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今から企業型確定拠出年金(企業型DC)はもう導入しないほうが良い理由を解説します

こんばんは、大森祥弘です。

今回の動画ですが、先日、私の運営する退職金・企業年金Webフォローチャンネルで配信している【誰も言わない】企業型確定拠出年金で実は損するケースを解説します(企業型DC・選択制DC)という動画をご覧いただいたYou Tubeの視聴者の方から「企業(法人)が企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入しないほうがいい提案をしてほしい」というリクエストを頂きました。

【誰も言わない】企業型確定拠出年金で実は損するケースを解説します(企業型DC・選択制DC)はこのWebページの最後のほうで紹介していますのでまだ見ていない方はあわせてご覧ください。

それでこの動画リクエストについては、普段とちょっと違う視点といいますか企業型確定拠出年金を導入したほうがよい提案ではなく、企業型DCを導入しないほうがいい提案という内容ですので「どういう感じで喋ろうかな」とちょっと考えましたが私しか話せない話もあると思いましたのでYou Tubeで解説してみることにしました。是非ご覧ください!

YouTube動画は以下からご覧頂けます!

━━━もくじ━━━━
00:00 はじめに
00:32 この動画のまとめ
01:07 社員(個人)のメリットといわれるもの
03:17 企業のメリットといわれるもの
04:36 iDeCoの法改正で企業型DCは魅力がなくなる
08:34 企業型DCの問題点を話す前に・・・
10:03 企業からみたデメリット
16:26 個人からみたデメリット
21:38 ”企業のメリット”を論破します
23:42 ”個人のメリット”を論破します
25:33 まとめ(講師所感)

今回の退職金コンサルティング・企業年金コンサルティングの動画について

現状、企業型確定拠出年金は新しく取り入れるメリットよりデメリットのほうが大きいです。企業から見た視点、個人(社員の方)からの視点それぞれ解説していきます。

個人(社員の方)のメリット

個人(社員の方)のメリットと言われるものは次のとおりです。

退職金が勤務先になければ、退職金の代わりになる。

いつの間にか2022年、団塊の世代は引退し、バブル組も60歳定年退職に向かっています。バブル崩壊後に生まれ、賃金が伸びない時代に生まれ、会社員として勤務している我々の勤務する企業のなかには退職金制度がない会社というのもあります。これは、珍しいものではなく退職金制度がないか企業型確定拠出年金だけという会社も増えています。

そのため、企業型確定拠出年金は老後の資産形成という観点では退職した際に一時金として受給することはできない(確定拠出年金の口座から60歳までは引き出せない)ものの”退職金”が長年の勤続へのねぎらい、後払い賃金、老後の生活資金の一部という性質を踏まえると退職金の代わりになるとも言えます。

企業型確定拠出年金は企業が掛金を拠出するが、この会社の掛金に上乗せして自分で掛金を足すこともできる

この”会社の掛金に上乗せして自分で掛金を足す”というのはマッチング拠出と呼ばれるものです。

このマッチング拠出という仕組みについてよくわからない方は以前、別の動画で解説しておりますのであわせてご覧ください。

【企業型確定拠出年金】選択制DCとマッチング拠出の違いを少々解説します(コメント回答・解説)への動画リンクはこのWebページの最後のほうにありますのでスクロールしてください。

“税制優遇“、税金のメリットがあると言われる

iDeCoも企業型確定拠出年金も”税制優遇”と言われます。

運用益が非課税とか、受取時に一時金だと退職所得控除が適用されて税金かからない(かかりにくい)とかいったものです。このメリットが一番、聞いたことがあるかもしれません。iDeCoに関する金融機関のWebページを見ると間違いなくアピールしています。

企業型確定拠出年金のうち”選択制”、”選択制DC”と呼ばれるものは社会保険料を減らす(給与天引きされる健康保険料や厚生年金保険料を減らす)ことができる。

”選択制”という用語は法律上、どこにもなく、企業型確定拠出年金を法人向けのサービスとして提供している金融機関等が考えたもので、行政(厚生労働省)が認めてしまって世の中でわりと一般的になってしまっているものです。

”選択制”、選択制DCって何?と思われた方がほとんどだと思いますが、一言二言で説明できないので、これまた別の動画で解説しております。このWebページの最後のほうにあります動画リンクからご覧ください。

*よくマッチング拠出と選択制DCの違いがわからないという方が多く、比較解説する動画を配信していますので勤務先の確定拠出年金に興味のある方はぜひ見てみてください。

企業のメリットといわれるもの

掛金は全額経費扱い(損金算入)

給与と同じく企業型確定拠出年金の掛金も損金とみなされますので、法人税の計算対象から外れる(益金から引く)といえます。個人の方からすると馴染みがないと思いますが退職所得控除のように法人の税金である法人税を計算するうえで優遇してくれる(税金がかからない)と思っていただいて構いません。

確定給付企業年金に比べて追加で費用がかかるといったリスクがない

確定給付企業年金は”確定”という名前の通り将来、社員が退職する際に企業年金としていくら払うのか?がしっかり決まっています。

そのため、確定給付企業年金というのはちょっとクセがあり、ポイントとして”将来、社員が退職するときに決まった金額を企業年金(または一時金)として払う”というものです。

これは長いマラソンのようなもので、個人の方に例えば住宅ローンの返済に似ています。60歳までか、65歳までか70歳までかは人それぞれでしょうが決まった年齢までに払いきらなければなりません。この過程で年収が下がる、勤務先の経営が傾いて転職する、病気になって働けなくなるなどいろいろな可能性があります。

確定給付企業年金は決めたゴールまでに社員の退職のためにお金を準備する必要があります。想定外のことがあれば、追加で掛金を拠出したりしなければいけません。これが企業にとってはリスクなのです。

一方、企業型確定拠出年金であれば”拠出”つまり、毎月、掛金として社員の口座に振り込む額が決まっていますので数十年後にまとまった額を退職する社員に支払うという発想がありません。

そのため、企業型確定拠出年金は確定給付企業年金と比べると企業にとっては不確実な、予定されていない追加で費用を払うコストがかかるといったリスクがありません。

優秀な人材確保に繋がる、といわれる(福利厚生)

企業型確定拠出年金の導入の際に企業にご提案する(営業)するのはほぼ金融機関の営業部門の方です。この営業提案活動の際には必ず、企業型確定拠出年金を導入すると「社員のモチベーションが上がって~」とか、「福利厚生で~」とかいかにも導入すると人事施策として効果があるようなことが書いてあります(企業型確定拠出年金 メリット 法人 といった感じでググって頂くとどこかの金融機関のWebページがいくつか出てくると思いますので見てみてください)。

ひとつだけ注意しておくと、”いわれる”です。ぜひ、動画やこのWebページを最後までご覧頂きたいですが”いわれる”というところに要注意です。

個人型確定拠出年金(iDeCo)で企業型確定拠出年金の役割を果たせ、法改正で企業型DCの魅力がなくなる

現在は企業型確定拠出年金、iDeCoが別で考えられています。iDeCoは法改正により今は誰でも加入できますが昔は自営業の方中心でした(自営業の方が厚生年金に加入できないので、国民年金基金や個人型確定拠出年金といった仕組みがあるのでこれで老後の資産形成してくださいというものでした)。

企業型確定拠出年金は名前のとおり、”企業型”です。ですので企業に勤務している会社員の方が対象の確定拠出年金制度それで企業型確定拠出年金といいます。

つまり、企業型DCに加入している会社員の方がiDeCoも加入するというあわせ技が法律上想定されていなかったのです。

そのため、現在では企業型確定拠出年金を導入している企業がiDeCoの同時加入を認めた場合(企業の確定拠出年金に関するルールブック(年金規約)に可能である旨を書いた場合)に同時加入ができたわけなのですが、法改正により2022年の10月から問答無用で企業型確定拠出年金が導入され、加入している会社員の方でもiDeCoに加入できるようになります。

結果、企業型確定拠出年金を導入することによる企業のメリットはiDeCoで果たせてしまうのです。

だから、企業型確定拠出年金という仕組みはこのあと私が解説する内容をよくわかって、それでも企業として社員のために企業型確定拠出年金という仕組みをあえて導入したい(iDeCoを超えた仕組みであることが必須)という企業でなければ、デメリットしかないと考えているのです。

iDeCoの同時加入制限が緩和されるのはパソコンからスマホへの変化に似ている

動画の中でも触れているのですが、企業型確定拠出年金を導入している企業の社員もiDeCoに特に制限なく加入できるようになるのはパソコンからスマホに普段、使っているデバイスが変わっていったのと似ていると私は考えています。

どういうことかというと、パソコンを使っていた世代はスマホが登場した当初、パソコンを日々使いながら外出中にスマホを使うという使い方、ちょっとした調べものをするためにスマホを使うという使い方をスマホの登場当初していたと思います。

これが今はどうでしょうか?

パソコンを家で平日、仕事が終わったあとに開いて使っていますか?

ほとんどの方がスマホやタブレットでかつてパソコンがないとできなかった作業をしていないでしょうか?

これを確定拠出年金に当てはめれば、企業型確定拠出年金といういわばパソコン(一家に一台、一社に一企業型DC)という制度設計はiDeCoの同時加入が解禁される以前の発想であり、”古い”というのが私の考えです。

この発想の転換はこの退職金や企業年金のコンサルティングの業界で活躍されている方、人事コンサルタントでも難しいです。発想の転換ができている人ができる提案と、一社一企業型という発想で物事を考える人との提案の違いは明確に変わってきます。

企業型確定拠出年金は後出しジャンケンが多すぎ

企業型確定拠出年金をはじめ、確定給付企業年金もそうですが企業年金は法人向けの金融商品です。これが法改正により、購入した金融商品の縛りがきつくなっています。

あなたが企業の経営者だとして、企業型確定拠出年金を導入するとして購入した(取り入れたもの)が法改正の縛りで使いづらくなります。

これもたとえ話で車に例えれば、高速道路でも時速60km以上で走ったらダメ!と言われているようなものです。もともとスピードが出るセダン車買っていたのに、こんな法改正があったら「だったら軽自動車で良かった・・」と思いませんか?

これが企業年金界隈だとあたかも普通に法改正で縛りが作られています。結果、使い勝手が悪くなっている。これが今の企業型確定拠出年金です。

例え話ではなく、企業型確定拠出年金の具体的な話をすれば代表的なものに社員への継続教育の努力義務化、運営管理機関(運営管理業務)の評価があります。

前者の継続教育の努力義務化は本来、企業が社員のために実施するのであればどういう研修をしようか?(社員のスキルセットの醸成という背景も含めて)を考えるわけですが、「努力義務化」という言葉で、とりあえずやらなければいけないと誤認し、とりあえず金融機関に相談して形だけの研修をやればOKという風潮を作り出してしまっています。

研修というのは話はまた別の機会にしますが、企業の経営者が自社の社員に備えてほしいスキル(またはスキルセット)の醸成のために行うものと私は捉えており、本気でやらなければ受講者は「よくわからん」という印象を持ってしまい、逆効果です。

また、後者の運営管理機関(運営管理業務の評価)も法改正により提唱されている内容(要するに一次ユーザーである企業が契約先の金融機関を評価する)は良いのですが、事業会社でサービス提供元としての金融機関を評価できる企業はあるでしょうか?

企業型確定拠出年金を導入している金融機関とは融資や役員招聘などの財務、人的な結びつきがあるケースが多く、この場合に金融機関の評価を本気ですることによる企業としてのメリットがありません。

この手の話はいくらでも書けますが、要するに企業型確定拠出年金というのは”後出しジャンケン”が多く、乗りづらい乗り物になってしまったのです。

それでは話が企業目線になってきましたので、次に企業から見たデメリットについて解説していきます。

企業からみた企業型DCのデメリット

事業主としての義務の履行必須、努力義務の履行、法令遵守が求められる

これまで行われた確定拠出年金に関する法改正で企業型確定拠出年金を導入している企業の手間、負担が減るというものは私の記憶にありません。

細かい改善などは図られているかもしれませんが、改善より責任の重みがどんどん増している印象です。

確定拠出年金は個人に責任があるのでは?と思った方もおられると思いますが企業型確定拠出年金は基本的には一社一企業型DCというハコを導入するので、ハコをきちんと管理、運営してねという実施責任は企業に求められます。責任の増加のほうが多いのです。

事務負担が増え、知識、要因も必要

企業型確定拠出年金は契約した金融機関が全て事務をやってくれるわけではありません。新たに加入した社員の加入手続き、退職する社員への企業年金の手続き、社員への退職後の企業年金をどうしたらよいのかといった選択肢の説明、社員向けの投資教育、取引先金融機関の評価、行政への書類の定期的な提出などやることはいっぱいあります。さらに入社してくる社員の企業年金の扱い、退職する社員の企業年金の次の企業への受け渡し方の選択肢の説明などを行う必要があります(法的に義務です)。

そのため、自社が導入した企業型確定拠出年金だけでなく企業年金の知識を頭に入れなければなりません。

仕事が増え、知識が必要、責任は増える。これは企業にとってデメリット以外のなにものでもありません。

他社に切り替えづらい

例えば、企業型確定拠出年金を契約している金融商品の法人の担当者がとっても微妙だったり、なにか事業の融資などの過程でメインバンクや取引金融機関と関係性が悪化したとします。それで、企業型確定拠出年金を導入している金融機関を切り替えたい(例えば、赤いメガバンクから青いメガバンクにしたい)といった場合、社員の運用している運用商品を一旦、解約して現金化して、別の金融機関と契約してから別の金融機関が提供している運用商品を社員に新たに購入してもらわなければいけません。

金融機関を切り替えたいというのは企業の都合なのに、影響が個人の資産運用に及ぶわけです。そしてこの切り替えに要する期間というのがスマホの切り替えのように同じ日にできればよいのですが金融機関の解約、金融機関との契約、社員の商品購入といった期間を考えると少なくとも3ヶ月は現金で寝かしっぱなしとなります。

オーナー企業で社長の一存で物事が決まるという会社であれば良くも悪くもどうにもなりませんし、企業型確定拠出年金の取引金融機関を切り替えることはできますが企業規模が大きくなればなるほど、労働組合や社員相手に説明をして理解を得なければ進みません。この理解を得るうえでの理屈づくりが難しいです。社員にとっては取引金融機関と企業との付き合いがどうたらというのは関係ありませんから、理由が必要です。

実際、私は企業型確定拠出年金の金融機関(企業としての契約先)を切り替えたという事例は取り扱ったことがありません。

iDeCoに加入している社員の老後の資産形成の権利を制限する

企業型確定拠出年金を導入していない企業であれば、iDeCoには2万3千円まで加入することができます。しかし、企業型確定拠出年金を導入している場合は企業型確定拠出年金とiDeCoをあわせて最大で5万5千円、ただし、iDeCoの最大で拠出できる掛金額は2万円などさらに縛りがあります。

こういった具合なので、企業型確定拠出年金を導入するとiDeCoで拠出できる掛金額が3千円減りますし、2022年10月までは企業がルールブック上、iDeCoも加入できる手当てをしていないとiDeCoに加入できません(入社前にiDeCoをやっていても掛金拠出し続けることができません)。運用指図者としてiDeCoの運用を継続するか、企業型DCに資産を移換することになります。

やや難しくなってきたので簡単に一言でいえば、企業型確定拠出年金を導入すると個人の老後の資産形成の権利(iDeCoの権利)を制限するとも言えるのです。

実は、働き方の多様化に適さない

企業型確定拠出年金は正社員しか入れません(たまに契約社員も加入しているという例外はありますが、あまり見ません)。

なぜかというと企業型確定拠出年金というのは退職金の一部として将来、年金として払えるよう掛金を拠出してあげているというパターンが圧倒的に多いからです。それで契約社員やアルバイト、パートといった雇用契約の場合は退職金が出ないケースがほとんどですから企業型確定拠出年金に加入できない(加入対象にすると退職金が出ることになるから)というわけです。

でもこれって働き方の多様化という観点では変だと思いませんか?

私の父親の時代は副業なんて言葉はなく、会社員、自営業、専業主婦このどれかだったわけです。女性の社会進出といった私の世代では???なことが男女雇用機会均等法といった法律で整備されようとしていた時代だったわけです。

それが今では、副業という言葉を当たり前に聞くようになりましたしプログラマーやSEといった専門職種の方だとフリーランスとして活躍されている方もいます。

こういった時代の流れと合わせるのであれば、正社員しか対象にならない企業型確定拠出年金という福利厚生を新たに導入する(正社員しか入れないハコを作る)というのはナンセンスでは?と私は思うのです。

そうすると、企業型確定拠出年金に契約社員やアルバイトも加入できるようにしたら良いのでは?という声も聴こえてきそうですが、この発想も古いです。

なぜかというと、ただでさえ転職が三大都市圏では一般化してきて正社員の流動化が進んでいます。契約社員やアルバイトは正社員より入社、退社の数が圧倒的に多いわけです。そのため、契約社員やアルバイトを企業型確定拠出年金に加入させるということはできますが圧倒的に事務が面倒になります。

私は金融機関のようなところで企業年金の事務手続きや年金受給者の方の管理などの所管部署にも在籍しましたが、当時の経験を思い返せば「シンプルイズベスト」がベストだという結論に至っています。

だからこんな企業ごとに企業型確定拠出年金というハコを作るよりはiDeCoに加入させれば(加入したら掛金を補助してあげれば)よいのでは?と思うのです。

個人からみた企業型DCのデメリット

退職したあとに確定拠出年金を続けなければならない

退職したことで企業型確定拠出年金を抜けると、退職金のように振り込んでもらえるかというと60歳まで引き出せません。

さらに次の企業年金制度に自分の企業型確定拠出年金の資産を移さないと、将来年金としてもらう際に反映してもらえない可能性があったりということで企業型確定拠出年金を導入している企業を退職した後はiDeCoに移して確定拠出年金を続けなければいけません。

法改正により、2022年4月から企業年金連合会に移換できるようになりますが、iDeCoへ資産移換するというのが既定路線として続くと思います。

これは企業からすれば退職する社員に説明すれば、説明義務は果たしますが社員の視点で考えれば、自分で手数料を払って続けなければいけない金融商品に加入し続けることを企業型DCの仕組み上、半ば強制的に促されるというのは個人にとって不利益と私には思えるのです。

このiDeCoの手数料はどんなに安くても毎月66円~589円かかります(金融機関により違います)。

たいした額ではないと思った方も多いと思いますが、私が正社員で22歳で新卒入社、2年働いて寿退社。妻が優秀で私は育児に専念ということで”専業主婦”になり、60歳まで家事に徹底したとします。

400円×12ヶ月×36年(24歳から60歳までの36年)=172,800円になります。

自分の意志で加入しているといえばそうですが、きっかけは新卒入社した企業が企業型確定拠出年金を導入していたからです。

これってどうなの?と思うのは私だけでしょうか?

だから企業型確定拠出年金はダメだというのはなく、制度上、欠陥があるのになんでユーザーの視点で改善されないの?と思っています。

勤務先の都合で金融機関が変わることがある

前述の通り、企業の経営者の一存で企業型確定拠出年金の金融機関が変わることは可能性が極めて低いのですが、合併や企業再編などで合併先の別の企業の企業型確定拠出年金に移ったりという時にには起こりえます。

個人で運用しているのに企業の理屈で契約先の金融機関が変わり、新たに金融商品(運用商品)を買い直すというのは変な話だと思いませんか?

iDeCoのほうが企業型DCより運用商品が優れている

これは気付いていない方が多いのですが、企業型確定拠出年金の契約している金融機関が提供している運用商品より同じ金融機関でもiDeCoの運用商品のほうが商品が良かったりします。

例えば、りそな銀行でも企業型確定拠出年金として用意している運用商品ラインナップとiDeCoのラインナップは違います。

平成13年、平成14年に確定給付企業年金、確定拠出年金は誕生しました。もう20年位経つんですね。この初期に企業型確定拠出年金を導入した企業でラインナップを変えていないという企業も相当な数あると思います。この企業型DCの運用商品を見直していないことによる影響は社員個人の運用成績に及びます。

それではなぜ、iDeCoのほうがラインナップが良いかというとiDeCoは個人向けの金融機関で2017年に全国民がiDeCoに加入できるようになってからネット系証券会社の進出などもあり、金融機関各社がサービス品質を高めています(企業年金の分野では比較的、切磋琢磨していると言えます)。

手数料無料とか聞いたことありませんか?

手数料に頭が行きがちですが、運用商品を購入する際の手数(信託報酬)や商品自体も新しい商品がラインナップされていたりします。だから同じ金融機関でもiDeCoのほうが良いと私は説明しているのです。

失業保険、育児休業給付、傷病手当金が減る

これは難しいので、別の動画で解説していますが企業型確定拠出年金が導入されている企業に勤めている方にはぜひ、見てほしい動画です。

金融機関の方でも理屈がわからずに営業、提案している方も多いと思います。このWebページの終わりにある【誰も言わない】企業型確定拠出年金で実は損するケースを解説します(企業型DC・選択制DC)で解説していますからぜひ、ご覧ください(最近人気です)。

企業のメリットと言われるものを論破してみる

掛金が損金算入できる!は給与で払っても損金算入

企業が金融機関等から企業型確定拠出年金を提案される際には”損金算入”という言葉が出てきます。企業型確定拠出年金の掛金が損金になりますよというものです。

個人の方で損金算入がよくわからなければ、退職所得控除と同じような仕組みだと思ってください。企業が法人税を払うときに法人税の計算対象から掛金として払った金額は含めないでみてくれるんですね。

ただ、これは別に企業型確定拠出年金を導入せずに給与に掛金と同じ位の金額を毎月上乗せして支払うのと変わりません。

NISAでも、iDeCoでも仮想通貨でも、自分の自己啓発にでも好きに使ってくださいと伝えたほうが社員によっぽどありがたがられると思いませんか?

確定給付企業年金と比べて追加で費用がかからない(リスクがない)のは「比べる時」だけの話

これは会社が合併せざるを得ない時に確定給付企業年金を続けるか、企業型確定拠出年金に確定給付企業年金をやめて、資産を移すかといった選択の際に訴求力のあるメリットになりますがまだ従業員がそれほどいない企業が企業型確定拠出年金を導入する際にはなんのメリットとも言えません。

「優秀な人材確保に繋がる」は数値の裏付けがない

これは私も反省していますが、企業型確定拠出年金を導入すれば優秀な人材の確保に繋がるというトークにはなんの数値の裏付けもありません。

企業年金といった法人向け金融商品の分野は他の業界と違い、数値の裏付け、「数値で見るとこう改善されている」というデータの収集が圧倒的に足りていません。

私がYou Tubeで行うアンケートの結果発表のほうがまだ数値の裏付けをもって解説しています。

定性的な提案によって企業型DCという”売れず、乗りづらい車”を買わないようにしましょう。経営者のベンツのように社用車扱いで買って、売って、手元のキャッシュにするといった使い方はできません。

個人のメリットを論破

企業型確定拠出年金は退職金代わりになるというのはiDeCoも同じ

企業型確定拠出年金の掛金と同じ位の金額を給与に上乗せして現金で振り込み、iDeCoに加入したい人はしてくださいというのと同じです。iDeCoも退職所得とみなされ、退職所得控除の対象です。別に企業型確定拠出年金じゃないと退職金代わりにならないというわけではありません。

会社の掛金に上乗せして自分で掛金を足すこともできるけど、その運用商品で良いですか?

iDeCoのほうが運用商品が優れているケースが多い中、企業型確定拠出年金の運用商品を自分でさらに掛金を上乗せするというのはあまり・・・

税制優遇と言われるけど、iDeCoも同じ

個人の場合は一時金受け取りだと退職所得控除という売り文句がiDeCoでも同じです。

導入した制度次第で社会保険料が削減できるが、実際はそれほど減ってない

選択制DCのメリットといわれる社会保険料が減る仕組みは圧倒的に勘違いしている方が多いのですが、一言で言えば保険料が減るということはもらえる給付が減ります(これは説明が難しいのでぜひこのWebページの最後のほうで紹介している動画をご覧ください)。

さらに期待ほど社会保険料の削減効果はありません。仕組みは入れればよいですが、実際に社会保険料が減るかどうかは社員の方が選択制確定拠出年金において前払い退職金として給与と同様に先に受け取るのではなく、わざわざ企業型確定拠出年金の掛金にするというケースに限られますので、社長や総務部長が強制できるものではありません。

私だったら選択制DCが導入されていたとしても自分でiDeCoを開設して、給与からiDeCoの掛金を払います。

なぜかというとiDeCoのほうが運用商品が良いこと、自分が好きな金融機関を選べること、仮に転職や勤務先が合併などの企業再編に巻き込まれたとしても長期分散投資の運用商品を売却したりしなくて良いからです。

まとめ

You Tubeの視聴者の方からリクエストを頂きまして、企業型確定拠出年金をおすすめしない提案ということで動画のご紹介、このnoteでも解説してみましたがいかがでしたでしょうか?

私が最後に言いたい最も大事なことなのですが、iDeCoに全国民が加入できるようになる前、企業型確定拠出年金は会社員がiDeCoに加入しない前提でした。その頃は自社の社員が確定拠出年金に加入できるようにするというのは一定の価値があったわけです。

これが企業型DCに既に加入している方がiDeCoに加入できるようになるとiDeCoの掛金がiDeCoだけ加入しているケースと比べると減ったり、運用商品がそもそもiDeCoのほうが良いので企業型確定拠出年金があることによる弊害ばかりになってしまいます。

ですので、企業型確定拠出年金を導入する、続けるという場合は2022年10月以降はiDeCoを超えた運用商品ラインナップ、価値が社員にとってなければ(用意できなければ)企業型確定拠出年金をやめてしまって、iDeCoに移す(私が提唱するiDeCo手当などを新設して、iDeCoの掛金の補助をする)かブラッシュアップして企業型確定拠出年金を続けるか(社員に魅力に感じてもらうものを用意し続けるか)のどちらかに至ると私は考えます。

あわせて見たい、退職金コンサルティング・企業年金コンサルティングの動画

【企業型確定拠出年金】選択制DCとマッチング拠出の違いを少々解説します(コメント回答・解説)

【誰も言わない】企業型確定拠出年金で実は損するケースを解説します(企業型DC・選択制DC)

この動画で引用した資料等

今回ご紹介した動画の中で引用、投影した資料はありません。

講師へのご質問、ご相談について

講師へのご質問、ご相談に関しては次のページをご参照ください。