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南国土佐でRollin' on

ライブ : 花田裕之&椎野恭一 ~NAGARE ROLLIN’ ON 2023 in KOCHI~ (高知・A’ bar、2023年11月19日)

「流れ」late comer ゆえに過去数多の名演をきっと見逃している自分。だから花田さんと椎野さんのギター&ドラムス・セッションという、このスペシャル・流れはどうしても素通りすることができなかったんである。

というわけで久しぶりの完全アウェイ、南国土佐にやってきた。

見事なカナリー椰子が立ち並ぶ、通りの名前は追手筋。道の先には高知城。会場はこの追手筋から1本入ったA’barという店。倉庫を改造したような天井の高い造りにバーカウンター、椅子とテーブルが置かれたフロア、そして畳の小上がりさえも。ステージのバックドロップは真っ赤なゴム引きシート。そのど真ん中に描かれた、緋文字ならぬ黒文字の巨大なアルファベットのAが来訪者の目を引く。

さて花田さん、髪は結わかず、ほどいて登場。そのせいか、ライトを浴びた顔周りの髪と肌の色がコントラストをなして、こめかみから頬、顎の輪郭がくっきりと浮かび上がって見える。とてもセクシー。まずひとりで2曲ばかり歌った後、早々に椎野さんが登場。ゲストという感じで、休憩後の第2部あたりから椎野さんかな、と思っていたから、これは嬉しい誤算。結局、最後までほぼずっとふたりして、惜しむことなくクールなプレイを聴かせてくれた。ライブは一期一会。同じものは二度とない。いつも最初で最後、たっぷりと浸りきる。

1曲目の「Crazy Love」から、サンハウス・ナンバーのアンコールまで含め、おそらく20曲前後のセットリストだったと思う。おなじみのナンバーが多かったが、リズムセクションひとつ入るだけで、大きく曲の印象が変わる不思議。例えば 「時の過ぎゆくままに」はジュリーの原曲に寄っていくでもなく、かといって、いつものギター1本の「流れ」のものともちょっと違う。うーん、知識と言葉が拙くて上手く説明できないのがもどかしいなぁ。また、「ぬすっと」はスライドギターと「焼きそば」の組み合わせ(たぶんワイヤーブラシだったと思うのだけれど、違っていたらすみません)。なんか、ふらふらの酔っ払いのマーチみたい…. (※完全に個人の感想です)。ここは笑うところではないはず、でも心の中ではクスクス笑いが止まらない。可笑しみと哀しみが香るブルースは星5つの味つけ。これは美味か、珍味か。

これらの曲に限らす、どれもが特筆に値する出来だったと思うが、個人的な好みでさらにつけ加えるなら「Heart of Gold」と「なまずの唄」がよかった。「Heart」では、椎野さんという強力な味方を得てか、花田さんはボーカルにも楽器にも余裕が感じられたし、丁寧さが光った。もう一方の「なまず」。椎野さんも花田さんと遊ぶようにプレイしているようにも、逆にお互いにぶつかり合うようにプレイ・ファイトしているようにも見えて面白かった。例の長いクロージングまで呼吸ぴったり。大いに客席を沸かせてくれた。

今回、実は3年ぶりの遠出だったので、直前まで果たして本当に行くのか、行けるのか、行っていいのか、迷いは尽きなかったが、やっぱり行ってよかったと思う。No risk, no gain. リスクを払っただけの、いや、それ以上の旅だった。なお、行く先々で親切にしてくださった方々、心配しつつも快く送り出してくれた家の者、そして素晴らしいライブをみせてくれた花田さんと椎野さんには心からの感謝を伝えたい。ありがとうございました。


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