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錆びるどころか

ライブ:Rock ’N’ Roll Gypsies 2023 New Album Release Tour「V」(渋谷Club Quattro、2023年5月25日)

昨年12月以来のロックンロール・ジプシーズ。久々に観る彼らのライブは、7年ぶりのスタジオ録音というニューアルバムのリリースツアー。CDを入手し、三歩歩けば忘れる鳥頭ながら一応予習もして、準備万端。否が応でも期待は高まる。

定刻19時を10分ほど回った渋谷クアトロ。アルバム「I」(2003年)からの定番曲「Truckin’」で始まったステージは、最新作「V」収録の「くりかえして」で本編終了。アンコールは2回。そのアンコールでこそ「Lady Cool」「Do the Boogie」「Fool for You」など、ルースターズ・ナンバーやカバーがみられたが、本編はジプシーズのアルバム「I」~「IV」と「V」からった、まさに彼ら自身のレパートリーのみで構成。その意味では、これぞロックンロール・ジプシーズ、とばかりに彼らの魅力がぎゅっと詰まった素晴らしいライブだった。

今回の主役である新曲の数々は、おなじみのジプシーズ・ナンバーに混じって随所に組み込まれる形で披露。聴くと確かに耳新しく目立ちはするが、悪目立ちすることはなかった。これまでの曲と並んでも違和感なく、見劣りもせず、どれもが輝きを放つピースとして、彼らの世界を作り上げていた。

そして舞台で眩しいライトを浴び、プレイする4人のジプシーたちも、時と経験を重ね、錆びるどころかますます磨きがかかっていた。

下山さんのギターの多彩さと迫力は、なんと表現したらいいのか。どうしたらあんな音が出るんだろう。ボキャブラリーの貧困が悲しいのだが、すごーい!の一言に尽きる。特に「Fly-with only one wing」は面白かった。触れるとビリッと感電しそうな勢い。

また、ドラムス・池畑 x ベース・市川のお二方の重低音コンビネーション・プレイもとてもよかった。「Mr. Lover Man」での力強くも、歯切れよいリズムのシンクロ技がすこぶるキュート。池畑さんのドラムは、みんなの音が不思議と吸い寄せられていく感じがする。磁石みたいに。

花田さんは、いつになくボーカルが印象に残った。低く唸り、吟じて、声が下に溜まっていくようなところがなく、素直にまっすぐこちらに届いてくる感じがよかった。歌詞にせよ、メロディーにせよ、ムラなく伝わってくる、というか、響いてくるというか。ギターも二重丸。

さて、渋谷の夜は池畑さん作詞、作曲の「PLEASE」で幕。やはり池畑作品である「Mr. Lover Man」と同じく、明るくシンプルなメロディーで、音楽的センスも素養もない私でも、思わず歌い出したくなるような楽しさ。このゴキゲン・ムードは、三歩歩いても鳥頭から消え去ることはなく、無事、帰路に。ありがとう、素敵な夜!


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