『一庶民の感想』 11

 現代は結婚や出産、おそらくは恋愛までも、贅沢な消費となった。つまり、金がなければ恋愛も結婚も出産もできないのである。

 美容整形ブームもこれと関連付けられるかもしれない。特に女性に顕著だが、若さと美貌が貨幣として機能するのである。年収に若さと美貌が加算される。したがって、若いときに大衆の支持を得られやすいような顔に整形をし、ボディメイクというかたちで大衆の支持を得られやすい体になれば、ものすごく得をするのである。具体的には、無料で高価な食事が食べられたり、良いホテルに泊まれたり、年収の高い金持ちの男と恋愛したり、結婚できたりする。セックスに不自由することもない。若い男の整形は、若い女の整形に比べれば効果が落ちる。そして、普通の若い男にはその男の年収以上の価値はない。現代のヘテロシャクシャルの男は女から減点方式で採点される。上限は年収だ。そこから性格、コミニュケーション能力、顔、体つきなどなど細かく点数化され、減点されてゆく。減点された男が、減点した女の許容範囲内に収まっていれば、そこで初めて恋愛交渉のテーブルに乗る。許容範囲から外れていれば足切りだ。若さと美貌が(一般に女性は若いときの方がより美しいと大衆からは思われる)貨幣化した現代の女には、恋愛相手、結婚相手の選択肢が多くある。よって、気に入らない男を即座に切り捨てても、またすぐに次の相手がやってくる。次の相手は言うのだ、

「こんにちは。ぼくは何点ですか?」

 安価な美容整形の登場や男女問わずのボディメイクブーム、男の化粧市場の登場などは、資本主義が高度に発展してきた結果であり、ついに人間の顔や体までが完全に商品化されたことを表しているとぼくは思う。人間性や精神性、コミュニケーション能力などは、貨幣(物)が神となってしまった現代では、おそろしくその地位が低く見積もられている。この現象そのものが、格差拡大の本因の一つであると思われる。


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