29歳、GWの大冒険(後編)

前回の続き

いよいよ宮城県へ

福島市のコンビニで休憩を済ませ、そこから20kmくらい走って宮城県と福島県の県境まで来ました。この時点で17:00くらいで、仙台まであと3時間でつくと思っていたので到着予想時刻は20:00です。
県境で記念に写真を撮ろうとしたそのとき…

「あれ、スマホがない…」

考えられる可能性は二つ
1. サイクルジャージの背中のポケットから落ちた
2. 最後に休憩したコンビニに忘れてきた
1については、この旅ではいつもサイクルジャージの背中のポケットに入れていますが、今までサイクルジャージの背中のポケットから物が落ちたことはないし、落ちたらさすがに気づくか…?ということで可能性は低い。
2についてはコンビニのトイレでスマホを扱ったことは覚えている。その後は走りに集中するため、スマホを見ずに県境まで行こうと走った覚えがある。実際に信号待ちなどでスマホは見ていない。よって2の可能性大。

実際、この瞬間はこんなに冷静ではなかったです。笑
福島県と宮城県の県境でスマホの紛失に気付いたわけですから、絶望です。笑

LINEのアカウントが消える…?
LINEのアカウントが消えたら今までやりとりしていた人とどうやって連絡を取るの…?
ネットも電話も使えないとどうやってスマホを探すの…?
スマホと背面に忍ばせたクレジットカードの使用をどうやって停止するの…?
日曜日のバレーボールの大会要項がスマホにあるけどそれが見れないから集合場所と集合時間が分からない…
今やりとりしているメルカリの取引はどうなるの…?
今ここで死んだら僕はどうなるの…?

いろんなことが頭に浮かびました。とりあえず来た道を注意深く戻っていると、スマホが見つからないまま最後に休憩したコンビニまで来てしまいました。

「もしここにスマホがなければ僕は…」

絶望の中、コンビニのトイレを確認しますが、スマホはない…

「人生、終わった…」

とりあえず店員に聞いてみます。最後の休憩をしたときにレジ打ちをしていたのと同じおばちゃんです。

「あの…もしかしたらここにスマホを忘れたんじゃないかと思っているんですけど…スマホの忘れ物とかあったりしませんか…?」
「トイレにスマホの忘れ物ありましたよ。」

人生、終わっていませんでした。この世界は優しさに溢れていました。

とりあえず、スマホは無事救出できたのでこの先のことを考えます。
このコンビニから仙台まで約75kmで、あと4時間でゴール!と意気込んで約20kmを1時間くらいで爆走していたので、その道をまた戻って正直心が折れる寸前まできていました。この時点で18:30、仙台への到着予想時刻は22:30です。

また同じ道を1時間くらい走るのか…
宮城県に入っても、仙台までは暗い道が続きそう…
福島から電車で宮城まで行くか…
あと75kmを走る気力と体力がない…

もうここで諦めようと思いましたが、あと75kmは今まで走った距離に比べれば少ないし、仙台まで走りきるという自分が決めたことをやり遂げないことを想像するとかなり悔しくなりました。
もう限界を超えた心と身体をあと少し酷使して再び仙台へ向かう決意をします。

もう19:00は過ぎ、真っ暗な中国道4号を爆走し、宮城県白石市から大河原町、柴田町、岩沼市、名取市を通って仙台まで行きます。
白石市から岩沼市につながる国道4号は街灯が少なく、交通量も多いため本当に怖かったです。本当に危ないと感じたので生きて仙台まで走り切るということだけを考えてひたすらロードバイクを漕ぎます。

名取市まで来ると明かりが増え始め、ようやく終わりが近づいてきたのを感じます。ここで最後の休憩をして22:45に仙台駅に到着しました。
率直な感想としては「ああ、終わってしまった…」という感じです。なぜか高校の部活の最後の試合が終わったときのような気持ちになりました。笑
達成感というより終わってしまった虚無感の方が大きかったです。不思議なもんです。

限界を超えた身体でヒルクライムをする

2日目は電車で石巻に行き、女川から牡鹿半島を一周して石巻に帰ってくる約100kmのサイクリングを予定していました。
前日の22:00に到着予定だったのが22:45になってしまったため、十分な休憩が取れず、身体がヤバかったです。笑
足が十分に曲げられないほど太ももが張っていました。こんなに太ももって張るんですね。笑
でも、これも自分が決めたことなのでやり遂げようと思って頑張ります。
石巻から女川は距離は近いのですが、海の近くというのもあって風が強いです。向かい風だったので精神的にかなりやられました。

その後、牡鹿半島を一周します。事前情報だと最初の6kmが上りでキツいという認識だったので、そこを超えれば大丈夫と思っていましたが、結論としては想像の50倍きつかったです。
いつも平均斜度10%近くのヒルクライムをしているので、斜度5%くらいの牡鹿半島は身体的にキツいヒルクライムではありませんが、精神的にかなりキツかったです。
私が経験したヒルクライムは目標地点までずっと上りで、帰りがずっと下りというものですが、牡鹿半島は違います。
そこそこの長さの上りと一瞬の下りを何回も繰り返します。長く苦しい時間と一瞬の癒しが何回続けば終わるのかが分からないのが精神的にかなりキツかったです。しかもこれ、一周60km以上あるのでかなり長いです。島の端まで行っても終わりというわけではなく、延々と苦しみ続けます。これは本当にキツかった。しかも余裕を持っていましたが帰りの電車の時間もあるので、ある程度ちゃんと走らないといけないプレッシャーもキツかったです。

そんなわけで、無事に電車で自宅まで帰ってきました。24:00着。死ぬほどキツかった。

大冒険の感想

ひたすらにキツいし辛かった。
でも、自分ってここまで頑張れるんだなぁ、とまた自分の限界が広がった気がする。こういう経験をすると日常のあらゆることがキツく感じなくなるので、そういう面では非常にいい経験だった。

一番の思い出

仙台駅で飲んだずんだシェイクが美味しすぎて脳天をブチ抜かれた。
あれ、全国展開してないのかなぁ。あれば飲みたいし、ずんだシェイクを飲むために仙台に行くまである。

ではでは。

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