見出し画像

口頭意見陳述ー国税不服審判所ー

1 

国税不服審査の手続きの一環として、口頭意見陳述なるものを行いました。初めてです。

国税通則法95条の2に基づくものです。

自身が平成22年から平成26年まで国税不服審判所に勤務していた際にもあった手続きだったかとは思いますが、文字通り、請求人が意見を述べて、はい終わりという手続だったように思います。私自身は審判官として実施したこともなく。

異議申立て手続で実施されていた記録を見ただけのような曖昧な記憶です。

では、審判所時代、全く書面だけだったのかというと、そうではありませんでした。「請求人面談」という手続であったり、「同席主張説明」といった手続が実施され、担当審判官らが請求人と口頭でやり取りする手続がありました。

請求人面談は、確か、国税通則法の審判官の質問調査権の行使の一環として行なっていたかと思います。請求人に審判所に来てもらって、書面では分からなかったとこをその場で尋ね、確認し、時に質問調書という形で証拠化したりしていました。

他方、同席主張説明は何かというと、確か、根拠規定はなかったかと思います。国税通則法95条の2は、改正により、「意見の陳述に際し」「担当審判官の許可を得て」「原処分庁に対して、質問を発することができる」と規定されました。

こうした改正の方向性を見越して、請求人と原処分庁担当者とが「同席」して「主張説明」する手続として位置づけられていたかと思います。

日本の国税庁の柔軟なところだったのではないかと思います。もちろん、組織としての国税不服審判所を生きながらえさせることが目的の手段としての柔軟性かとは思いますが、こうした柔軟性は、近くでは、裁判所でよく見るところだったので、そういうことは当たり前かと思っていました。

法に明確な規定はなくても、他の規定の趣旨から考えたら、その趣旨を実現していく手続は、実施しても法に反することはない、という考え方です。

ただ、こうした柔軟性は、裁判所、国税庁共に、国家組織、国家公務員だったから可能だったのかもしれないということに、地方自治体の仕事をさせていただくようになってから気づきました。

ちなみに、全く個人的な感想としては、やはり地方自治体となると、法律等に規定のないことは、そこに積極的に突っ込んでいくという、勇気?はあまりない、実行力が十分ではないのかなという印象を受けています。

国家公務員と地方公務員の文化の違いなのかなんなのかはわかりませんが。たまたま、私がそういう印象をもっているだけなのか。

ともかく。以前の「同席主張説明」が、改正後の「口頭意見陳述」の先取りだったのかなと思います。

そして、この「口頭意見陳述」。

質問するなら、質問事項を先に書面で出せ、と言われました。また、主張するにあったても、先に主張の要旨を提出しろ、と。

当然、やはり、裁判手続の弁論準備手続とは違います。事前に散々、意見書、反論所を双方出しているのに、さらに手続のための書面を作成して出せというのか、時間に余裕がある審判所ならではの優雅さかと思っていたのですが、確かに、その場での口頭のLIVE感あるやり取りを期待しても、原処分庁は組織ですし、訴訟代理人のような代理人という職責があるものでもない、一職員です。決定権があるわけでもなく、その場での初めての質問に責任を持った回答をするわけがありません。

一旦、持ち帰りになります。

そうした無駄を考えたら、書面でも散々書いているけど、質問事項を改めて文書にして、事前に出しておけば、確実に、回答を用意してきて、そのセレモニーの中で回答という形を得られるというのは合理的かもしれません。

なるほどなと感心しました。

ただ、当日の最後。

原処分庁の担当者から、初めて聞く主張が口頭で滔々と語られました。

!!!

なぜ、それをこれまでの意見書で書いていないのか!?

今の主張を書面で出してください、とお願いしたら。

!!!

なぜ、こちらから出さないといけないのか?といった趣旨の担当者の発言。。。

確かに、更正の請求に対する請求の理由がない旨の通知処分だけど、課税処分については、課税する側に主張立証責任があり、さらには課税処分においては理由附記という制度があり、そうしたことはなぜなのか?という基礎知識があれば、上記のような発言はありえず。説明責任は課税庁でしょ、と言いかけたけど、多分、伝わらないなと思い、担当審判官に促されて、じゃあ、書面で、お願いだから今の法令解釈を書面で書いてくださいね、という書面を出しますね、ということでおさまる。

というか、もっと早くに、審判所が、主張を促すべきところだったのでは。。。

裁判の世界に戻って、利用者側として国税不服審査請求手続に関わるようになり、ますます、審査請求手続、国税不服審判所は要らない、というかあるだけ人材も予算も無駄ではないかという思いを強くしている。

特に。審判所が示した判断基準について、訴訟になった時に国側が、その基準は取らないという時の虚しさ。審判所って、訴訟になったら国の代理人ー法曹ーから相手にされていないのでは。。。

個別の職員の方々がどうこうというのではなく、やはり手続として訴訟に比べると限界が多く、その限界に比してメリットが多いともいえず。1年間、かける時間と労力がもったいないなと。

以上