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【徹底解説、2022年版】転職・退職時の確定給付企業年金、確定拠出年金の移換手続き(移管)

退職金・企業年金コンサルティングチャンネルの講師をしております大森祥弘です。

【2022年版】企業年金の損しない受け取り方の解説も今回で3回目になります。

はじめてみたら壮大なテーマで、有料級の力のいれようですが視聴者の皆さんへの感謝企画ということで、続けていきます!

第3回目の本稿ではYouTubeの視聴者の方からよくご質問頂く、企業年金の転職時の手続き、どうしたら良いのか?を解説しております。

企業年金の転職時の手続き、移換といった動画は確定給付企業年金、確定拠出年金と分けて別に配信しているのですが、YouTubeを始めた初期の頃に配信したこともあり最新の内容が含まれていません。

本稿では、2022年までの法改正、2023年以降の未来予想を織り込みながら解説したいと思います。

【講師より一言】
「企業年金の損しない受け取り方」の受け取り方というより作り方というほうが正しいかもしれませんが、転職が一般化したこの時代に1度は経験する企業年金の移管。手加減せずに実務経験があるから語れる話をたくさん盛り込みました。ぜひ動画もご覧ください。

参考になったという方はぜひYouTubeの高評価(いいね)やこのnoteのスキ(ハート)を押してください。同じように困っている方がこの情報を見つけやすくなりますので、ご協力のほどよろしくお願いします。



YouTubeはこちらからご覧頂けます



転職時の企業年金の移換、手続き解説【過去動画まとめ】


企業年金の転職、退職時に関する過去動画は何本かあるのでまとめページを作成しました。こちらも良かったらご覧ください。

企業年金の移換は一手間かかるけどやるしかない

さっそくですが、転職、退職時に企業年金の関連書類を急に見ることになってスラスラ読めて、パパッと提出できた方っていらっしゃいますか?

退職時には転職先に企業年金を自分で持ち込むという企業年金の移管の仕組みの難しさなんて一般の方はまったく知ることもなく、転職、退職時になってその時に知る、気づくというのが大半です。

また、総務部や人事部の方も企業年金に詳しく、退職する(自社を抜ける)社員に懇切丁寧に教えるといったシーンは見たことがありません。

企業が契約している金融機関が作成している汎用のチラシを渡されて、これ見てあとはやってくださいというのがよくある話です。

そのため、この記事やYouTubeを探し出して頂いた皆さんは自分でやらなければいけない、面倒そう、わからないしと様々お考えだと思うのですが、企業年金というと確定拠出年金であれば途中引き出しできず、自分が60歳を過ぎてようやくもらえるお金です。

何もしないという手(あえて放置する手)もあるのですが、この企業年金の移管というのは転職先へ自分が対応するという側面もあるので結局やることになるというのがオチです。

それに、自分が高齢期の頃に「あの頃、ちゃんと手続きをしておいて良かった」と思うでしょうから、ぜひ、ついてきてください(私もできるだけわかりやすく解説します)。

転職時の企業年金の移換、手続きの基礎知識


さっそく例え話なんですが、私は企業年金の移換のことをMNP(ナンバーポータビリティ)と例えて動画で解説しています。

スマホって契約先の通信会社を変える時に、電話番号を引き継げますよね?

企業年金の移換のイメージはあのスマホのMNPに近いです。

ちょっと難しい話をしますと、退職を原因として、今の勤務先の企業年金から抜ける必要があります。

なぜ抜けるのか?退職(勤務先と縁が切れる)するからです。

そして、抜けたあとは60歳より手前で、特に確定拠出年金であればiDeCoや勤務先の企業型確定拠出年金などに移さなければいけません。

なぜ移すのか?確定給付企業年金を除き、60歳手前で一時金として受け取ることができないからです。

さて、もう少し深いところをお話ししていきます。

転職する場合は転職先、退職した後にフリーランスまたは寿退社で専業主婦(扶養に入る)、無職と今の勤務先(会社)を辞めたあとは様々ですが、抜けるほう(転職前の勤務先)の手続きは簡単です。

退職という事実で、強制的に勤務先の企業年金を抜けます。抜けるにあたり、ご自身での手続きは必要ありません(後述の確定給付企業年金の一時金を受け取る場合を除きます)。

一方、受け取る先(転職先、その他、転職前の企業年金の自分の残高を移す先)には自分で意思表示をしなければなりません(転職元を経由する必要が一部ありますが)。

これが企業年金の移管の手間なところ、皆さんがこの記事、YouTubeにたどり着いたゆえんです。

それではより具体的に話を進めていきましょう。

【2022年12月最新】企業年金の移換の選択肢一覧


企業年金の移換(移す先)の選択肢は次のようになっています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192886.htmlから引用(厚生労働省)




まず、ここで押さえて欲しいのは「色々移せるのね」で十分です。苦手意識を持たないでください。


次に、ここから書いている以降の内容は転職元で実施していたご自身の企業年金の種類別に必要なほうをご覧ください。

注 確定給付企業年金と確定拠出年金の両方の書類が来て…という場合はちょっと手間ですがこれ以降両方ご覧ください。

【場合分け解説】企業型確定拠出年金に加入していた方


転職前のご自身の企業型確定拠出年金の資産を移せる先は法的には様々ですが、実務的には次の3つです。

選択肢①転職先の企業型確定拠出年金に移換

1番よくある手続き先ですが、転職先が企業型確定拠出年金を導入している場合、その確定拠出年金に資産を移し、転職先の確定拠出年金商品ラインナップから運用商品を選ぶ(移換したお金を元に再度購入する)というものです。

選択肢②iDeCoに移換


2022年10月から企業型確定拠出年金に加入していても自分でiDeCoの口座を開設することができるようになりました。
(これまでは勤務先の企業型確定拠出年金のルールを変える必要があり、できない企業もありましたがこの縛りが解除されました)。

ですので、このiDeCoに移すというのは今後増えてくると思っています。

後述の通り、メリット、デメリットありますか転職元でのまとまった資産をiDeCoに移して、本腰を入れてiDeCoをやってみるという方もいそうですね。

例えば、iDeCoに移したい場合は転職前の企業の資産を受け入れる前が100万円、企業型確定拠出年金の資産が400万円だった場合、400万円を移して500万円の1つの口座ができるというものです。

企業型確定拠出年金かiDeCoかというメリット整理は次の通りです。

企業型確定拠出年金のメリット
・転職先の企業が毎月の口座管理手数料を負担する(月300円程度)
・iDeCoに比べて良い商品があれば加入できる。

一方、企業型確定拠出年金のデメリットを考えてみましょう。
*別に私が企業型確定拠出年金アンチというわけでは全くないのですが、語るとキリがないので、過去動画をご紹介します。
(企業、個人それぞれのデメリットを解説しています。個人の方は個人のところだけ見て頂いても有用です)。

【過去動画】企業年金のデメリットを解説します

今から企業型確定拠出年金(企業型DC)はもう導入しないほうが良い理由をしっかり解説します【企業型確定拠出年金のデメリット】


iDeCoは自分が手数料を払う必要がある点がデメリットとよく、言われますがある程度の手数料を払うのは口座開設時だけの話で、毎月の定額の手数料が無料といった証券会社もありますので、そこまで神経質になる必要はないです。

どちらかというと、今回、経験されているようにこの企業年金の移換をまた行う必要がある点が企業型確定拠出年金のデメリットです。

今、皆さんが苦労している企業年金の転職、退職時の手続きはこの企業型確定拠出年金の仕組み上、皆さんに面倒なしわ寄せがされてしまっているのです。

加えて、長期分散投資の確定拠出年金を退職というタイミングで強制的に売却して、現金化してから転職先の商品をまた買い付けないといけないということです。

なんだか企業型確定拠出年金の文句っぽくなってしまいましたが、転職先の企業型確定拠出年金かiDeCoのどちらに移管するかという話でした。

iDeCoのメリット、デメリットは上記の企業型確定拠出年金の裏返しです。

本稿のテーマである企業年金の移換と話がズレるので、またリクエストがあれば解説したいと思います(動画解説ではiDeCoのメリット、デメリットに少し触れています)。

【注意点】一回移換して、移換先を変えるというのはできない


企業型確定拠出年金に移換して、やっぱりiDeCoに数年後に移換したいというのはできません。

私は移換は退職に限らず、したい時にできるようになれば良いと思っているのですが、できません。

ルールがないのが理由です。

確定給付企業年金への移換は実務的にとっても少ない


転職先が確定給付企業年金で、確定拠出年金を導入していない。だからiDeCoに移したという視聴者の方も多いようです。

こういう時には消去法でiDeCoになったりしますがなぜ確定給付企業年金に移管できないのでしょうか?

確定給付企業年金に移せないかは動画でイメージを持って頂けるように試みていますので、気になる方は動画もあわせてご覧ください。

【2022年改正反映】企業年金連合会に移換

さて、2022年改正ということで、これまで配信した動画には盛り込めていなかったのですが確定拠出年金の資産を企業年金連合会に移管することができるようになりました(2022年5月から)。

これはほとんどの方が知らないと思いますが、企業年金連合会という組織があります。

何やってるの?というところですが、大きく3つ押さえておけば良いです。

1つ目に企業年金連合会に資産を持ち込んだ方に企業年金連合会からお金を払う、2つ目に企業年金のポータビリティ移管の中継地、3つ目に厚生年金の一部を連合会通算年金として払うです。

役所っぽいところと押さえて結構、それでこの企業年金連合会は移管された資産を将来年金として払いますからただ預かるだけではなく、企業年金連合会が運用して、支払います。

この企業年金連合会への移管という選択肢ですが、マイナーな選択肢となっています。

なぜかというと、iDeCoや企業型確定拠出年金を商品提供している銀行、保険会社になんの得もないからです。

また、企業年金連合会への移管というのは勤務先の総務、人事の方も慣れていませんのであまり話さない傾向にあります。

本稿ではあまり細かくは話しませんが、損しないかというと終身年金ですが手数料などありますので、まとまった額を20代、30代で移管するというのは手ですが、確定拠出年金と比べると資産運用リスクがない分、バックが少ないです。


大雑把に勧めると、勤務先の都合で勝手に確定拠出年金に加入してたけどiDeCoに移管して毎月、手数料で自分で払うのも嫌だし、「あんまり企業年金興味ないわ」という方の移管先として向いていると思っています。

【場合分け解説】確定給付企業年金に加入していた方


さて、ここまで確定拠出年金の移管について解説してみました。

ここからは確定給付企業年金の移管について解説します。

確定給付企業年金というのは確定拠出年金と違って、自分で加入できない(iDeCoを活用して)ですし、確定給付企業年金の実務経験のある方というのは業界的にも少なく、あまり情報が世に出ていないのが実情ですが、経験も含めて惜しみなく解説してまいります。

確定給付企業年金の移管の選択肢

教科書的にひとまず、確定給付企業年金が移せる移管先を記載します(再掲)。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192886.htmlから引用(厚生労働省)


確定拠出年金と同じように色々とありますが、実務的には次の2つです。

【選択肢1】移管せず一時金で受け取る

確定給付企業年金は企業型確定拠出年金と違い、60歳より前でも一時金で受け取ることができます。

ただし、いつでも希望すれば受け取れるわけではなく、基本的には退職する時に限ります。
(育児休職時などに受け取れる場合もありますが、お勤め先の確定給付企業年金の仕組みによりますので今回は割愛します)。

経験上、1番多い受け取り方です。なぜなら移管という面倒な手続きはありませんし、退職時に今、もらえるからです。

また、テクニック的な話になりますが受け取り方の中では1番お勧めです(詳しくは動画で解説しています)。

【選択肢2】iDeCoに移管

確定給付企業年金も退職時に、企業型確定拠出年金と同じようにiDeCoに移すことができます。

以前はできませんでしたが、今はできるようになっている選択肢です。

【選択肢3】 転職先の企業型確定拠出年金に移管

これも昔はできなかったのですが、今はできるようになった選択肢です。

転職先が企業型確定拠出年金を導入していれば、企業型の専用口座が作られると思ってください。

そこに確定給付企業年金から受け取れる一時金を移すという手法です。

(以前、YouTubeの視聴者の方から頂いた質問で自分で入金するのか?といった質問がありました。企業年金間のお金の移し替え、移管は金融機関同士で行われます。前職の勤務先から転職先に資金を渡されたり、自分の口座に一時入金されて自分で振り込むといったことではないので安心してください)。

【選択肢4】転職先の確定給付企業年金に移管

視聴者の方ができると思っていて、実はハードルが高い移管があります。確定給付企業年金から確定給付企業年金への移管です。

みなさん、私の解説を思い出してください。企業年金の移管はスマホのMNPに近いです。

MNPの流れは解約する通信会社にMNPする旨を連絡、専用の番号を発行してもらい、新たに契約する通信会社に申し込みをして、このMNP専用番号を伝えるというものでした。

つまり、移す元が移せるようにして、移す先が受け入れることができて初めてMNPは可能なわけです。

これと企業年金の移管は考え方はほぼ同じです。

それで、なぜ私が確定給付企業年金の移管の説明でこの話をしているかというと、確定給付企業年金は移管先の確定給付企業年金で受け入れ準備ができないと移管できない。

正確には移管はできても受管ができないからです。

確定拠出年金から確定給付企業年金からだけでなく、確定給付企業年金から確定給付企業年金も同じことが言えるのですが、個人に貼り付いた財布の移管先が全社員全体のお財布1つで管理している確定給付企業年金ですと、他の社員に影響が出てくるわけです。

極端な例えをすると、転職先の企業年金が確定給付企業年金でめちゃくちゃ手厚いとします。

一方、これまでの転職元での確定拠出年金資産は10万円だけでした。老後資産の原資なのにです。

確定給付企業年金は綿密に制度設計がされています。予定外のお金の支出、入金を嫌うわけです。

受け入れるテクニック的なものはありますが、あなたが確定給付企業年金に移したいとしても転職先の企業が万が一、その気になって受け入れる準備をしようとします。でも、年金規約というルールブックを改訂しなければならず、役所に手続きが必要です。3ヶ月前に。ですので、実務的には事前に準備していないと受け入れられません。こういった事情です(そのため、確定給付企業年金の移管手続きができる、持ち込めるのはグループ会社間の転籍事情などに応じてといったケースがほとんどです)。

【2022年改正反映】確定給付企業年金からiDeCoに移せる機会が増えた

過去動画で取り上げられていなかった内容で、近年の改正でできるようになった(個人の方からすると確定給付企業年金の資産を移管することになった)ケースは2つあります。

1つはiDeCoは確定給付企業年金に移管できるようになりました。

これ、個人の方でどんなに情報収集している方でも私のようなマニアックな世界に両足突っ込んでいる人か、保険会社や信託銀行の本店にいる業界の人でもない限り、知らないと思います。

だから、iDeCoの資産を受け入れられないというのが今の世の中の標準だと理解してください。

加えて2点目は勤務先の確定給付企業年金を解除、やめる場合、以前は解約金を受け取ることしかできなかったのですが法改正でiDeCoに移管することができるようになりました。

解約金を受け取ればいいのでは?思った方も多いと思いますが、そんなに上手い話はなく、一時所得として課税されます。

退職に起因したのではなく、勤務先が確定給付企業年金を解約したという扱いになるので退職所得としてみなされないわけです。

何に影響するのか?というと、一時所得は総合課税なので1年だけ収入が爆上がりしたとみなされます。結果、例えば保育園の保育料が上がったり、児童手当が受け取れなくなったりします。所得制限により、変わるものはみな変わると押さえましょう。

おわりに

本稿は徹底解説、2022年版の転職・退職時の企業年金の移換(移管)手続きということで確定拠出年金だけでなく、確定給付企業年金も解説してみました。

本稿とあわせて動画をご覧頂くとより理解が深まると思いますので、是非ご覧ください(動画はチャプターを分けていますので、概要欄を参照頂き自分に関係するところだけ見ていただくと良いと思います)。

また、自分の場合はどうなるの?ということがいまいちわからないようでしたら動画のコメント欄で質問頂ければ回答差し上げますので、活用ください。

最後までご覧頂きありがとうございました!

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