痴漢被害やレイプ未遂のトラウマの重さが強烈に伝わるセリフ

あなたたちの事情は色々聞いた。父がしたこともよくわかった。私の態度も駄目だったと思う。もっとちゃんと、落ち着いて話し合えばよかった。だから、殺したいほど憎いとか、もう思ってない。ただ……ただね…怖いんだよ。今私を殺そうとした涼のナイフより、あなたを見るほうが、怖い。あなたを見ると、首筋がゾッとして身体が固まる。今も足が震えてる。冷や汗が止まらない。あの時、自分がどんな顔をしていたか。どんな力で私を押さえつけたか。わからないでしょう。それは、私の中でずっと消えないと思う。だから、謝らなくていい。何かしようとか思わなくていい。ただ、近寄らないで。桃太もそうだよ。桃太があなたを見るとビクッとする。それは、そうそう消えない。だから、もう。近寄らないで。

このセリフを言っている花という女性は極めて「強い」人である。非常に理性的で、タフなメンタルを持ち、命の危険がある試練を何度も乗り越えた、それこそ「男勝り」と多くの人が形容するであろう人間である。セリフの中にあるように、敵意どころか殺意を向けられても立ち向かうことが出来る人間である。

そういう強い人ですら、レイプ未遂の時のことを思い出すと、身体が震えてしまう。その人間にも事情があることが分かっても、もはや彼が自分に敵意がないということが分かっていても、恨みそのものは消えても、身体がもはやそれを拒否してしまうのである。おそらくどういう理屈をもってしても彼の存在を受け入れることは困難だし、とにかく視界に居てほしくない、という気持ちにしかなれないのだ。

同様に、多分彼女はレイプを想起させるような表現を見たらそのたびにレイプ未遂のことを思い出して体が震えたりめまいがするのだろうと思う。これはもう理屈を越えたものだ、というのを雄弁に物語っているシーンだ。


私は、ネットに居るミサンドリストの攻撃性や論理をないがしろにしたくそみたいな理屈づけが死ぬほど嫌いなのですが、それでもなぜ彼女たちがこういうことを言い出すかといった時に、全く理解や想像ができないというわけではない。

それだけ「つらい」思いをして、しかもその屈辱が呪いのように自分の身にこびりついていて、それを振り払うのに必死だということはわかる。彼女たちの理不尽さが、彼女たちが被った理不尽な被害の重さを示しているというのはわかる。

その被害の重さや、本人が強く傷ついているということそれ自体は絶対に否定してはいけない。被害やつらさを訴える言説や、レイプや痴漢を憎むような言葉は絶対に否定されるべきではない。

「涼は、泣いた赤鬼の青鬼で。赤鬼は謝罪してきた。さてどうするべ。」「それでも花さんは許さなくていいんですよ。許さなきゃいけないんじゃないかな、とか思う必要はない。それを考えさせるだけでひどい。」

レイプや痴漢は絶対に許されてはいけない。


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