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シニア副業の観点では定年延長より再雇用が推奨です(創業支援措置)

はじめに

退職金・企業年金コンサルティングチャンネルの講師をしております大森祥弘です。

私は2022年11月現在、副業の一環ということでYouTubeチャンネルを個人で運営しているのですが、最近、副業を経験しているからこそ気付いたシニア活用、シニア雇用の論点があります。

定年間近、または再雇用での継続雇用といった形で働いているシニア社員の方でシニア副業、シニア起業、シニア独立といった会社に依存しない働き方を模索しているYouTubeチャンネル視聴者の方にも参考になるかもしれないと思いましたので本稿で解説させて頂きます。

テーマはズバリ、「定年延長をして給与を下げない人事制度の変更をするとシニア社員はシニア副業、シニア起業しづらくなる」というものです。

人事コンサルティングのモチベーション論と逆転するような話ですが、理屈がわかると“なるほどな“と思いますので是非最後までご覧ください。

YouTubeもあわせてご覧ください

YouTubeではできるだけイメージを持って頂けるようざっくりと解説しております。よりしっかり知りたい方は本稿もあわせてご覧ください。

【シニア副業】給与が高いと副業、創業しづらい理由を解説します(定年延長、シニア活用)

シニア社員の働き方は厚生労働省より国税庁主導で決まりそう

これまでは「評価の高い、能力の高い人に多くの給与を払う」ということがシニア活用での論点でしたが、今後は「評価の高い、能力の高い人に多くの機会を提供する」というのが国税主導のシニア活用での論点といえそうです。

なぜ、こんなことを言うかというとシニア層の会社員と年齢は違えど、私が体験しているからです。どういうことか説明します。

給与所得(本業)と事業所得(副業)の損益通算

定年延長が一例ですが、優秀な社員の方には60歳という現在の定年を超えても活躍できる人材にはより多くの報酬を支払うというのが高齢者雇用を検討する際のオーソドックスな考え方です。

これが先ほど提示した通り、「評価の高い、能力の高い人に多くの機会を提供する」というシニア副業、独立、兼業を念頭においた国税主導の新しい働き方を踏まえた機会提供に変わってくるというのが私の推察です。

もう少し具体的に説明すると、私はやっていませんがこういったことが世で起きています。

副業収入を事業所得として、会社員としての本業の給与所得と損益通算するというものです。

確定申告をしたことのある方なら想像がつくと思いますが個人の所得税を決めるにあたっては1年間に得た収入を給与所得、事業所得、雑所得(年金はこの雑所得です)など様々な所得に区分し、税額を計算します(この税額を計算するという時に分離課税、総合課税など税額計算の考え方は色々とあります本稿では割愛します)。

損益通算できる所得はいくつかありますが、事業所得と給与所得であれば可能です。そのため、副業が赤字で事業所得が発生しないのであれば、給与所得とひっくるめて考えて会社の給与から天引きされている所得税を少なくできるというのが損益通算というものです。

ここまで読むと副業すれば税金減らせるという誤解が出そうですが、国税庁もこの辺りはわかっていて、雑所得で判断するケースが大半のようです(副業収入は事業所得か雑所得かというのが副業あるあるの論点です)。そういったこともあり、国税庁の通達の改正により事業所得か雑所得かの区分が明確に(以前よりはわかりやすく)なったわけですが国税庁主導のシニア雇用、シニア活用に関係するポイントは2つあります。

ポイント1 国税庁は副業、兼業を後押しする(認める)

改正後の解釈では「帳簿が保存されていれば事業所得」となりました。帳簿が保存されているということは事業としてやっているんだろうという決めになります。

*ここまで読んだ方は「帳簿が保存されていれば事業所得」と勘違いしそうですが、是非最後まで読んでください。

このあたりの解釈は国税のパブリックコメントの回答要旨にも記載があり、新しい働き方を国税庁としても考慮したということになります。では、シニア副業は事業所得として確定申告できるのかというとそういうわけでもありません(うまくできています)。

ポイント2 事業性要素の判断 本業収入の10%を副業収入が超えているか

国税庁の資料には*書きになっているので、見落とした方がYouTubeで「帳簿保存されていれば事業所得」といった動画を配信していますがそんなうまい話でもありません。

事業性の判断要素として本業収入の10%を超えるかというのが1つのポイントになります。

*私の説明よりもわかりやすい動画を2つ紹介しますので???な方はあわせてご覧ください。

両学長リベラルアーツ大学 第86回 【国民vs国税庁 勝ったのは?】「通達改正の重要ポイント3選」と「副業で節税する正しい方法」について解説【トレンド】

税理士YouTuberチャンネル ヒロ税理士
【超朗報】副業・雑所得問題がまさかの改善!副業でも帳簿書類をつければ概ね事業所得扱いとなることがほぼ決定!損益通算による税金還付は監視強化か!?...

以上ご紹介したような、副業収入に関して事業所得か雑所得かの論点について、この事業性要素の判断を踏まえるとシニア雇用、シニア副業・兼業の新潮流(新しく考慮すべき切り口)が浮かんでくるのです。

シニア社員の給与を上げるとシニア社員は副業しづらくなる

企業の人事、総務部門のかたならピンときたと思いますが副業の事業性要素を判断するにあたり本業収入の10%を超えれば事業性がある(事業所得と判断できうる)ということになるのです。

つまり、早期退職、定年退職後の再雇用、定年延長といった自社の高齢者雇用を考える上で給与を上げてしまうと(または賞与でも同じ)、副業収入が本業収入の10%以内に収まってしまうので、このあたりは副業を促進する、認めるという企業ポリシーと相反しないようシニア社員、シニア活用を検討するべきだと私には思えるのです。

高齢者雇用のよくある方向性は定年延長ですが、定年延長は継続雇用、再雇用に比べそれほど給与が下がりません。
ですのでよく考えないと副業に関する企業ポリシーと人事ポリシーが相反することもありえますので本稿で解説、問題提起をさせていただきました。

おわりに


本稿の解説や退職金・企業年金コンサルティングチャンネルでの動画解説は私が実際に副業をしている会社員であるから気付いた着眼点であり、解説だと思えます。そういった意味では、YouTubeを開設してから2年位経ちますが、続けてきて良かったと思っています。

本稿を書いている2022年11月時点では退職所得控除の見直しといった意見が税制調査会で出されたり、今回の事業所得の捉え方が明確化されたこともあり、国税庁もシニア活用、結果的に定年間近になった個人の方の所得税に関して枠組みを作っていきたいという姿勢を感じています。
 
そういった観点ではこれからは優秀な社員がいる会社が生き残るのではなく、優秀な方を活用するのが上手な会社が生き残ると言えるのではないでしょうか。

私もそうかもしれませんが、自分の考え、思想が出来上がっているビジネスパーソンというのは年齢や国籍に限らず機会や裁量、自由を求めていくように思えます。

最後までご覧いただきありがとうございました。
(YouTubeのチャンネル登録も是非ご検討ください!)