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 今日はなんだか心がクサクサする。悲しみと、それによる心のふさぎ込みと、ままならなさへの怒りと、しとしとと冷たくまばらに降る春の雨と、いろんなことに心がクサクサする。

 楽しみにしていた出来事も、手を滑らせて落としてしまったガラスのコップのように、カシャンと割れてしまって、私の心は宙に浮いてしまった。
 起き抜けに見た友人からのメッセージに対して、起きたばかりの頭の働かなさで、良い言葉が見つからなかった。しかし、そのまま返事をしてしまった。あの時すぐに返さずに、少し時間を置いてから返事をすれば良かった。なんですぐに返事をしたのか。このことが、もう夕方にもなるのに、未だに心の中で燻っている。

 今日は上手く本も読めない。文章も書けない。

 心の居場所がない。そもそもそんなものがあったのかと言われればそんなこと知ったことかと返したくなるくらいにはわからないしとにかく今日はそんな感じがするのだ。心はいったいどこにいれば落ち着くのか。

 昼に。一度、危ういと思う瞬間があった。どうにも心の琴線を張りつめすぎた、ゲインをあげすぎた、緊張を高めすぎた、そういった感覚があった。そして、今日そんなに高めてどうするんだとも思った。今日そんなことしたって何の意味もないだろ、と自分を諌めて鎮めようとした。身を畳の上に放り出した。
 外ではしとしとと雨が降っている。換気のために開けた窓からは、冷たい空気が入ってくる。肌寒い。そう思って窓を閉めた。

 今日、心の感度を上げすぎても、たしかに意味はないかもしれない。でも、意味があるかどうかなんて永遠にわからないし、なにより突然そうなってしまうのが人間の心というやつなんだと思う。全くもって腹立たしい。はた迷惑ではあるが、このままならなさに、私は一生付き合う必要がある。というか、生きる以上、付き合わざるをえない。

 今日は「怒りの日」なのだ。普段抑えつけられている怒りの感情が、たまにはいいだろうと、心置きなく暴れている。

 私は怒りの瞬発力がない。怒っていい出来事があっても、パッと怒れない。後から遅れて怒りが出てくる。きっと、普段から「怒ることは恥ずかしい」と思い込んだり思わされたりして、怒りを心の奥底に沈め切っているので、いざ怒りが必要な時に、スッと取り出せないのだ。
 怒りは必要で大事なものだ。喜怒哀楽、って言うくらいには感情の中でも大きな部分を占める。だからもっと怒ったっていい。学校で「怒り方」の授業をやったほうがいい。体育館でみんなで叫んだりとかして。くそっ!ふざけんな!いい加減にしろ!なめんなよ!
 怒りとともに、叫ぶことだってできない。カラオケ以外で叫べる場所が街のどこにある?どこだって叫べない。なんで自然な感情の発露もままならないんだ。街は、人に静かにするように、怒らないように、誰か他人の迷惑にならないように強制する。私の怒りと叫びは抑圧される。私はネットの中じゃなくて、もっと身体で怒りたい。

 突然街中で叫び出したくなることがある。うわーーーーーっと。息を大きく吸い込んで、エネルギーが全身を駆け巡って、声として放散して、全身でぐったりする。すると幾ばくかは頭とか心とかがすっきりする。身体は疲れるけど、心はしゃんとする。あの気持ちよさったら。思い返してうっとりしてしまう。怒ったり叫んだりできるという当たり前のように思える環境にすら、憧れを抱いてしまう。

 街でみんながもっと自由に怒って、叫ぶことができたなら。きっと心の中にストレスを溜め込むことなく、突然プッツンすることなく、健やかでいられると思う。
 そして、人が怒っているところを見て、誰かが「大変だったね」と優しくリアクションできたら素晴らしい。そこまで行かなくとも、みんなが「怒ることは当たり前のことだ」と思って、冷たくない、馬鹿にしないスルーをかましてくれるだけでも十分だ。それは優しさへの可能性に満ちている。見知らぬ他人のことを想像して、その人のために動けるところに人間の魅力はあると私は思っている。

我を忘れて、怒りをぶちまけてしまったので、最後に最近よかったものについて書きます。

・カネコアヤノ『抱擁』MV
https://youtu.be/Hv8JYdA22mA

 素直であることの難しさ、素直でいることの強さ、を思う。
 衣装がとっても良い。真っ白なドレスに、一筋の銀のテキスタイルが縦に通っている。宵闇にさす朝焼けの光明。雪山の凛とした澄んだ空気がこちらまで伝わってくるようで、見ている側の心まで洗われる。
 「聞き分けの悪い赤子のように」と歌う。顔の見えない大きな「社会」のルールばかりを考えて、自分に正直にはいられなくなって、身動きがとれなくなって、私自身がいなくなってしまう。
 赤子のように泣いて、抱擁を待つ。素直さは芯の強さ。自分の思いや欲望に向かいあっていこう。

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