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私が同期とSwitchでフレンドになるまでの話

 同期の話を──もちろん、www全世界に公開できる範囲で──しようと思う。

 彼と出会ったのは、2015年10月20日の事だった。
 のっけから出会った日を覚えているだなんてキモチワルイおじさん以外の何者でもなくなってしまったが、待って欲しい。同期だから仕方がない。いや、正確には彼は私にとって、20日だけ後輩だったりする。私が弊社に派遣社員として登録されたのが月初めで、彼が弊社に正社員として入社したのが、締日の関係で20日だったというだけの話だ。

 それでも互いにキャリアが10年近くともなれば、20日なんてものは誤差だ。だから私にとって彼は同期で……少し話がズレると、私は派遣社員として2015年に入社し、6年後の2021年に正社員になる運びとなったので、そのタイミングで一緒に入社した者たちもまた、私にとっては同期と数えられる。

 同じ会社に二回分の同期が居る。
 これをどう捉えるかは人それぞれかも知れないが、私にとっては間違いなく幸運な事で、それだけ嬉しい事でもある。


 まぁ、さておき。
 今回の話の主役は彼だ。


 同期……と言っても、実は歳の差は10歳ある。
 私が派遣登録された時の歳が28(だったはず)で、高校を卒業したての彼はまだ未成年の18歳だった。控えめな性格なのか、ややおとなしく、積極的な性格の多い──私は弊社の事を親しみを込めて「ダメな男子校みてーな会社」と評している──弊社では珍しいタイプの少年だったと記憶しているが、それでも物腰は穏やか、それでいて真面目で、マメな少年だったとも記憶している。
 社会人としては、なにせ私は別部署だったのでどういった男かまでは軽々に断じる事はしないが、少なくとも私が見る限りには勤勉であり、私にはおよそ理解できないであろう工作機械の操作も習得し、今となっては部署になくてはならない存在の一人と言っても差し支えないだろう。


 これは私から見れば10歳年下だから仕方ない気もするが、弟分気質、とでも言おうか。とかく、歳上に愛されるタイプの男だなとも思う。
 実際、彼の同郷の者からは気軽に名前で呼ばれ、荒々しくも親しみの込もった接し方をされているのをよく見る。こういう部分が私が弊社を評する際の「ダメな男子校みてーな」点なんだろうが、少なくとも私から見る限りでは、皆、彼に対しては変に畏まらないフランクな付き合い方をしているように思える。

 とはいえ、社会人は30~35歳を超えた辺りから徐々に歳上よりも歳下の人間の方が増えてくるのが常なので、そうこうする内に次第に歳下の人間から如何に信任を得るか? みたいなのは間違いなく重要になってくるのだと思ってはいるが……まぁ、あんまり書くと私にダメージが入るからこの辺で。


 彼の人となりに関して、なんとなく想像がついた頃だと思う。
 


 そこでそろそろ本題なんだが、彼は結構なゲーマーだ。
 一度、話の流れで見せて貰った彼の私室の写真は「ス~ゲ~! なんかゲーム実況者さんの部屋みたいな感じやな~!」と思わず声を漏らすくらいに立派なもので。複数のモニターであったり、キーボード、マウスひとつ取って見ても私が今操作している品よりも遥かにこだわりの強い品……! というのが見て取れた。
 聞けば中々良いお値段のする環境を整えた上で、私は完全に門外漢だが、回線速度や機器が肝要になってくるタイプの対人ゲームであったり、その反面、私でも分かるFF14を遊んでいた時期があったらしい。

 余談だが、私も以前はFF14をプレイしていた事があったのでその話をしたところ、熱心にストーリーの面白さを説かれたり、復帰を勧められたものだけれど、まぁ、残念ながらヒカセン復帰願望は今のところゼロなので「う~ん、私はええかな~。ありがとう」と返すに留まった。


 以前も始業時間前の8時台に部署に先輩や上司とNintendo3DSを持ち寄ってはゲームに興じていた姿を何度か見かけた事があり、休憩時間には「GOD EATER」などのPSP~PS Vita時代のゲームの話をしてくれた事もあり、その他にも幅広い、私の知らないゲームの事も話してくれたり────まぁつまり、ああ、もうええやろ。

 彼は同期にして現役のモンスターハンターだった。


 


 (チャーチャラッチャチャチャ!! チャチャチャ!! チャーチャラッチャチャチャ!! チャチャチャ!!) 



 遡ること2023年10月だ。
 私はこの記事にも書いた通り、「モンハンナウ」のお陰で久しぶりにモンハン機運が高まりつつあった頃だった。試しに聞いてみれば、同期の彼も遊んでいた。そこからは休憩時間になると「★4のアンジャナフおるで。手伝ってくれ」などと言いながら彼の部署に足を運んでは75秒だけ狩ってスッと去る……そういう、よく分からないハンター生活を送っていたんだが、この記事にもある通りそんなナウ生活を続けるにつれ、私の中で次第に「ちゃんとしたモンハンやりたいな欲」が高まる事となる。

 そこに目を着けない彼ではなかった。
 「吉雅さんモンハンお好きでしたらワールドかライズは遊んでみて欲しいですね。きっとハマりますよ~!」
 「プケプケは居るの?」
 「プケプケは……え~と、居ます!」
 「パオウルムーは?」
 「居ません……」
 「(まぁでも、PCもう古いし買うならSwitchのライズかナ)」

 等の会話──いや、ハンターとしての情報収集が私のカムラの里生活スタートの前段階にあった事は明記しておきたい。


 かくして購入。
 まぁ、これは私が遊びたかったというのが一番初めにあったにせよ、職場の同期がやり込んだゲームともなれば、やはり休憩時間中に
 「里守武器ってやけに攻撃力高いけれど、これっていわゆる初心者救済用武器だったりする?」とか
 「百竜夜行遊んできた! あのマガイマガドって奴とはいつ戦えるんだ?」とか
 「ようやくイブシマキヒコ倒してきたぞ! 動画撮った! 見てくれ!」とか
 「あのバルファルクってやつの高速ワールドツアーみたいなのってどう回避するの?」とか、
 とか、そういう話が増えてくるものだ。

 彼もまた歴戦と呼んで差し支えないハンターであるからして、色々と私に教えてくれる。これが楽しい。それに、私は攻略サイトやwikiは積極的に見ずに遊んでいるので、経験やゲーム内のハンターノートからの知識や推論を元にした質問にもよく答えてくれる。
 これがまた楽しい。
 言い換えれば私の勝手な知識縛りプレイという遊び方なのだが、「ライズ」を始めてからのこの三ヶ月間ほど、決して大げさな書き方ではなく、彼は間違いなく私というハンターの「先輩ハンター」枠の一人であり、(ナウを除けば)直接一緒に狩りに行った事こそなかったものの、十数年ぶりのモンハン体験を楽しませてくれる「狩猟仲間」の一人だったのだ。

 ※一人、という書き方をしたのは、単純に実は彼以外にも私に色々と親切に教えてくれる先輩ハンターが居たりするからなのだが、彼は昔遊んでいたオンラインゲーム時代の友人なので、今回はまぁこの注釈で触れる程度に留めておこうと思う
 ※とにもかくにも、私の人生は人に恵まれ過ぎているという自覚だけがあるよ



 「同期くんもSwitch版で遊んでるんだし、せっかくなんだから一緒に狩りにも付き合ってくれよ~」
 「良いですね!」
 「じゃあ、これが私のフレンドコードね」
 「今度登録しておきます!」

 という会話に至るまで、さして時間はかからなかった。







 それからなんやかんやで2ヶ月の時間が流れた────!


 いや、やんぞ!?
 これは……もしかしたら……社交辞令だったのか……!? 今まで楽しくハンター談義にドスビスカス咲かせてたと思っていたのは私だけで、実は彼からすれば「めんどくさいおじさん」でしかなかったのか!?

 社会人、社会人────色々ある。
 「また飲みにいこや!」は別れの挨拶程度のものである。

 そんな事は社会人になってからのこの20年弱、幾度となく感じてきた事だったはずなのに、私と来たら年若い同期の男に馴れッッ馴れしく楽しく話しかけて、一緒にゲームしようぜ~! なんて持ちかけておいて、おいて! あれか! このザマか! ハァ~~~! あ ほ く さ 。 このザマってオマエ無様以外の何者でもないだろ! 恥を知れ恥を! ……等と、今日も届かないフレンド申請欄を眺めては小さく溜め息をついた事が、え~と、たぶん3回くらいあった。意外と少ないな? まぁいい。あとごめん4回あった。今ちょっとだけ見栄張った。ごめん。

 因みにフレンドコードの載ったスクショを送ったLINEに次に来た連絡は「あけましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします!」とあった。おいおいおいおい待て待て待て待てこれは純粋にフレンド申請を忘れているだけなのか!? それとも、それとも「吉雅さんとフレンドになる気はないですが、職場の同僚でもあるので挨拶のLINEくらいは送っておきますヨ……」という高度なオトナ判断なのか!?
 私の判断は大いに揺らいだ。
 しかし時はジャスト年明けの瞬間(律儀なやっちゃな~!)、実家にて既にベロンッッベロンに酔っ払っていた私は一旦、全ての煩悶をシャッとアウトにして、「あけましておめでとうございます。今年も宜しく頼みます!」と返していた。高度なオトナ判断してる~!


 ──そんな感じで、1月も過ぎて2月だ。
 実際、私もモンハンに夢中で(仕方ないよね~!)彼との狩りの約束はどこかチョット意識の少し遠くの方に行ってしまっていた感はある。まぁでも先述の通り、ゲームの進捗状況に応じて「昨日サンブレイクで初めてショウグンギザミ狩ったんだけど、裂傷とかいうの、あれ結構厄介やね~!」とか、そういうところからモンハン話を切り出す事はままあった。

 そこで彼から一言
 「また一緒にモンハンしましょうよ!





 「”また”……? だとォ……!?」
 「えっ、アッ もしかして僕、申請送ってないです!?」 

 吉雅、拗ねた!!
 今年で38歳になるええ歳したおじさんが同期の男にSwitchでフレンド申請して貰えてなかった事で拗ねた!!

 「どうせ、どうせ私みたいなおじさんとうさ団子食べたくないんやろ!
 「そんな事ないですよ! すんません、帰ったら申請しますんで!」
 「ホンマか…………?(ちょっと持ち直す機嫌)」


 まぁ、弊社も決して、人が余っているという訳ではない。

 加えて前述の通り、彼も今や部署的になくてはならない存在の一人となった男なので、そりゃあ仕事が忙しい日だってあるだろう……俺が、俺が狭量だったのかも知れない!
 急に訪れるド反省の瞬間。
 去年の夏頃なんかはちょこちょこ土曜出勤なんかも挟みながらじりじりと進捗と戦っていた事があったな、なんて事も思い出す。俺が、俺が狭量だったのかも知れない! そんな感じで、若干の反省を込めながら、そこから待つこと確か3日ほど。

 それは突如休日にやって来た。




  (チャーチャラッチャチャチャ!! チャチャチャ!! チャーチャラッチャチャチャ!! チャチャチャ!!) 






 来たのである。フレンド申請が。
 まぁまぁサッとLINEで「ついに申請したのか!!!!」と送る程度にはビビった。あと特に連絡もなくスッと申請が来たので、一瞬、「(あれ? Twitterとかでフレンド募集とかはしとらんはずやが……)」ってなったけれど、まぁ、まぁ。そこは。

 
 こうして苦節二ヶ月、私はついに彼のSwitchのフレンドになった。
 因みにまだ狩りには行っていない。なんか今度はちょっと誘うの恥ずかしくなってな。相変わらず面倒くさいおじさんである事に関しては恥ずかしながら否定できないんだが、どこかでスッと時間が会えば、きっとこんな風に狩りに誘おうと決めている。


 ひと狩り行こうぜ。って。

 

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