おたいせつに
ライブ : 花田裕之 “流れ” (阿佐ヶ谷・TABASA、2024年5月18日)
近ごろの花田さんはギターのみならず、ブルースハープが充実しているように感じる。ここ阿佐ヶ谷でも「Free Bird」を始め、随所で円熟の弦にのせて情感のこもったハープを聴かせてくれた。言葉以上のものが響いてくる感じ。緊張すると呼吸は浅く、逆にリラックス状態だと深く穏やかになるという。その呼吸をベースに音をつくる楽器は心情が表れやすく、また、思いも込めやすいのかもしれない。何にせよ花田さんのギターとハープの協調は、追い風に舞うように曲を盛り上げ、伝えかけてきてくれる。とてもいい。
一方、ギターの熱量もすごかった。特にアウトロから最後の最後、ファイナル・タッチに至るまでの演奏に目も耳も釘付けになること、しばしば。思わぬ展開とフィニッシュの決めのカッコよさに驚きの眉が上がる。中でも「泣きたい時には」はハートが撃ち抜かれんばかり。胸がきゅんと痛い。
「あきれるぐらい」「風の跡」「渦」と新旧3曲のジプシーズ・ナンバー。そういえば、ここしばらく音信不通のロックンロール・ジプシーズ。きっとそれぞれ都合があるのだろう。だからご無沙汰は仕方がないのだけれど、今回の曲の采配はやはり嬉しかった。
伸びのあるスライドギターはそのままに、少しテンポを上げ、拍子をはっきりと打ち出してきた「No Expectations」。いつもよりちょっぴりムードが変わって面白かった。「道のはて」はイントロが始まるなり、もうウズウズが止まらない。曲が進むほどにイケイケで「ヒャッホー!」と脳内は大騒ぎ。おもむろに「彼女は嘘をつかない」 とひとこと言い放つなり、ギターを弾き始めた「Cocaine」には思わずニヤリ。
アンコールを求められての1曲は「たどり着いたらいつも雨降り」。歌い出し「疲れ果てている事は」のくだりは (おそらく) 冗談半分、本気半分のやさぐれ&くたびれ口調。終いには客席に向かって「もう、帰って」とな(笑)。さらにステージ前半であったか、「決めかねて」では「ひとの予定をあまりきかないでください」と歌詞変更で直訴。人気者はつらいなあ。皆、花田さんのことが大好きで、放っておけないのでしょう。とりあえず一介のリスナーとしては、次の予定まで爪 (ライブ中、右手の爪を時々気にしていた) と喉 (気温の乱高下がこたえる時節柄) をどうかおたいせつに、と心の中でつぶやくぐらいしか。余計なお世話と知りつつ。
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