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飯能で今年も過ぎてゆく

ライブ : 花田裕之 “流れ” X’mas Live @ GINGADO (飯能・銀河堂、2022年12月24日)

クリスマスイブの晩、夕闇に染まる空を西武池袋線の車窓から眺めつつ、飯能へ。駅に降り立つと、しんと冷えた空気。そこから歩くこと10分余り、銀河堂にたどり着く。古びた木のぬくもりが優しい店内は、レトロな雰囲気溢れるクリスマスの飾り付けがよく似合う。

この日はまずサトウノラさん(表記不明のためカタカナですみません)がオープニングアクト、次いで花田さんという段取り。サトウさんは、国道(と県道)の歌を3曲披露。チューニングメーターではなく、音叉を使ってギターのチューニングをする姿が印象的だった。

そして、花田さん。前後に休憩をはさんでの2部構成、さらに2回のアンコールを加えて今回も聴き応えたっぷり。というか、個人的には聴き応えありすぎて、いつになくライブのあと腑に落ちるというか、消化するまでに少し時間を要した感じ。あれこれの曲がトリガーとなって、連想記憶の回路がフル稼働。頭の中で思い返しては立ち止まり、を幾度も繰り返してすっかり道草をくってしまった。

かくも2022年最後の「流れ」、ききでのあるものだったが、年納めという点では「決めかねて」が心に残った。「決めかねて 今夜も過ぎていく」のフレーズに過ぎてゆく一年が重なってゆく。

「なまずの唄」もよかった。「流れ」では定番であり、過去に何回か取り上げたが、今回の「なまず」もやはりすぐれていた。長尺のゆったりした導入部から一気に加速し流れにのる、長編叙事詩のようなこの歌を、胆力の太さと繊細さを兼ね備えたギタープレイでぐいぐい聴かせてくれた。

「なまず」と好対照をなしたのが「シルクの夜」。こちらはほぼイントロ無し、思い切ったストロークでいきなり語るようにして歌い始めるスタイル。しかもかなりテンポを落としながらも、リズムは取りこぼさない。こんな「シルク」もあるのかと。面白かった。

さらに放っておけないのが「新型セドリック」。先月下北沢で行われた柞山さん(ベースギター)とのこの曲の共演も記憶にまだ新しい。ここではアコギ一本で。クールなイメージの花田さんにしては情念を感じさせるボーカル。静かに熱く燃えさかる氷の炎のよう。思わずドキリとさせられる。低く唸るギターも腹にずしり。

余談だが、今回、花田さんのMCで明かされるまで、山口冨士夫さんが在りし日に羽村市に住んでいたとは知らなかった。横田基地の近くにいたとは聞いたことがあったが。子供の頃、この辺の古い井戸や動物公園へ遊びに行ったことを思い出し、なんとなく懐かしく、ほっこりした気持ちになった。それと、銀河堂の女主人がいれてくれた紅茶が美味しかった。花田さんと一緒にまた来年、この場所でぜひお目にかかれることを切に願う。

読者の皆さま、どうぞよいお年をお迎えください。

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