14,000円のバットを買った

仕事を休職した。医師曰く、適応障害とのことで、とりあえず10月末までの1ヶ月間仕事を休んだ方がいいと言うので、そうすることにした。

休むにあたって、今回のような自分の状態は度々起こっている事実を振り返り、どうせならこのままこの仕事を辞めた方が自分のためだろうと思って、社長に休むついでにそのまま辞める旨を伝えることにした。

翌朝、何度もリスケを繰り返していた同僚との読書会の最終回をして、そのあとそのまま社長とオンラインで面談をした。

まず診察の結果を伝えて、1ヶ月休むところまで伝えた。そして、疾病手当の取得などの話をし、復帰の時期に話が移ったところで、退職の話を自分から切り出した。

これまで、度々今回同様の抑うつ状態になることがあったが、それらは4,5月あたりに起こることが多く、あくまでも季節柄のものだと認識していた。しかし、実際には10月末、ちょうどプロジェクトが繁忙期のピークを迎えたころにも起こっていた。ただこれを自分は見て見ぬふりをしていたように思う。だから、本当のところは、おそらく季節柄のもの(五月病)ではなく、たびたび適応障害が起こっていた、ということなのだろう。これについては、次回の診察で医師に聞いてみるつもりだ。

こうして何度も適応障害が起こっている。その度に仕事がうまく進められなくなる。自分も相当にしんどい思いをして、同僚たちにも迷惑をかけている。
この仕事をこのまま続けても、誰も得しないのである。同じような事態がこれからも繰り返され、その度に死にたくなるのは自分だ。そういうのはもう結構。十分。

要するに、この仕事に向いてないことを確信した。ということを社長に伝えた。本番まであと1ヶ月という繁忙期に辞めるだなんて本当に申し訳ないとは思うが、自分のためなので、そこまで気を回すことはできない。そこまで気を回していたら、いつまでも辞めることはできないし、仕事ができていないまま続けているという事実と、同僚への申し訳なさからこの状態はずっと続くことになる。ここらで終止符を打っておこう。

辞めることを伝えたところ、すんなり了承された。そのまま辞めるまでのプロセスの話をして、面談は終わった。

面談が終わって、朝ごはんをまだ食べていなかったので、近所の喫茶店でモーニングを食べた。喫茶店への道中、なんだかやけにしんみりした寂しい気持ちになったが、モーニングを食べながら泉昌之『かっこいいスキヤキ』を読んでいたら、そんなことはいささかどうでも良くなって、ゲラゲラ笑いながら呑気な気持ちになった。
「耳掘り」という耳掃除がテーマの作品が最高だった。耳掃除好きな主人公が純金の最高級耳かきを買って家で耳掃除する話。自分も耳掃除は好きだし、主人公のようにデカいブツが出たときの謎の喜びもわかる。
途中で主人公が、耳垢を見ながら「よく見ると小さな小さなポテトチップスのようだ」と言うのだが(吹き出しに囲まれた台詞ではなく、ぽろっと呟くのだが)、それが良い。まあ普通に最低な発言だが、わかる。思ったことないわけではないけど、普通言わない。でもそれを言っちゃう。それが良い。これが孤独漫画の醍醐味だと思う。

喫茶店を出たところで、猛烈に素振りがしたくなったので、途中でスポーツショップに寄ってバットを買って帰ることにした。
あまり種類はなかったが、重さのちょうど良いものがあり、それを買うことにした。値段は14,000円。バットってこんなするのかと思いながら買った。ケースは売ってなかったが、剥き出しで持って帰るわけにもいかなかったので(このスポーツショップから自宅までの道中に交番もある)、半分突き出てはいるものの、ビニール袋に入れて担いで帰った。

自宅のマンションに着くと、赤ちゃんを抱っこしたお母さんが荷物を重そうに持っていた。手伝おうとしたのだが、エレベーターで男と2人でなおかつそいつがバットを抱えている状況である。自分でも怪しすぎると思い、結局切り出せなかった。そのお母さんとは同じ階に住んでいたことを、エレベーターを降りてから知った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?