見出し画像

屋台ラジオ 29日OA 水谷冬妃さん

水谷冬妃さん 20:30~21:15

去年、マニアフェスタというイベントに遊びに行ったのですがそこで出店者としてブースを開いていた水谷さんに再開を果たしました。出会いは学生自体に参加をした信州若者千人会議というイベントだったのですが、その後は東京で行われるイベントなどでも何度かご一緒していましたがお互いに大学を卒業後は全くやり取りはありませんでした。今回ラジオのお話を依頼した時に連絡をとったらママになっていたということで、実はそれが一番驚きましたし、おめでとうと声をかけられてたことがとても嬉しかったです。

画像1

山谷という地域

学生の時は、海外紛争などを研究する国際政治を先行していたんですけど海外は自分の中で実感がわかなくて、自分の関われる場所はないかなと思ったときに山谷という海外よりも身近で根深いような土地に興味を持って関わるようになりました。地元は練馬なんですけど山谷は地元よりも空き家が多くて家賃も安いけど、若い人が集まって盛り上がっているというわけでもなくてこれからくるまちなのかなって思っていましたね。

― 山谷ってどういった地域なの ―
マニアフェスタの時も山谷って何ですかって声をかけてくれる女の子が多くて「山ガールみたいなものですか」って言われて驚いたんですけど、山谷は電車でいうと常磐線、日比谷線の南千住駅とか三ノ輪駅のあたりを山谷地域といいます。空気感が変わらないという人がいるんですけど私は浅草寺の裏の隅田川を超えたあたりからどこか空気が違うなぁと感じました。
日本三大ドヤ街の一つともいわれていて、山谷のほかに大阪の西成と横浜の寿町が例には挙げられるんですけど、ドヤ街という日本の高度経済成長期の建築労働者が全国から集まってきて日払いで仕事をしたという地域で、ドヤ呼ばれるという宿泊施設が多くあります。

― 治安はが悪いという印象があるけど ―
治安が悪いというのは少し調べてから知りました。よく語られる作品でいうと「山谷 ~やられたらやりかえせ~」があって、いわゆる高度経済成長後に仕事が無くなってしまった人とか劣悪な労働環境とかに不満がたまっていた労働者たちが資本家とぶつかって暴動を起こした時期を題材にした作品なんですけど、その時の印象がすごく残っていて治安が悪いといわれるのだと思います。実際今山谷で生活をしていても自由なおじさんとかはいるんですけど、特別治安の悪さみたいなものはそこまで分からないですね。そういった作品から得たイメージと生活をしてからのギャップというのは感じましたね。イメージだけがこれだけ先行している地域は珍しいかなって思います。

― 自由なおじさんたち ―
深く関わった人とかは置いておいて、普通に道でお会いするレベルだと、いわゆる山谷のおじさん達が行く飲み屋さん出会った人はいつも素敵なドレスを着ているおじさんなんですけど、意外と優しくて、相手は私のことを覚えていないと思うんですけど目が合うとお上品に手を振ってくれる。あと、道を歩いていると暴言とかをはいているおじさんもいたんですけど、こちらが会釈をすると「やさしいね、こんにちは」って。そういうのを見ると、人とお話をしたかっただけなのかなって、自分の寂しさであったりとかを上手く一般的な感じで表現をしないだけで本当は優しい人なんだろうなって思う人がいらっしゃいます。

― 観光化することに対して生活者は何を思う ―
海外の方が増えていて、もちろん観光でというかたもいらっしゃるし、そのほかにも日本に行きたいけど宿が高いからという理由で山谷の宿泊施設を利用する人もいます。なかには山谷の役割が国際化したという方もいてその辺は興味深いなと思います。
どの人が山谷の人かというのもあるんですけど、私がイメージする山谷のおじさんたちはほとんど気にしていない。やはり自分たちも地方から東京にきているので外から来た人にあまり厳しい目を向けていないのかなって私の感覚では思います。海外の観光客の人に話しかけたりとかしていますし。

― さんやカフェ ―
さんやカフェさんというお店があるんですけど外国の方向けのホテルをしながら地域の路上生活をしている人と一緒に町内の清掃活動をしているんですけど、そこでは海外の方と一緒に路上生活をしている人とかがご飯を食べたりしていますね。いろいろ苦労はあると思うんですけどそういう取り組みも始まっています。
清掃活動については、山谷の人に限らないと思うんですけど「コーヒーおごりますよ!」といわれても受け取りにくいという感覚は誰にでもあるんじゃないですか、そこで地域のために清掃活動をして最後、休憩でコーヒー飲みましょうよってなるとみんなが参加をしてくれたり、なにか働き甲斐みたいなことがあってそのあとみんなでお食事をしたりコーヒーを飲んだりしたかったりする場を作ってみたかったと言っていましたね。

貧困・生活保護

― コロナの影響は山谷にもある? ―
出産があって5か月くらい山谷に足を運んでなかったので聞いているだけなんですけど、コロナと貧困という観点で注目されているのかなって思います。まだ情報も錯綜していて価値観が見直されている時期なので、どう考えたらいいのか模索をしている時期なんじゃないかなと思います。

― 新たな貧困 ―
今、山谷の方で生活保護を受けてドヤなど施設の生活に上手くハマれた方々は割と穏やかに生活をできているんですね。はたから見たらボロボロに見えるとかいろいろあるかもしれないんですけど。
そういった人は何十年もそこに住んでいるし別のところに移ることに不安を感じてはいても、そういう人たちにはそういう人たちの安心があると思うんです。でも、今回のコロナで生れてくる貧困って今まで山谷とかに多くいたような元労働で家族と縁が切れてしまった層とは違うと思うんですよね。年齢が若い人やドヤや職員のいる施設で生活をするということにイメージがわかない人、もっと自分のことは自分でできると考えている人がいると思う。本当はもっと議論を重ねるところを超特急で制度を作っているのでいいこともある反面、必ずほころびが出てくるだろうなとは思います。それなので、なるべくたくさんの人で見守り続けるということは大事だと感じています。

― 生活保護や支援を受けることに抵抗のある人々 ―
生活保護とか制度は結構あるんですけど、誰かに相談をするという最初のところで心を折られてしまう経験をしている人々が山谷とかには結構いらっしゃって、「どうせ同じことだよ」って本当に諦められてしまっている人も見たことがある。でも、窓口の人が悪いとも思わないけしそこは難しい問題だと思っています。

吉原遊郭とカストリ書房

吉原は江戸時代から続く遊郭で昭和33年までは国も認めていました。今でも特例でソープ街として認められている地域です。

― 遊郭と風俗の違い ―
基本的には建物そのものを遊郭という場合もあるし、吉原は遊郭だったというようにエリアを示すこともあるんですけど、遊郭はその時の権力者、江戸時代なら江戸幕府が明治以降なら日本政府が認めていたのもで、コントロール下に置いていたものという認識ではあります。違うという人もいるかもしれないけど(笑)。

― カストリ書房 —
主人がやっている本屋さんなんですけど日本唯一の遊郭・赤線専門書店ということで、前は吉原の中にあったんですけど今は昔のお歯黒どぶというお堀で囲まれていたところのチョコっと外側にあります。
来る方もそれぞれ目的が明確な印象があって、自分のルーツに遊郭の経営をしていた人がいたとかおばあさんが遊女だったとかとかで歴史を知りたいという人もいるし、自分の地元にも遊郭があったということで調べている人もいます。あと、江戸時代とかの物語が好きな人は文化としてもっと知りたいという人もいれば戦後戦中の戦争の歴史として知りたいという方も来られますね。
こういった書籍の魅力にはお隣が山谷ということもあるんですけど、その時代のメインストリームでは語られてきていない歴史。実はそっちの方が関わっている人が多いかもしれないけどまだまだ一面的なイメージしかない部分だったりするのでそこを知ることに価値があるのではないかと思っています。私は歴史の中には残っていない普通の人の生活の方が自分に近いような感じがします。例えば戦争の歴史を見たときに戦地に行った兵隊さんよりかは、同じ女性がたどった人生の方に興味があります。

画像2

おススメの書籍

山谷のこととかだと「奥浅草 地図から消えた吉原と山谷」です。山谷の本は色々あるんですけど、その人個人の実体験みたいなものが出すぎていて割と情報が不正確であったり、自分探し的なところで終わってしまっていたりする本が多いんですけど、この本はすごく客観的な目線で山谷・吉原ができた江戸時代から最近有名なカフェバッハさんとか最近できたお店まで網羅されていて、歴史の流れと今の山谷の意味みたいなものを書いているのでまち歩きとか都市計画に興味のある方は幅広く楽しめる本だと思っておススメしています。
もう一冊はカストリ書房で初期の方に発売された「全国遊郭案内」という本で過去の書籍原本を買おうとすると高額になってしまうので復刻販売をしていることもカストリ書房では多いです。遊郭があった時代に調べた本の方が今の情報よりもリアルに近いということがあると思うので、こちらに来ることがあれば過去の情報をみながら歩くのも面白いのかなって思います。
人のエピソードだと戦中戦後を描いたものに読む意味があるなと思っていて「思川~山谷に生きた女たち~」っていう本がおススメです。これは女性の相談員さんが山谷地域に住む高齢の女性を訪問してお話を聞いたものなんです。泪橋のところを通っていた思川をタイトルにした本です。今は明治通りになってしまっているんですけど。

29日OA 編集後記

山谷というとどうしても後ろ暗いイメージを持っていたのですが、話を聞く限りとても楽しそうでした。面白いおじさんたちの話でもありましたがどこか後ろめたいこと過去や昔にできてしまったキズなどから孤独を味わってしまい、一般の生活者とは表現の方法が違うのかもしれないけど、それは誰にでもあることで、こちらが相手のことを分かろうとすれば取り除くことのできることなのではないでしょうか。どうしても貧困というテーマは切りずらい地域ですが、その前に普通の生活者という目線を忘れないようにしたいです。メインストリームといわれる場所でなくとも人は生きているのですから。
最後にいいお店を教えてもらったのでコロナが明けたころにはそこにお酒を飲みに行きたいです。

◆ カストリ書房

◆ みずの家

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?