夢の続き
ライブ : 花田裕之 “流れ” (上尾・plus eleven、2024年7月20日)
暑いです、それだけです・・・、という花田さんのMCに、もうすべてが凝縮されていたように思う。ひたすら長く暑い1日が暮れる頃、上尾のライブは始まった。
日没後も収まらない暑気のせいか、演奏中でも時々弦をおさえる左手をほんの一瞬ギターから離し、手の汗をぬぐってはすぐにまた弾き始める花田さんであった。そんな中でも朗々とした「いつか見た夢」や、「Train Train」(さりげなくリフにキュートなおかずが?)、花田さんならではの心地よい酔っ払いモードの「ぬすっと」、さらにはアンコールでの「もしも」などがよかった。フォークっぽい要素は抜いて、どちらかというとロックで押してきたプログラムだったかもしれない。また、時おり思い出したように吹くハープが色を添える。
自作/カバーに関わらず、歌詞変更を抜きにして語ることはできない「流れ」。暑くても「ハイウェイをおりて」をはじめ、歌詞変更は絶好調。ちなみに私にとってこの現象は、例えばおやつに刻みアーモンドのクッキーをもぐもぐかりこり楽しく食べていたら、実はクルミのつぶつぶがしれっと混じっていて、おまけに気がつくビターなチョコレートチャンクなんかも堂々紛れ込んでいた・・・、そんな感じだろうか。個人的には違和感なく美味しいので、全然OK。むしろ時代 (というとおおげさだが) のムードというか、歌い手の気分みたいなものが感じられて、面白い気もする。ステージ上のご本人の意図はまったく知る由もないが。一方で、この晩の「Lady Cool」みたいに突然、先祖返りのごとく元の形に戻っていたりすることもあるし(「思い通りに」のくだり) 。これはこれで久しぶりに聴いたオリジナルだったので、逆に新鮮でよかった。
何もかもお天気に罪をなすりつけてはいけないのだが、やはり猛暑の日々で私の頭は輪をかけてぼんやり。ただぼさっと店の椅子に腰かけて、2週間前の阿佐ヶ谷「流れ」の夢の続きに静かに身を沈ませるような、そんなひとときだった。
さて、青い空に強烈な西日の往路とは打って変わって、帰路は激しい雷雨。安物の晴雨兼用傘などはほとんど役に立たず、結局ずぶ濡れ。これも夢の続きかしらん、と思った夜。
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