それじゃあ語り継いでいきましょう、この「サガ2 秘宝伝説」を──。

 「サガ2 秘宝伝説」もまた物凄く好きなゲームでな……。
 前回「魔界塔士 Sa・Ga」についての記事を書いた時に今度は2を書こうと思ったのでこうして書いている。今回もiOS版「サガコレクション」収録版で遊んだので、ROMとしては後期型準拠? なんだろうか?
 

 「スタンド・バイ・ミー」とか「イット」とか、「子どもたちの冒険物語」要素に、劇場版の「クレヨンしんちゃん」とかの持つ「深い親子愛」の要素。
 そういう。そういう、ハチャメチャな世界観とテンポの良い物語運びでグイグイとプレーヤーを引っ張りながらも、最期は暖かく爽やかな気持ちで終われる名作、名娯楽って感じのゲームだ。
 前作「魔界塔士 Sa・Ga」がどっちかというと荒くれ者共のヤンチャな冒険譚って感じの雰囲気を漂わせていたのとは対象的に、今作はハードな展開を内包しがらもその根底には優しさや暖かさを感じてしまうのは、やっぱりそういうテーマが流れているからなんだろうかな。

 もうこのnoteを書いている時点で私が36歳だし、今年で37歳になるいい歳したおじさんなんだけれど、このゲームを少年時代に遊べた事はゲーム好きの少年時代を過ごした私にとっての財産、いわば秘宝の一つだよなって思える。そのくらい好きなゲーム。できれば童心に帰って遊ぶのが一番だし、逆に言えば遊んでいる時は童心に帰られる、そういうノスタルジィも含めて私の中で名作に数えても何ら恥じるところのない一本だよ。

 スタッフ面では既にFFシリーズで頭角を現しはじめていた今では大御所の一角・植松伸夫さんと、後にサガシリーズを代表するゲームコンポーザーのイトケンこと伊藤賢治さんのお二人がBGMを手掛けていたりして、こちらは今でも音楽面で高い評価を受けているね。私もイトケンさんの音楽大好き。


 ざっくりとゲームのあらすじから書いていこう。
 この世界には古代の神々の創った素晴らしきチカラの象徴シンボル「秘宝」が存在していて、それを巡って争いなんかも起こってしまっている世界。
 主人公の父親は主人公が子どもの頃にその秘宝のひとつ「精霊の鏡」を主人公に託してどこかに旅立ってしまう。
 成長した主人公は父親の背を追って、故郷の町の学校で仲間と共に旅に出るのでした。

 ……というのが序盤の導入。
 後にこの父親は秘宝を悪用しようとする者たちから秘宝を守ろうとする組織「ガーディアン」で「大佐」と呼ばれる要職に就いている事が判明したりする。インディー・ジョーンズにしか見えない不死身(自己申告)の父親ぞ。
 主人公の故郷の町には学校があって、ちゃんと一緒に旅に出てくれる仲間の実家とかもあったりするし、町を出る時は「せんせい」がゲスト参戦してくれる。
 そうゲスト参戦。
 前作にはなかった「期間限定の5人目の仲間」が登場するのが大きな変更点の一つなんじゃないかな。主人公たちが旅をする先々で縁を結んだキャラクター。故郷の先生から神官の女性、謎の覆面の戦士に岡っ引きや浪人、そんなバラエティ豊かな仲間たちが期間限定で仲間になってその世界での冒険を手助けしてくれるし、歩いている途中でBボタンを押すと喋ってくれたりもする。
 そう世界。
 前作では「塔」の中の階層に広がる様々な世界……という見せ方だったけれど、今度は「天の柱」という色んな世界を繋げて支えてくれている基盤の中で、秘宝を集めていく事で次の世界への扉が開く仕組みだ。

 この世界にも色々あって、お馴染みの中世欧風の世界はもちろん、砂嵐に包まれた世界だったり、巨人の住んでいた世界。ドラゴンでレースをする世界があったり、モロに日本の江戸時代を模した世界や、かと思えばパーティが全滅するたびに生き返らせてくれる戦神オーディンの棲むバルハラ宮殿だったり、前作に負けないバラエティに富んだ世界を冒険して楽しむ事ができる。
 バラエティに富んだといえば前作と同じように武器もそうで、前作と同じようにロングソードやグングニルの槍、エクスカリバーにデリンジャー火縄銃サブマシンガンに戦車のレオパルト2なんて変わり種も用意されている。
 

 因みに私が子どもの頃に遊んでいる時はこのレオパルト2というのが西ドイツの戦車である事なんて知らなかったので、なんとなくカッコイイ銃器かなにかだと勝手に思っていた。
 使ったターンは確率で敵の物理攻撃をガードしてくれる攻防一体の強力な武器だったりするので、後年、戦車と知って驚きと笑いと納得感が同時にやってきたのを今でも覚えている。わかるかよそんなもんよ。

 武器の話が出たのでこのタイミングで書いておくと、バトルバランスはGB版サガ3作の中では一番シビアかも知れない。
 今回「サガコレクション」でGB版サガを3作まるまる遊んでいて、全滅したのはこの2だけだったので。意外と容赦がない! 8体同時に現れたザコが8回全体攻撃を撃ってきたらそれだけでまぁ全滅する!
 ボスだってラスボスの神以外は苦戦する要素が皆無なレベルの弱さだった前作とは打って変わって強力な敵が揃っているので、大御所の放つ竜巻だったり、オーディンの投げるグングニルの槍だったり、アポロンの撃つフレアが容赦なく主人公たちのHPをゴリゴリモリモリ削って気づけばにっちもさっちもいかない状態になってやられるなんてのは結構あるパターンだった。
 それでも「サガ」……特に「ロマサガ」以降といえばこの一見理不尽なくらいのバトルバランスが味の一つでもあったし、ゲーム的にもどこでもセーブができる仕様なのでそこまでガツッと詰む程の事はなかったけれど。


 続いて、前回に倣って各種族の話をしよう。

 
・にんげん(男女)
 成長方法はお金を払って成長アイテムを買って……という前作の方式から、比較的オーソドックスな「戦闘後に戦闘時の行動に応じてパラメータが伸びる」、いわゆる熟練度方式。しかも「○○はちからがあがった」と戦闘後にアナウンスもしてくれる親切仕様だ。
 この熟練度方式はプロデューサーの河津秋敏さん()が以前手掛けていたFF2と似ている。
 伸びやすいのは力と素早さかな。

 バトルでの役割は前作とほぼ同じ。
 全部で8枠ある装備枠をフルに使った、物理攻撃が得意なアタッカーといったところ。
 ただし素早さが命中率にも関わってくる仕組みで、今作ではロングソードや刀といった武器は力依存&力成長、レイピアやサーベルなどは素早さ依存&素早さ成長の武器であるため、序盤からある程度は意識的に素早さが成長する武器も使って鍛えておかないと中盤以降に攻撃がほとんどミスするという致命的な弱点を抱えていたりする。
 これがバトルバランスがシビアに感じる原因の一つでもあるのかな。
 実は裏技を使えば途中でビュンビュン伸ばせられたりもするのだけれど、ちょっと気になり始めた中盤の頭くらいの頃に付け焼き刃的に素早さが補填できる装備「エルメスの靴」が入手できたりもするので目を逸らしがち。そしてビーナス辺りで大体ミスりまくる憂き目に遭う。


・エスパー(男女)
 成長方法は人間とほぼ同じ。
 それでも伸びやすさは魔力とかで、力と素早さはいまいちとかだったかな? 素早さが伸び悩むと後手に回りがちなのはこれまた人間と共通しているけれど、魔法攻撃は相手に耐性でもない限りはまぁ当たるのでミスしまくりはじめる頃の人間と比べるとまだ救いを感じる。
 あと細かいところを書けば前作がエスパーマン&エスパーギャルだったのに対して今作はエスパーボーイ&エスパーガールだったりする。主人公たちが学校から旅立つから少年少女という事になっているんだろうかな。

 バトルでの役割は前作よりも圧倒的マイルド。
 魔力を活かしたグループ攻撃や回復担当。
 特にパーティ全体を回復させる癒やしの杖を振る事でボス戦では守りの要となる大事な仲間になる。単体相手なら相変わらず魔力依存武器のサイコダガーやサイコソードが強力。
 装備枠は前作と同じく装備4枠・特殊能力4枠……だけれど、4つ目の特殊能力を覚える前に装備を5つ以上にしておくと習得を阻止できるんだったかな。こちらは前作に比べて使いやすくなっていて、新しい特殊能力をランダムで覚えるのは共通なんだけれど、装備枠の一番下にある能力と入れ替わる仕組みになったので残しておきたい特殊能力を消さないようにする事もできる。

 敢えて素早さをテコ入れせずに、ターンの最後の行動で癒やしの杖による全体回復……なんて戦い方も悪くない。


・メカ
 今作ぶっちぎりで一番面白くってワクワクする種族。
 成長方法は武器防具道具の装備!

 各装備には「メカが装備した際に伸びるパラメータ」が設定されており、例えばロングソードを持てばHPと力が、レイピアを持てばHPと素早さが伸びて、外せば戻る。
 つまり新しい装備に更新していけばいくほどパラメータが強化されていくし、成長にお金がかかるという意味では前作の人間の系譜を受け継いでいる……と言えなくもないのかな。

 バトルでの役割はなんていうか自由だ。
 それでも後述の装備の仕様からポーションなんかは殆ど持つ、使う旨味がないので、重火器をメインにした物理アタッカーというのが最適解だろうか。

 装備の仕様に関して深く語らない訳にはいかない。
 メカの装備した武器は使用回数こそ半分になるものの、宿屋に泊まる事で使用回数が最大まで回復する。
 50回使えるロングソードなら25回、30回使える与一の弓なら15回になるものの、使い切っても人間やエスパーのように消滅せず、かつ宿屋で回復すればまた25回なり15回なり使い直せるようになる。単純に強力なレオパルト2を2つ装備させれば装備枠こそ2枠埋まるものの人間やエスパーが持った時と同じ回数分、使える訳だし、実質いつまでも使い続けられるようになる仕組みだ。

 ゲーム内で入手個数が限られている強力な装備を敢えてメカに持たせるのがまた楽しいし、何より「自分の判断でメカを好みの能力、装備にカスタマイズできる楽しみ」は今までのサガにはなかった要素だった。ミニ四駆とかメダロットとかそういうのが好きな子どもなら絶対好きだよなこういうの。

 前述の素早さが命中率にも関わってくる仕様は当然メカにも適用されるものの、力だけをバキバキに伸ばす装備で固めた後で必中効果のあるグングニルの槍なんかで武装すれば「ターンの最後に絶対に命中する凄い力の槍」とか、そういうロマン溢れる運用に乗せる事だって可能だ。

 また、メカは50回使える武器を持つと25回になり、外すと今度は12回に……と装備を付け外しすると使用回数が半分半分に減っていく仕様にもなっているけれど、そもそもの使用回数が設定されていない防具に関してはその限りではない。
 また、装備する事でHPが増減するという仕様と組み合わせる事で、「防具を何度も付け外しする事でフィールド上で無限にHPを回復させる」なんて事もできる。サガシリーズの宿屋は1HPを回復させるのに1ケロ(通貨)がかかる仕組みなので、こんな風に事前にメカのHPだけでも全回復させてしまう事でお金の節約にも繋がるのが楽しい。

 とにかくサガ2で一番面白いと感じた種族はメカだよ。
 最大HPが装備でグッと一気に伸ばせるから、パーティの先頭でタンク役として活躍してもらう事も多く、マップ上では一番よく見た姿かも知れない。



・モンスター
 ほぼ前作と同じ! 肉を食べて別の種族に変化して戦おう!
 でも今作は前作ほど極端に弱体化はしない仕組みらしいね。

 あとは同レベル帯でも使い勝手の良い種族とそうでない種族の差がまぁまぁあるらしく、いまいちパッとしない物理アタッカー種族だったり、グループ攻撃からケアルで回復までこなせるエスパー寄りの種族だったり、その辺りである程度みんな多用する種族が似てくる……なんてのはあるかも知れない。
 具体的にはフェアリーとかニンフとかの妖精系が強い。

 そうはいっても前作では最終盤まで使うにはちょっとパワー不足だったかな……という印象だったのが大幅にテコ入れされたのか、各世界での適正レベル帯の種族にさえ変化できればそこまで極端にパーティの足を引っ張る事はなくなった印象。特に最終盤の固定中ボスの肉を食べる事で最も高いレベルの種族のモンスターに変化すればラスボス戦でだって十分活躍できるくらいには強くなったので、ある意味前作ほどのバクチ性はなくなったのかも知れない。でもゲームバランス的にはこちらの方がアリだなとも。


 モンスターだろうと父親の子どもだ。
 メカでもそうだけど、まぁ、メカは開発者って意味もあり得るから……いやそれで言えばモンスターだって父親が子どもの頃に拾ってきて我が子同然に愛情を注いだ結果、強い絆で結ばれたとか、そういう感動秘話があるのかも知れないけれどもさ。
 

 そう親子。
 今作は次第に秘宝を悪用しようとする「新たな神(を名乗る者たち)」との戦いに焦点が絞られていくものの、序盤はやっぱり旅立った父親を探し出して、二人で母親の元に帰ってくる事が目的だった事と、冒険の要所要所で父親が登場するので否が応でもそこに目が向くようになっている。
 特に物語中盤で父親が不倫していたのでは? と疑惑を向ける場面では
 「父さんがいなくなってから母さんがどれだけ苦労したか」
 「母さんを何年も裏切っていたんだな」
 「もう父親とも思わないぞ!」
 と、中々ショッキングな心情を主人公が吐露する事もある。

 それでも疑惑が解け、ゲームの終盤で激しい戦いの末に瀕死の重傷を負った父親を救うために、仲間と相談した上で父親の静止も振り切って秘宝のチカラを使おうと決断する場面なんかが響いてくる。
 主人公の旅に出る理由は、今でこそ秘宝を集めて、守って、世界を救う事なんだけれど、その根底には父親と二人で母親の元に帰ろうという親子間の愛情と絆があってこそなんだよなと思い起こさせられるから。


 物語の最終盤、エンディングで語られる、秘宝と、その秘宝を全て集める事で現れる最強のゲストキャラクター・女神の関係。
 因みに前述の父親の命を救おうと秘宝を使った結果に現れたのがこの女神で、そのチカラによって父親は無事、一命を取り留めている。

 女神は「天の柱によって支えられ繋がっている世界」のバランスが崩れ、仕組みが危機に陥った時、78個の秘宝が合わさる事で現れ世界の歪みを修復するための、いわゆるPCのデフラグ・ツールのような存在なんだけれど、そんな危機は滅多に、それこそ数千年単位でしか訪れないだろうと。
 きっと主人公たちが会う事はもうないだろうという事で、
 「次に会うのはあなたたちの子孫かも知れません」
 という。

 そこで主人公が
 「それじゃあ、子どもたちに語り継いでいきましょう。
  この秘宝の伝説を──

 と返す。





 「SaGa2 秘宝伝説」というタイトルが、ここで回収される。
 これが本当に良かった。

 主人公とその父親は秘宝の存在を知って、父親は秘宝を悪用しようとする者たちから秘宝を守るために、そして主人公はその父親の背を追って旅に出る訳だけども、このゲームの最後の瞬間、主人公たちの冒険物語は、文字通りの「秘宝伝説」と成る訳だ。
 この物語の運び方、タイトルの回収が実に良かった。


 エンディングの最期のシーンもまた実に良くて。
 もうおじさん涙止まんないよなこういう時な。
 全ての戦いが終わって無事親子三人で暮らす事になった主人公たちだけれど、物語の冒頭と同じようにまた父親が窓から外に旅立とうとするシーンが流れる。
 「今度は自分も一緒に行くよ、今度は何を探すんだい?」
 と聞く主人公に
 「ふっ、今度は『三種の神器』だ!」
 と返す父親。

 まだまだこの親子の冒険物語は終わらないってか──! と思わせたところに、今度は主人公の母親まで部屋に入ってきて
 「私も着いていくわ。もう待つのは懲り懲り!
 と行って一緒に着いて来ることに。

 強い父親とたくましい息子にはこれまた芯の強い母親がいるってか!
 いまのかぞくが いちばんとうといぜ!
 (※前作よりずっとマイルドにはなったけれど、今作もまたセリフ回しのところどころが秀逸なんだよな、サガは……)

 なんとも、なんとも。
 暖かく爽やかな気持ちになって、笑って物語を締めくくれる、そんなエンディングなのが、やっぱり大好き。


 こんな神、いや秘宝作品がGBで、それも1990年、今から実に33年前には既にリリースされていたというのが本当に本当に偉大な事実だと私は思う。
 そんな感じで「サガ2 秘宝伝説」だ。

 次回は「サガ3完結編 時空の覇者」について書ければ良いなぁ。

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