見出し画像

自由な魂は自由に

ライブ : 花田裕之 “流れ”  (上尾 プラス・イレヴン、2023年3月26日)

関東地方は朝から雨。電車を乗り継いで上尾に向かう時も雨。このシチュエーションはどこかで、と思ったら、ちょうど昨年の今頃、やはり雨の中プラス・イレヴンへ「流れ」を観に行っていた。そんなことを思い返しつつJR高崎線上尾駅に着くと、雨はほとんど止み始めていた。それでも軒下らしい軒下もない店の前で傘を広げ、開場を待つ。

こんな日にどうも、という花田さんの挨拶と共に「Tell Me Why」からステージはスタート。初聴きの「Set Me Free」 (The Kinks) (だと思うのだが、違っていたらすみません)を始め、この日の演目も優に20曲以上、相変わらず盛り沢山。しかし曲の数だけでなく、その中身もよかった。声がよく出ていたし、何よりギターが充実していた。音にキレ、そして勢いがあった。ちょっとしたミスタッチも直ぐに取り戻し、力のある安定したプレイを見せてくれた。

「なまずの唄」や「雨」などの長尺も乱れることなく完遂。その一方で「Heart of  Gold」などは、エンディングをキリッと短くタイトにまとめたりと、アクセントのついた演奏も面白かった。

Buzzの原曲は爽やかな明るい曲調なのに、「流れ」バージョンはどこか陰りを帯びた「愛と風のように」。曲タイトルでもあるサビの文句がこの晩は「愛のスカイライン」に変更。この曲が昔、日産スカイラインのCMソングだったということは知っていたが、後で調べてみたら、これは当時のキャッチコピーだったらしい。また実際、「愛のスカイライン」ともCMで歌われていた様子。興味深い発見だった。

花田さんの歌う「Rolling on the Road」を耳で聴きながらも、なぜか頭では目の前の花田さんでもなく、内田さんでもなく、ショーケンでもなく、鮎川さんのことを考える。自由な魂は窮屈な身体など脱ぎ捨てて、自由に空をどこへでも飛んでいく。この世なんて軽々と抜け出して、痛みも悲しみも、飢えも寒さも諍いもない自由な世界へと飛んでいく、そんな光景を夢想していた。別にそういった内容の歌ではないはずなのだが。サンハウスではなくこの曲で鮎川さんを思い浮かべる、というのもおかしな話。直近に5月の追悼ライブの報せを聞いたせいか。あるいは、心の奥の微妙な部分に触れる弦の旋律が、そんな感傷を呼んだのかもしれない。

さて、おセンチな妄想はこの曲限りでおしまい。ライブがはねた後、客席側に出てきた花田さんに思い切って握手をお願いしてみたら、快く応じてくれた。嬉しい!!

次に「流れ」を聴きに行くのは、雨降る街か、星降る街か。ぜひ楽しみにしていよう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?