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山本直樹「レッド」読み終わった。めちゃくちゃ怖い話だったけど絶対に読んだ方がいいと思う

1巻だけはAmazon無料ということもあってガッツリ紹介したのですが、あまりに作品の密度が濃かったので2巻以降もゆっくり読んでいこうと思っていたのに勢いがついて読むのが止められなくなり、結局一気に最後まで読んでしまった……(紹介はちゃんとしていく予定です)


読む前からわかっていましたが、ものすごい作品でした。これは絶対に読んでおいたほうが良いと思う。

この本は1冊あたりの単価が高いので、ぜひDMMブックスの半額セールの時に買って読むと良いと思います。私はDLSiteの25%offクーポン(11月30日まで)を使ってポイントで買えましたが、待てる人はDMMブックスの方がいいと思う。

一度始まった「総括」が加速していく様子がマジでホラーだった……


最初の方から読んでいくのは大変なので、山岳ベースに入ってからの展開が知りたいという人は、第一部の8巻から読めばよいと思います。本当に恐ろしいのはそこからです。

それまで溜めて溜めて溜めてきたものが一気に爆発し、狭い世界で地獄が出現します。

なんでわざわざ「第二部 最後の60日」と区切ったのかが謎でしたがこの60日こそがこの作品の神髄だからでしょう。

3年以上の時間を描いた作品だが、総括は最後の60日に集中している。
しかも最初に一度総括が行われた後いったん収まったのだが、やっぱり一度総括が起きてしまった後はもう歯止めが利かなくなった。

一度この手段がありになってしまった集団は、もう疑心暗鬼に陥ってしまう。その結果「リーダー」に権力を集中させ、そのリーダーにおもねることで安心を得ようとする人たちがお互いを蹴落としあうのはもう止められなかった。


山岳ベースの時点では37人残っていた。そこから約3分の1が順番に粛清されていった……


後半になればなるほどもはや大義名分もなく、ただの痴情のもつれだとかエリートへの嫉妬のような形で殺されていった。

一人一人が元の仲間によってリンチを受けて殺されていく様子がじっくりと描かれていてマジで怖い。

しかも殺す側が何一つ悪いと思ってない。殺す奴が人殺しの顔をしていない。だから謝ったり情けを求めても誰も助けてくれない。

結果として、ほとんどのメンバーはリンチを受けて体力を失い、さらに寒空の中でまともな手当ても受けずに放置されたことで体力がジワジワ奪われるような形で死んでいく。

一思いに殺されるのではなく、死にたくない死にたくないと思ってそれでもジワジワと苦痛の中で死が忍び寄ってくるのを感じながら、だれにも助けを求めることもできずにただ死の瞬間が来るまで恐怖に耐え続ける。

こんな恐ろしい死に方があるだろうか……同情とかじゃなくてただただ恐ろしくて夜中に涙が出てしまった。


結局総括とは何だったのか。何のために彼らは殺されなければいけなかったのか

殺した人たちは、何の責任も感じていないばかりか正当化する理由すらない。「なんだかわからなくなった」と言っている。

何もわかってないやつになんだかその場のノリで殺されただけなのだ。
こんな残酷で救いのないことがあるだろうか。


当たり前だけど凄絶な総括が行われた後、移動中に5名が逃亡した


しかも総括を指導したリーダー2名はあさま山荘に行かずに逮捕された


最後の9名はどういう気持ちで戦っていたのだろうね……。
私が今までニュース映像などで知ってたのは「最終章」の部分ですが、実はもうとっくにこの人たちは終わっていたんですよね。

山本直樹さんにとってはとにかく「最後の60日」が重要だったのでしょう。

最終章では総括は一切起きず、リーダーもおらず、何のために戦うかもわからず、勢いで人質を取って立てこもり、受け身的に戦っています。いきあたりばったりという糸の切れたタコのようです。

そんな状態だからこそ制圧されるまで最後の最後まで暴れまわりますが、マジで何の大義もなく、壮絶なのにむなしさを感じる描写になっています。

最後まで読んで「どうしてこんなことになってしまったのか」と改めて最初から読み返したくなる。そんな作品ですね。


1巻の時にもいったけど、今なんとなく勢いでネットで「正義の活動」に没頭してる人、一度これを読んでちゃんとかんがえたほうがいいとおもう。

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