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老ハンター、再び狩場へ──「モンハンナウ」を遊んでいます。

 「モンハンナウ」……に、最近少し……いや、結構……まぁまぁ……ハマっている。


 ──かつて、私はハンターだった。
 忘れもしない、あれは私がまだ21か、22くらいの頃だったか。

 だから今から15年くらい前だろうかな。08年くらいの話。
 早速正確な年齢を忘れてしまっている気がするが、その頃は世の中的にPSPの「P2ndG」が大人気だった。

 なにせどう見てもゲームとか興味のなさそうな歳上──30代中後半の方も大勢いらしたので、ちょうど、今の私くらいの年齢──の方ですら「ようやく上位まであがったぞ!」「ショウグンギザミ亜種狩ったぞ!」と嬉しそうに私に話しかけてくるレベルだったのだから、その人気が如何に色んな年齢層に波及していたかが感じられる。

 リアル集会所なんてものもそこそこ存在し、予備のバッテリーを持っていそいそと日本橋なんかに足を運んだりもした。同年代の友人たちから、ボーイスカウトでリーダーとして面倒を見ていた、当時小中学生のスカウトたちともよく遊んだ。

 リーダーは大人だ。悪魔ネコを許さない──。
 と言いたいところだったが、初代ポケモンでバグを利用してミュウをゲットしてキャッキャしていた分際だったので何も言えなかった。
 
「邪道やな~。リーダーは普通に狩る方が好きやけどな~」などと、本来一撃で沈むはずがないラスボス格のウカムルバスが成す術もなくネコにワンパンKOされていくのを眺めながら、苦笑い混じりにヌルい対応をしていた。

 リーダーは罪人だ。彼らを責める資格はない──。
 彼らにとっての悪魔ネコは私にとってのバグミュウだったのだから。
 あと、えてして子どもはこういうウラワザ的なものが好きなのだから。
 良いよねそういうの。
 理解ワカる。


 他にも新しい特別なクエストが遊べる「ダウンロードクエスト」という概念もあったので、PSスポットという、PSPで色んなコンテンツを受け取れるスポット──主に、地元のゲーム屋さんなんかにあった場所──でクエストを受け取るついでに、近くで同じようにPSPを持っている人と知己を得たり、なんて事もあったりした。

 その当時大学生だった二人の男性とは、私が真面目に仕事をしていなかった頃に近所の駅近くのマクドで何度かバッテリーが切れるまで一緒に遊んだ記憶がある。
 私より少し年若かった彼らも、もう30代中盤くらいだろうか。
 ハンター名は記憶しているが、本名は覚えていない。
 そんな、そんな不思議な間柄の二人だった。


 地元の友人とも、「P2ndG」をよく遊んだ。
 当時はボーイスカウトのリーダーをしていたので、次の隊行事の打ち合わせの後にいそいそとシェンガオレンを狩っていた私を見て、当時は大学生で現陸上自衛官の友人がいつの間にかモンハンを購入していたのだ。
 「おい、俺も買った。ひと狩り行かんか?
 と藪から棒に声をかけてきたそいつは、今も私の大事な友人の一人でもあるし、今や奥さんお娘さんを立派に守る、誇るべき友人でもある。

 彼と、また別のボーイスカウト仲間とも、深夜に、当時は100円でおかわりし放題だったマクドナルドのコーヒーを注文しては電源タップにタコ足を取り付け、充電してはバッテリーをパンッパンに膨らませながら夜から朝まで古龍の大宝玉なんかを求めて狩り続けていた記憶がある。
 今にして思えば死ぬほど面倒くさい若造どもだったと思うので、その罪滅ぼしなのか何なのかは知らんが、地元に行った時はたまにその店舗にお金を落とす事にしている。
 子どもの頃の遊び場に対するせめてもの礼、としてだ。


 狩友といえば、今でもSNSで繋がっている、他地方の友人が居たりもする。
 もう知っている方も少ないかも知れないのだけれど、PCにワイヤレスアダプタを取り付け、PCとPSPを接続する事で世界中のハンターと一緒に遊ぶ事ができる「X Link Kai」というソフトがあった。
 そのソフトを介しての知り合いである。
 関係はかれこそ10年以上が経つが、今もチマチマとやり取りをしている。実際に会った事はないが、なんだろう、学生時代からの気のおけない友人、のような接し方ができる男で、こいつも今の私と似たような工業系の仕事に従事している事もあって、たまに工具の話なんかもできるのが嬉しい。

 彼は東北地方に住んでいて、忘れもしない(今度こそ本当に忘れもしない)2011年の3月11日もボイスチャットを繋ぎながら一緒に遊んでいた。


 本当に。
 本当にお前が健在で良かったよ、と思える友人の一人だ。
 いつの間にか結婚していてビックリだ。
 こっそり書いておこう。本当におめでとう。



 そこから、同じくPSP版の「P3」も遊んだ。
 雪山にほど近いポッケ村から舞台を変え、今度は温泉郷を抱くユクモ村での狩人生活だった。
 私は「P2ndG」の頃からヘビィボウガンを愛用していたので、やはりジンオウガや、それに前作ではなかったディアブロスやアカムトルムのヘビィに心惹かれるようになった。
 正確にはディアブロス素材のヘビィにはデュエルキャストが既に存在していたのだが、装填数も少なくブレも大きいが当たれば高威力というディアブロスやアカムトルムのヘビィボウガンのコンセプトには当時ひどく痺れたものだった。
 「P2ndG」の頃から老山龍砲の「扱いづらいが高威力」という主旨が大好きで、装填速度や反動軽減を積んで扱っていた私としてはそういうボウガンに浪漫を感じたものだが、「P3G」はついぞPSPでは発売されなかったので、こちらの思い出は思った以上に少ない。これは純粋にボリュームの問題だ。

 それでも、友人らと水族館に出掛けた帰りにひと狩り行こうぜ! と言ってフードコートで刃牙コラボのジンオウガに闘技場で追い回されてヒーコラ言いながら狩った事なんかは今でも印象深い思い出の一つだ。



 そうして。
 そうして。
 気付けば私はモンハンから離れてしまっていた。
 だってPSVitaに新作が来なかったもんな。

 正確にはオンライン・ゲームの「Fフロンティア」が遊べたそうなんだけれど、残念ながらそこまで心惹かれる事なく終わってしまった。あれもハンターランク100までは無料で遊べるという事で、後年、別のオンライン・ゲームで知り合った友人たちと短い期間遊んだ記憶があったりもするんだが。
 3DS版の「3G」も少しだけ遊んだんだが、PSPから様変わりしてしまった操作性であったり、水中の狩猟に取っつきづらさを感じてしまった事もあって、やはり、やはり「モンハンから離れてしまった」のだと思う。



 さてそんな感じで時は流れ、ようやく時間軸は現代に至る。
 2023年だ。
 スマホで遊べて位置情報ゲーになった「モンハンナウ」が登場した。

 これは調べて知ったんだが、「ナウ」は18年発売の「ワールド」をベースにしたゲームらしい。
 なにせ約10年ぶりの狩場だ。
 イャンクックが居ない!? それに序盤でお馴染みのドス鳥竜種もいないんだな。このクルルヤックってのはなんなんだ? トビカガチの動きにジンオウガっぽさを感じるな。それにこのプケプケ? とかいう奴からは鳥竜種の骨格を感じるが……尻尾がワサビみたいでちょっと可愛いな!

 ダメージだって数字で出るし、恐らくダメージ数値の色がオレンジになるのは弱点肉質を衝いた時なんだろうな。昔は着弾エフェクトの大きさや出る血の量、ヒットストップなんかで判断してたもんなぁ……なんて。
 当時との差異を感じるばかり。
 そんな風に何もかもが様変わりしていて、それが新鮮だ。

 でもシリーズ皆勤賞(だよね?)のディアブロスは変わらずいてくれて、凶悪な二本角でガシガシ突進をかましてくる。こんなのと戦って良い人間はミラ・ジョヴォヴィッチだけだろ! なんて思う反面、でも実は主食はサボテンなんて相変わらず顔に似合わず可愛いところあるよな~、とか。
 もちろん看板モンスターたる空の王者・リオレウスや陸の女王・リオレイアは健在! あ、今どきのレウス素材由来のライトボウガンはスパルタカスファイアって名前じゃあないんだな、とか、でも飛竜刀は今もあったりするんだな。

 とか、とかとか。
 書きながら、「あぁ、私は本当にあの世界が好きで、傾倒しハマッていたんだな」と思うばかりだ。


三宮駅をのしのし歩くボルボロス。



 ……あっ、ボルボロス! お前ボルボロスじゃないか! お前も今となっては結構古株モンスターみたいな顔してるんだな! とか。
 旧友を見つけた老人のような楽しみがある。


 ところが当初、私はこのゲームに懐疑的ですらあった。

 位置情報ゲーこそ、「ポケモンGO」や「ドラクエウォーク」を遊んだ事があったものの、「モンハンの楽しさはやはり直感的なアクションこそだろう? それが簡略化されたスマホでのゲーム性に落とし込めるのか?」という気持ちが、やはりどうしても強かったからだ。
 これは割と多くの人にあるんじゃあないかなと個人的には思う。


 が、その考えは触れて、遊んでいる内に少しずつ杞憂だった事が分かってきた。
 念の為に書いておくと、恐らく──そりゃあ最新のコンシューマ版には触れていないので分からなくて当然なのだが──操作性、アクションという点では本家モンハンには及ばないのだろう。
 それでも、それでも私はこの約10年ぶりの狩猟生活を楽しめている。
 これは37歳という年齢から昔ほど複雑なアクションについて行けなくなり、スマホ版の遊び方をちょうど良いと感じているのもあるのかなとも思う。が、逆に言えばそれは「スマホで手軽に味わえる『モンハンらしさ』」を楽しむに適した年齢になれていたのかも知れない。
 そう考えると実にラッキーなタイミングとも言える。
 重ねて言えば、そんなタイミングで手軽に遊べるモンハンをリリースしてくれた事にも感謝したい。

 地図上に表示された大型モンスターや、採掘ポイント。
 これらを前述の「ポケモンGO」や「ドラクエウォーク」のように実際に歩いて訪れ、狩猟や採集に勤しむ。地形もお馴染みの森丘、沼地、砂漠……と行ったフィールドがリアルの時間経過によって塗り替えられていき、当然、出没するモンスターも変わってくる。
 自宅からの観測範囲は森林でリオレイアなら居るが、今狩りたいジュラトドスは少し離れたところにある沼地に居る。ならば出向いて狩るか! と、ゴミ捨てや散歩がてらフラリと腰を上げる……ような遊び方になる。

 素材の要求数は割とシビアに感じられる。
 トビカガチの毛皮とかな。これなんで全然出ないんだ?

 今は各モンスターの良質な鱗に目をギラギラさせているが、こうしたギリギリ素材が足らないからもうちょい狩ろうと思わせてくるバランスが実にモンハンっぽい! 悔しいが私はモンハンのそういうところ好きだ!


 それに懸念であったアクション、操作性に関しても、遭遇した大型モンスターにタップとフリック、そして長押しによる武器種ごとの特殊アクションなどを駆使して挑むのだが、これが案外難しくもあり、また楽しい。

 片手剣なら盾を構えて防御態勢、大剣ならお馴染みの溜め斬り。
 太刀なら納刀から居合斬り……といったように、武器種ごとに遊び方に変化がある。当然、スマホゲーなのでその幅の持たせ方にも苦心するところがあるのだろう。武器種そのものは限られており、私の好きなヘビィボウガンは存在すらしない。
 私の好きだったモンハンプレイ日記「逆鱗日和」シリーズの著者・ファミ通の編集長にして世界一のガンランサー(笑)こと大塚角満が愛したガンランスもない。
 

 まぁ。
 そこは。
 私も当時に比べれば歳を重ねたという事で、ゲームアバター的には「歳をとって重たいヘビィボウガンよりも取り回しやすいライトボウガンを愛用するようになった老ハンター」気分で遊ぼう、という事で色々と浪漫ある折り合いをつけられてしまった。

 特に私が主に持つライトボウガンはスマホのジャイロ機能を利用して、スマホの角度を変える事で狙いを定められるモードがあったりして、こういうのは如何にも「スマホで遊ぶモンハンの遊び方」が感じられて、良い。
 正直このジャイロモードがなければ既に投げてたと思う。
 「操作感」の面白さがモンハンのキモの一つなんだろうけれど、私の中の「ナウ」での遊び方はそこが担保してくれている部分がまぁまぁ大きい。

 欲しい素材や狩りたいモンスターを求めてついつい想定外のところで寄り道してしまうのは位置情報ゲーのお約束だなぁ……と思いながら、「道路渡った先に★4パオウルムーが居るから狩る?」「狩る!」なんて足を伸ばしてしまう事もしばしばだ。



朝の繁華街に現れる陸の女王。


 ごく個人的に「ナウ」で一番面白い機能はARによるモンスターの撮影だと感じている。

 まぁ、これは元々オンライン・ゲームをしていてもスクリーンショットを撮って遊ぶのが好きだった私の性格に因るところもあるのだろうけれど、AR機能を使って街中にモンスターを呼び出しては撮影するのが実に興味深く、楽しい。

 そもそも「ナウ」の物語は「モンハンの世界と私達の住むリアル世界が融合してしまった!」という導入で、スタート画面もビル群の中に現れたハンターとお馴染みのリオレウスがいざ! と向き合っているイラストだ。

 普段当たり前に過ごしている街中にモンスターを登場させる。
 街がメチャクチャになっちゃいそうだな! という妙な昂揚感カタルシスであったり、純粋に写真の面白さ、日常と異物を混合させる体験が楽しい。
 普段の風景を切り取るような写真ももちろん素晴らしいけれど、そこにフィクションの存在を混ぜて新しい画を生み出せるのは、AR技術がもたらす新しい撮影体験なんだと思える。

 

 最後に。
 前述の通り、私自身がハンターとして狩場に赴くのは、もう10年近くのブランクを挟んでの事だ。それでも、職場に行けば案外、ゲームが好きな若人が遊んでいたりもして、「あ、吉雅さんもやってるんですね」なんて気さくに言ってくれる。そうなると「★5のアンジャナフをペイントしてきたから一緒に狩ってくれる?」なんて私からも声をかけてしまう。


 「モンハン」シリーズも今や20年近い歴史を持つ長寿シリーズ。
 コンシューマ機も持っていないし、Steamも腰が重くなってしまった私のような文字通りの老ハンターが、こうしてスマホを持ち寄ってはまた色んな狩友と狩場に赴ける。
 それはもはや国民的ゲームが生み出したコミュニケーションの形の一つと呼べるのかも知れない。


 「ひと狩り行こうぜ」
 そうボウガンを持って狩友に声をかける時、私は確かにハンターなのだ。





見慣れた日常の中に、見慣れたアイツが居る。


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