「仮面ライダーブラックサン」最終話まで観たよ。

 10点満点で言えば4点くらい…………!!
 

 とりあえず前回の5話まで観た時点での感想がこっちの記事。

 で、とりあえずだね、良い点もたくさんあったとは思うんだよ。
 やはり俳優陣の演技が良かった。西島秀俊さん中村倫也さんがそれぞれ演じるブラックサン、シャドームーンはもちろん良かったし、前者はくたびれて死に場所とラストミッションを求める渋いオジサマ、後者は若さを残したままピカレスクな理想に走り出す悪のカリスマ……と、そんな二人のキレのある同時変身のシーンは「ブラックサン」劇中の中でも屈指の名シーンに数えて良いと思える。
 あとは人間と怪人の狭間で揺れ動く少女の葵ちゃんを演じる平澤宏々路さん。この方もまだ15歳だというのに堂に入った演技をなさっていて、もう1話冒頭のスピーチの段階で良いなぁと思えた。基本的に渋い人たちが多い画面なので、ああいう若い方がしっかりと遜色ない演技をしているのを見ると素直に感心するというか、純粋に良いなぁ~って感じてしまうので。

 あとルー大柴さんの演じる総理は個人的に物凄く好き。
 下手するとこの作品の俳優陣の演技の中では一番好きかも知れない。
 正直、故安倍元首相に寄せすぎてる感じがいやらしいかなぁと思いながら最初は観てたんだけれど、グイグイと下衆な表現をお出しして来て最後は「物凄くいけすかない、狡猾な堂島総理」というキャラクターがしっかり立ったと思えたので。というかバラエティ番組とかに登場するオモシロ横文字おじさんってイメージでしか観てなかったので、こんな怪演ができる方だったんだな……おお……すげぇ……って。


 ところどころ挟まれる「BLACK」原作へのオマージュも悪くない。
 もうネタバレ感想も世の中出回ってるだろうから普通に書くんだけど、最終話の10話のOPが「BLACK」のOPを模倣してるんだね。ああいうの、もう、オタクの足元見てんな~? ってムッとしなくもないんだけれど純粋に好きだから仕方ない。それで言えばもう5話の初変身の時点でガッツリ足元見られてるから仕方ない仕方ない。俺はそういうのをされると年齢が35歳くらい若返ってキャッキャしてしまうイタいおじさんなんだよってわからせられてしまった。悔しい。
 でも幾ら原作のオマージュだからってクジラ怪人が持ってきた謎の液体でブラックサン復活! は原作を知らない人には唐突感スゴいんじゃないかなと思うよ。



 ラスト15分くらいの展開で台無しになった感があるんだけれど。

 「結局変わらない現状だから、暴力革命に『YES』」みたいな投げやり~な雰囲気を感じてしまってもう厳しかった。「バトル・ロワイヤル」ぐらいの期待値で観られれば良かったんだけれどそれをするには私は仮面ライダーってコンテンツが好きだったのもあるんだと思うよ。期待外れって感想は期待があるから出てくる感想なので。

 ブラックサン命がけの戦いの末に地下で人知れず(?)創世王が打倒されたとしても、今度は移民法案反対! だとか、戦争法案に力入れていくぞ~! って結局作中の日本はどんどん過激な方向に舵を取っていこうとしてしまうし、それは怪人を利用して私腹を肥やしていた堂島総理が除かれても変わらなかったし、戦いを経て自身も怪人というマイノリティ側になった葵は最後は寂れた村で子供たち暗殺の訓練をしたり爆弾の作り方を教える、新しいテロリストになってしまいました。ってどこに視聴後の爽快感が残るんだよこれのって話になってしまっていた。

 そう、なんというか…………。
 こう…………現代も続く怪人への差別とか、50年前の社会運動とか、そもそも怪人の起源が旧日本軍の人体実験──いわゆる「731部隊」の暗喩──によるものだったとか。
 そういう、現実にあった出来事に怪人を絡めてリアリティを持たせようって手法とか、その「社会に於けるマイノリティ(怪人)の在り方」は光太郎と信彦の対立構造を描くためにも重要な点なんだろうけれど、そこに軸足を置きすぎていて特撮ドラマ、仮面ライダーとしての爽快感は損なわれてしまったのは正直否めない。

 ザックリと言ってしまうと「敢えて『仮面ライダー』としてやる必要はあったか?」って考えると、正直……そこまでそこまで……かなぁ……。

 元々「仮面ライダー」はショッカーによる改造手術の途中から抜け出した改造人間の物語なので、異形ゆえの悲哀みたいなのは昭和ライダーオマージュとしては描く部分なのかも知れないけれど、だからといってそこに軸足を置きすぎてアクションや展開の爽快感にまで足枷をはめるのはそこまで上手な見せ方とは思い難いかなって。

 因みに私自身はそこまで日本の暗部、歴史に関して詳しい方ではないので、作中での描かれ方が真にリアリティのある描写かどうかまではちょっと判別できない。ヘイターによる怪人へのリンチ、ヘイトクライムに関しても唐突感があるというか、いや実際こんな事は日本ではできないでしょさすがに。ってなってしまったり、その結果の展開に関しても驚かされたけれど、そこは物語をガッと動かすための表現なのだろうなぁ……という事でそのまま観た。

 「大人向け特撮」というとどうしても、どんよりとした重苦しいテーマを取り上げがちなんだけれど、それをやるにしてはキングストーンとか創世王とか、そういうファンタジーな要素が如実に”浮”いて来てしまうのだよな。前述のクジラ怪人の液体でブラックサン復活! とか、他にもサタンサーベルが創世王を滅ぼす武器であった! とか、あ、そこはファンタジーな感じでやっちゃうのね。って思ってしまう点がチラホラあったりもした。
 それに創世王のエキスや人間を元に作った怪人のチカラになる謎のゼリー、ヒートヘブンもその設定が明かされた時は「やはり怪人は人間を食べる、食べようと求めてしまう側面があって、そういう悲しみが描かれたりする……?」と思ったら案外そこの掘り下げはなく、「ドラゴンボール」でいう仙豆みたいなもんで終わってしまったのも残念。

 アクションに関しては昭和ライダーを意識しているのはひしひしと伝わってきたし、オモチャ販促を考えなくて良いので派手なギミックを搭載した武器で音声鳴らしてジャキンジャキンしなくて良い点は良かったと思うんだけれど、今度はそれはそれで華がないモンなんだなと。
 我ながら贅沢な事を言う。
 その、アクションというか、バイオレンス描写というか。
 引きちぎる、絞め落とす、噛み付く、とか、武器や爆発に頼らないアクションシーンって、まぁああなってしまうのも無理はないんだろう。それでもブラックサン対シャドームーンの最終戦でブラックサンが見せたライダーキックはやっぱり「おおっ!」ってなったので、素手主体のアクションでもああいう決め技はあった方が良い気はする。
 それでいえば最終戦まで決め技を使わずにとっておいたのは英断のような気もしてくる。


 私の中の総評。
 面白いと思える部分もあったけれど、ところどころ「ん?」「そうかなぁ?」と思える部分もあったし、何よりオチの爽快感のなさと「別に『仮面ライダー』でやる必要性は……」という感想が一番強かったので10点満点中4点くらいに収まるよ。
 万人はお勧めし難いし、「仮面ライダー」観たいって人にはもっと勧めやすい作品もたくさんあるから、とりあえず1話だけ観てしんどくなかったら3話まで。それでも大丈夫そうで5話まで観て面白いって思えるんなら、じゃあ最終話まで観ても大丈夫かなって思える、そういう作品。

 アマプラさんは今度「シン・ウルトラマン」が来るからとりあえず次はそれが楽しみ。映画館でも観たけどまた観たいからアレは。

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