACVB, CABC, 2002年にミネソタ大学で獣医学士号を取得し、2010年に米国獣医行動学者協会の認定を取得しました。現在、オレゴン州ポートランドにある動物行動治療クリニックのオーナー兼主任臨床医。米国とカナダで定期的に講演を行い、米国の複数の獣医学部で講義を行っています。また、猫同士の攻撃や動物介在療法のためのペット選択などのテーマでいくつかの論文や本の章を執筆している。また、動物行動学に関連する訴訟では、専門家証人として裁判に立つことも多いです。また、パコル博士は、フランチャイズベースのビジネスモデルで、正の強化行動修正とボード/トレーニングサービスを提供する会社、Instinct Dog Behavior and Trainingの経営陣の獣医行動担当副社長を務めています。

基礎行動としてのリラックス

恐怖、不安、興奮から来る行動はすべて興奮の引き金となります。それが否定的なものであるか肯定的なものであるかに関係なく、興奮は学習に影響を与えます。学習を成功に導くためにも、焦点となる行動のトレーニングに入る前に、興奮を抑える必要があります。

リラックスすることは、それ自体が練習を必要とするものである場合もあり、トレーニングの一部に含まれてしまっている場合もあります。ごく自然にリラックスる出来る犬や、あまり興奮しない犬はそのまま焦点となる問題行動に焦点をあてていきますが、興奮しやすい犬、コントロール出来ない犬は、まずリラックスする練習から始めます。

これはヨガやメディテーションのように、息をする事、周りの環境を監察する事を学習し、身体を力を抜き筋肉を弛緩させることが出来るようにします。

このように、リラックスは基礎行動として、攻撃性、恐怖症、不安症、そのほかの問題行動の治療とトレーニングに不可欠なものとなってきます。

練習方法

どのレベルから始めるかは個々の犬によって違ってきます。

まず規定値となる姿勢を捉え(キャプチャーリング)。その基本姿勢から最終的な「床に伏せて筋肉が弛緩している状態」にまで段階的に近づけていきます(シェイピング)。

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<手順>
◆立っている犬なら座る、座っている犬なら伏せる
◆伏せた状態で足が身体の下ではなく横に流れているのが理想
◆リラックスした伏せが出来るようになるまで、リセットも入れて練習
◆足が横に流れて伏せた状態が出来たら、その状態をのばしていく(デュレーション)
◆強化子のデリバリーの速度を変えていく。(ゆっくりに)
◆強化子は前足の肘後ろあたりに置く。直接口に運ぶのではなく、この時点では強化子を床に置く。口に持っていくと身体が浮くので、出来るだけ床に付ける為です。
◆ハンドラーの動き、バーバルキューの音量・調子もゆっくり柔らかくしていく。

リラックスする場所としてマットを使う等の小道具をしようしてもいい。マットがキューになって、マットが敷かれているだけでもリラックスポジションに自ら入って行けるようになるからです。

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<マットの上に落ち着いたら>
◆デュレーション 時間を開けていく
◆間接的強化子で強化する
◆床に強化子を置く
◆必要ならバーバルキューで「マテ」を入れてもいい

この状態でリラックスできるようになったら、トリガー試してもいい。
 ● 周りの動くもの
 ● 他の犬
 ● 音や振動
刺激が加わってもるリラックス出来るるように少しづつれんしゅうしてみるものいいでしょう。

フード強化子に興奮する犬への対処法

リラックスさせたいのに、その練習でフード強化子を用いいることで、食べ物を見て興奮してしまう犬にはどうすればいいでしょうか。これは最もよく質問される問題です。パコル獣医師は3段階の対処法を紹介しています。

1. フード強化子の種類を多く用意する
価値の低いフードから価値の高いご馳走までいろいろ用意し、フードの価値で興奮度をコントロールするという考え方です。リラックスの練習には比較的価値の低いフードを使います。

2. リラックスするのを待ち強化する
たとえ興奮して身を乗り出してきても無視(LRS)し、座るや伏せるなどリラックスする過程の行動が見られたとき(リラックスをキャプチャリング)に強化子を出します。

3. Zen Style (Leave it Foundation)
どうしても食べ物に飛びついてきてしまう犬は、リラックスの練習はひとまず置いておいて、目の前のものに触らない練習(Leave it Foundation )をします。「手の中にトリーツを握り込んで、それを見せる」をキューにしてハンドラーの方を見る練習です。拾い食い防止の練習と同じ要領です。

待つ事へのストレス

興奮しがちな犬を待たせることはストレスにならないのでしょうか。リラックスしてもらう為にも、少しづつ時間をのばしていったり、動作をゆっくりにしてくのは練習に組み込まれていますが、その待ち時間にストレスを感じるのではないかという心配が上げられます。

最初に、待ち時間が不安やストレスを与えるほどであれば、それは長すぎるという事でしょう。その個体にあったちょうどいい感覚を選び、けっして無理して時間を延ばしたりしない事です。常にスモールステップを心がけましょう。

動き回ることが好きな犬には、あえて静止することを強要する必要はありません。リセットでその場から離れて、またハンドラーの前に座ったなら、それが強化するに値する行動となります。動くことが強化子になる犬もいるので、うまくエネルギーを発散するチャンスを取り込みながら、リラックスする時間を延ばしていけるとよいでしょう。

リラックスの練習を始める年齢

リラックスの練習はいつ始めても構いません。早くは生後6週間でも始めることができます。また何歳になっても練習を続けておくといいでしょう。しっかりリラックス出来きていたはずが、年齢が増すにつれて環境の変化等に関わらず不安や恐怖心を募らせる事もあり、再度練習する必要が出てくる場合もあります。

楽しい時間は得てして興奮を伴うものです。あえて犬を興奮させる必要はありません。それより、リラックスすることでもご褒美が出る事を犬が学習しておくと、一日を通して楽しい時間が過ごせることを多くの飼い主が実感しているとパコル獣医師は言っています。今日からでも基礎トレーニングとして、リラックスする練習は初めては如何でしょうか。


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