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からすうり文芸堂(創作)

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詩や小説、エッセイなど、創作文芸をまとめていきます。
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#散文

【散文】暗夜は続くよ、どこまでも

 十字架の聖ヨハネの『暗夜』を読んで、私自身の今経験していることこそが荒みであり、夜であ…

夏川佳子
2年前
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【散文】砂漠の宗教について、つれづれ。

 一般的に、キリスト教など一神教は「砂漠の宗教」と言われたりします。ユダヤ教・キリスト教…

夏川佳子
2年前
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【散文】離脱について考える

 中世ドイツの神秘思想家であったエックハルトは、仏教などでいう無我に近い考え方を持ったキ…

夏川佳子
2年前
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【散文】マイスター・エックハルトのこと

 中世キリスト教神秘主義では、「接神体験」がテーマの一つになっています。接神体験とは、神…

夏川佳子
2年前
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【散文】魂の暗夜について

黙想において、私たちは暗夜を経験します。 光に導かれて歩み出した求道者が、光の見えない暗…

夏川佳子
2年前
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【散文】書物にとっての喜びは読まれること

  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 『薔薇の名前』という物語では、中世の修道院の図書…

夏川佳子
2年前
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【散文】めくるめく知の迷宮

行動制限のない久しぶりのゴールデンウィーク。 行楽地にくり出す人の様子が連日テレビに映し出されている。 けれども我が家では、ゴールデンウィークを目前に夫が陽性になり、ホテル療養となった。 もともとどこかへ遠出するつもりもなかったけれど、私と娘はより一層、自粛気味に過ごすこととなった。 そこで、アマゾンプライムで映画『薔薇の名前』を観ることにした。 私は学生の時に、一度小説を挫折している。 かなりのボリュームな上に、中世ヨーロッパの歴史や宗教背景を知らないと難解で読みこなせ

【散文】21・世界〜魂の成長譚の結び〜

 タロット、大アルカナの旅はいよいよ21番「世界」にたどり着いた。 22枚の最終カードであり…

夏川佳子
2年前
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【散文】17・星の光とアストラルライト

 明るく輝く星空の下、一人の女性がひざまずいて水差しの水を注いでいる。両方の手にそれぞれ…

夏川佳子
2年前
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【散文】14・節制の奥に隠れているもの

 古典的な図像学によれば、「節制」はしばしば、水を一方から他方に移す2つの容器を持った女…

夏川佳子
2年前
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【散文】12・ユグドラシルの吊るし人

 北欧神話では、完全なる父が空間の大きな裂け目に、巨大な世界樹・ユグドラシルを創造した。…

夏川佳子
2年前
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【散文】9・隠者の名は

 隠者には秘された名前がある。三重に偉大なヘルメス。古代エジプトの司祭であり魔術師であっ…

夏川佳子
2年前
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【散文】7・戦車はケルビムの炎の翼

 炎の戦車は旧約のエゼキエル書の中に登場する、四つの顔を持つ奇怪な生き物=ケルビムの幻視…

夏川佳子
2年前
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【散文】6・楽園の恋人たちは

 楽園を追放される前、アダムとイブはふたりとも裸であったが、恥ずかしがることはなかった。  神は言われた。 「すべての木から取って食べなさい。ただし、善悪の知識の木からは決して食べてはならない。食べると必ず死んでしまう」  木というのは生命と繁栄の象徴であるが、善悪の知識の木は両極性や不均衡なものを表すという。すなわち、死すべき運命を知るということだ。不均衡な力は虚無のうちに滅びるだろう、といつか読んだ本に書いてあった。  また林檎は生殖の秘密を示すメタファーとして機能して