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追記編・SADNESS CITYそれぞれ

CD:「Riff Rough」 花田裕之(1990年/東芝EMI)
(2019年1月投稿のAmazon CDレビューへの追記(削除済)を加筆修正。追記は同年12月投稿)

前回の投稿でふれたものとはまた異なる「Sadness City」(以下「SdC」)にライブで遭遇する機会があったので(band HANADA、2019年11月16日/佐野 Bar Ken)、以下、少し書き留めておく。

今回聴いたのはband HANADAの名が示すように、花田氏自身のバンドによるもの。これもまた(still a-)liveな一曲、かくもなお進化する「SdC」が感じられて大変よかった。

この曲はイントロの出だしが特徴的なのだが、実は今回のライブでは、かなり原曲にアレンジが加えられていたこともあり、恥ずかしながら冒頭一体何の曲かわからず、当惑することしきり。イントロが進むにつれ「これはもしや?」と予感、そして歌と共に「やっぱりあれか?」の期待、”Sadness City~”のキメの歌詞の部分で「そういうことか!」と目から鱗、まるでミステリーを解き進めていくような気分だった。たぶん長年聴いてきた人ならすぐわかるんだろうな、と心中苦笑いしつつも、結構それはそれで面白いプロセスだった。ライブがはねた帰り途、花田氏がかつて何かのインタビューで、曲はアレンジ次第だ、というようなことを言っていたのをふと思い出し、ああ、あの発言はこのことか、とはたと膝を打ったのであった。(だいぶ前の日付のインタビュー記事だったと思うが、氏の考えはまだそのままなのだろうか。)

アルバム収録の「SdC」は、私にとっては過去の録音という先入観のせいか、整然と調えられた箱庭を空から鳥の眼で眺めるような感覚がある一方、今回の佐野バージョンは、繁るにまかせた音の葉、言の葉の鬱蒼たるワイルド・ガーデンを、地を這う虫の眼で見上げ、見渡すような体験だった。井の水、野をうるおし、花咲き乱れ、蔓からみつくこの庭をいつかまた訪れる機会があるといいのだが。

もちろん私が聴いたこれら3つの「SdC」(アルバム収録版、アコースティック版、佐野版)それぞれ、どれかの良し悪しを言いたいのではなく、何をどう思うかは、やはりまったく好みの問題なのだが、ただ私としては・・・、その判断はもうしばらく考えさせて欲しい。

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