大坂なおみ選手が抗議するべきは人種差別問題なのか?

大坂なおみ選手が突然、テニスのウエスト・アンド・サザン・オープンの準決勝を棄権すると表明した。
その理由は23日にアメリカのウィスコンシン州で起きた白人警官による黒人男性発砲を受けてである。
その後、大坂選手は棄権を撤回し、見事に準決勝を突破してみせた。
しかし、彼女が問題提起するべきは人種差別問題なのであろうか?
今回の一件を冷静に分析したい。


まず事の発端は黒人男性であるジェイコブ・ブレークさんがDVの容疑で通報されたことである。
彼は実は既にDVの容疑で起訴されており、交際相手の家に近づくことすら禁じられていたのである。
そして、警察官が現場に到着すると、男性を取り押さえようとした。
しかし、彼はそれを振り払い、自らの自動車の前方左側の座席へと向かった。
それをみた警察官は男性に対して、計7発、発砲を行った。

確かに、「白人警官が黒人男性を発砲した」という事実は間違えない。
しかし、これが人種差別問題なのかどうかはまだ断言することはできない。

というのも、発砲の理由が「男性が黒人であったから。」と決めつけることは到底できないからである。

理由は2つである。

1つ目は「男性が容疑者であった」からである。
男性はDVの容疑で通報された。
事実関係はわからないが、警察としては男性を容疑者として扱うことになる。
裁判所から女性宅に近づかないように言われていることや、女性や近所の方々の安全を考えると、一度身柄を拘束するということは適切な処置と言える。

2つ目は「拳銃を取りに行った可能性が高い」からである。
男性は警察の身柄拘束に抵抗した。
そして、男性は自家用車の前方左側の座席に乗り込んだのである。
動画から判断するに、この状況から扉を閉め、エンジンをかけ、車を発進し、逃走を図ることは現実的な行動とは言えない。
むしろ、車のグローブボックスから拳銃を取り出し、警察官に対抗するという可能性が極めて高い。
実際どうであったかはわからない。
しかし、現場の警察官の頭に、その可能性がよぎったことは間違えないだろう。

この2つの事実と警察官の身の安全を考えると、警察官の発砲には妥当性が見受けられる。

もちろん、7発も発砲する必要があったのかという検証は必要だ。
しかし、これを人種差別問題として扱い、警察官をレイシストとして吊るしあげることは間違えであると思う。
これは、まさに銃社会の問題である。

アメリカの銃社会が引き金の重みを損ねていることは間違えない。
彼らは日常生活の中においても、身の安全が侵される可能性と危険性を抱えている。

同時に、警察官の身の危険も、日本と比べものにならないものである。
警察官が市民の安全のために躊躇することなく職責を全うするためには、発砲という手段は必要であると言える。

もちろん、無実の市民が傷つくことは避けなければならない。
警察官の発砲が妥当であったかどうかは慎重な判断が必要である。

しかし、今回の一件においては一定の妥当性が見受けられる。

「たかがDVで発砲していいものなの?」と思う人もいるかもしれない。
これこそが銃社会の問題点なのである。
これはアメリカにおいて、人種差別問題と同じくらいタブーにされている問題とも言える。

他国の問題であるので中々検証することは難しいかもしれないが、我々もその引き金の重さについては考えてみる必要があると思う。

だからこそ、今回の一件を人種差別問題としてすり替えてはいけない。

大坂なおみ選手には、今回の一件を銃社会の問題として提起してもらいたい。