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目的地の認識。#comeの概念

2019年、あれは5月だったか6月だったか。現在長友佑都の専属トレーナーをしている、フットボールスタイリスト鬼木さんのワークショップに参加しました。藤枝東高校サッカー部の練習に二回ほど来てくれた、体の使い方に詳しいトレーナーの人というイメージだったが、いざ講演会に行ってみると、なんというか、言語学者だった。。 

海外のトッププレイヤーにできて、平凡な日本人プレイヤー(もちろんプロも含め)にできない動きを、細かく言語化していた。まず日本語と諸外国語では前提が異なり、あいつらがもってる概念はフットボールの動きにうまく直結するが、日本語はフットボールに向いていないのだ。それは後述するとして、まず日本人があいつらと同じ動きをするには、なぜそれが出来ているのかを認知し、それを言語化しなければならない。言葉のニュアンスは日本語だと15%しか伝わらない。そこで鬼木さんが多用している言葉が、「目的地の認識」と「comeの概念」である。

日本語は自分中心、話者中心の言語で、動作者の視点から見ることが多いが、諸外国は神の文化があり、神が中心なため、客観的な視点から見る。日本語の「行く」や「来る」は視点が自分であることが明らかである。それに対して、英語で、「今行くよ」は、「I`m  coming」という。「come」とは視点を合わせている所に向かうというイメージである。つまり日本語の「来る」とはイコールではないのだ。神の文化というものを持つ諸外国人達、通称;あいつら は、言語の視点に関して、そのニュアンスが客観的なことが多いので、フットボールにおいて俯瞰しやすく、comeの概念をもともと持っているのだろう。この理由で諸外国語の言語の方がフットボールに向いているといえるのである。つまりcomeの概念で何が言いたいのかというと、選手間で目的地を共有して、そこに到達するための動きをしろ ということだ。そのために目的地を認識することが大切になってくる。

例えば、FWの選手と、パスもしくはクロスの出し手が、目的地をゴールとして認識し共有できている時は、FWはゴールに向かって走ったり、自分がシュートをうつスペースを空けるためにマイナスの位置に動いたりする。そして出し手がその通りにパスを配給できるようになる。逆に良くあるパターンで受け手の目的地の認識がボールになっていて、ただボールに寄ってしまう。だとか、シュートシーンでボールに向かって走ってしまい、自分がゴールの枠から外れて無理な体勢でシュートをうったり。目的地が認識出来ていれば体は自然とその方向に向く。動きやポジショニングがスムーズに効率的になる。意外とできていないプレイヤーは多い。特に日本人は。

守備でも同じことが言える。相手との1対1で相手が抜いてこようとしている時に、目的地をどこに設定するか。この場合は自分の背中方向、具体的には自分の両斜め後ろである。相手の視点からすると、相手のドリブルの先の空間である。こうすれば、相手が抜きにかかってきたときにスッと体を入れられる。逆にこのときボールに目的地の認識がいってしまっている場合は簡単にかわされてしまう。目的地を認識している方向に体は自然に動くことを考えれば当然である。逆に攻撃でドリブルしているときに、一瞬相手の意識(目的地の認識)を変えさせれば、かわせるということだ。他にもディフェンダーが裏をとられるシーンも、そのディフェンダーの目的地が相手に何かに気をとられて、裏になってない場合が多い。

よくトレーニングや試合前のアップで見る、マーカーに向かってショートダッシュをして、直前に前屈みになって細かくステップを踏んで止まるやつ、あれ完全に目的地がマーカーになってるでしょ。試合だったらそのマーカーがボールになるだけ。ちゃんと目的地が背中方向にある場合は、止まるときに背中が伸びる。守備は少しの意識で動きが変わると思う。

では、奪いにいく守備はまた別なのか。背中方向に目的地があればそう簡単には抜かれない気はするが、ボールを奪うことに関してやりづらくなるのではないか。自分もそう考えたが、基本的に守備においては相手がいい状態の時はとびこめない。もちろん後を向いている時や、トラップが大きいときは前傾姿勢で奪いに行くが、負けているときであっても、しっかり背中方向に目的地を設定して寄せて、相手をハメてとるのが大事。人数を合わせてハメてカットやトラップ際を狙ったり、キーパーに蹴らせて回収など、相手に悪い状態でボールを持たせることができればボールを奪える。守備はその見極めが大事なのだろう。

このように言語化し伝えることがフットボール上達には欠かせない。鬼木さんの話は僕自身もまだ全然理解できていないと思うので、あと10回は聞きたい。このような言語を使って日本人プレイヤーの動きが変化してくるのかは、いま長友佑都で実験中だそうです。難しい所だけど意識次第で少しずつは変わるだろう。

こうして、指導者として自分の学んだことや頭の中にあることを文字に起こして整理することは絶対に必要。選手にも少し当てはまるけど、特に指導者ですね。

#comeの概念 #目的地の認識 #フットボール




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