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【継続教育みたいな動画第2回】老後資金が不要なケース②公務員共働き(終身雇用モデルで2馬力、厚生年金加入)

退職金・企業年金コンサルティングチャンネルの講師をしております大森祥弘です。

本稿ではYouTubeで新たに始めた新シリーズ「企業年金の損しない作り方」の第2回のwebコラム版ということで解説していきたいと思います。

第2回目は前回に引き続き老後資金が不要なケースを解説するというなんとも挑戦的なテーマなのですが、そもそも老後資金が心配になる、20代・30代といった若いうちから将来の備えが心配になるというのは煽りや世論、風潮をきっかけにしたものが大半だと思っています。

30代であれば自分の親が年金を受給するようになり、しんどそうといった実体験に基づく資産形成の意欲というものが湧いてくるのはわからなくないのですが、20代のうちから老後資金が不安というのは実体験ではなくお金が不安で、将来のお金も不安といういわば”今の不安の延長”という話なのだと思っています。

それで、20代・30代のうちから老後資金の資産形成について、そもそも不要なケースと言いますかそれほど心配しなくても良いケースに該当するのに全国民共通の課題として老後2,000万円持ってないと生きられないと勘違いしてないだろうか・・・と思いまして第2回となる今回も老後資金が不要なケースを解説しようと思います。

前置きが長くなりましたが、それでは本題に入っていきましょう。

YouTube解説動画はこちらからご覧頂けます

老後資金が不要なケース第2回_夫婦ともに公務員共働き(企業年金の損しない作り方02_継続教育”みたいな”動画シリーズ)

後半の動画は次の動画です。

資産形成以外にアテになるお金の有無で老後資金は全然変わる(企業年金の損しない作り方03_継続教育”みたいな”動画)


公務員は”公務員版の企業年金”がある(年金払い退職給付)

公務員がiDeCoに加入する場合、iDeCoの月額掛金の上限は12,000円です。

これは、勤務先の企業が確定給付企業年金を導入している場合の会社員と同じ上限額です。

このケースの会社員の方と公務員のiDeCoの掛金上限額が同じなのはなぜでしょうか?

答えは「公務員は公務員版の企業年金があるから」です。

*ここで「公務員は民間と比べて待遇が良いのに、企業年金もあるってけしからん!」と思った方おられるかもしれません。でも、逆に言えば、都道府県が県の職員(地方公務員)のために企業型確定拠出年金を導入するということもできませんし、確定給付企業年金も導入できません。

ですから、昔はこういうツッコミがされてもおかしくなかったと思いますがどちらかというと今はかつての名残で形が残っているというのが正しいかもしれません。

ということで、この公務員版の確定給付企業年金は公的年金の上乗せという形で支給されますし、別に退職手当も支給されます。

退職金+公的年金+年金払い退職給付(公務員版の確定給付企業年金)という形になりますから、民間企業で退職金なし給与水準も低いといった会社員と比べれば老後資金が不要までは言い過ぎですが、あながち間違いでもなさそうと思いませんか?

ちなみに年金制度は毎月の標準報酬月額と標準期末手当等の額(民間でいう期末賞与)に付与率を乗じた「付与額」を毎月積み立てていきます。

この付与額に利息を加えた額を「給付算定基礎額」(民間の確定給付企業年金でいう仮想個人勘定残高)といい、この額を基に年金払い退職給付の額が算定されます。

支給方法についてですが、有期退職年金と終身退職年金の2つに分けて支給されます。

有期退職年金は、20年で受給、10年で受給、一時金として受給の3つから選びます。なお、終身退職年金は、生涯受給できます。

*年金払い退職給付についてはリクエストがあれば解説したいと思います。

公的年金のモデル支給額は1馬力、奥さんずっと専業主婦モデル


次に老後資金が不要か必要かのそもそも論をもう1つお話しします。

深く話すと長くなるので、今回は手短にお話ししますが老後資金が必要か不要か考える時に公的年金がもらえるか?いくらもらえるか?というのは頭に浮かぶと思います。

それで公的年金がいくらもらえるのか?という話なんですが、モデル年金額は次のようになっています。

 令和4年度の年金額改定についてお知らせします

上記の資料のうち、厚生年金の令和4年度の219,593円。これがモデル年金額です。

モデル年金額の算出の考え方は資料のとおり「平均的な収入月額換算43.9万円で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額)の給付水準」です。

このモデル、どう思いますか?ということですね。
このモデルは私の父親の時代のモデルなんです。
それがずっとモデルになってる。

一般の方向けに補足解説すると「ボーナスを月給に上乗せしたら毎月、43.9万円を20歳から60歳まで会社員の給与収入として得続けた。加えて、20歳で同じ歳の奥さんと結婚。奥さんは20歳から60歳までずっと専業主婦。」というモデルです。

繰り返しになりますが、このモデル昭和の1馬力のモデルなんですね。

だから、確かに1馬力で奥さんずっと専業主婦という形だとよく夕方のテレビや民放のYouTubeの切り抜き動画インタビューで出てくるように「年金足りますか?」というと足りないとかギリギリって言われるんですよ。

そりゃあそうです。物価が上がってるし、現役世代の賃金が伸びてないから「給料カツカツ」と感じている現役世代の感覚、老後の年金額も同じ感覚を持つわけです。

ですので、夫婦ともに厚生年金に加入というケースですと保険料負担はしんどいんですが、現在、年金を受給している世代と比べて実は公的年金の年金額は私達のほうが多いかもしれません。

公務員に限らず、夫婦ともに厚生年金に加入していればモデルプランより多くもらえます。モデルと全然違うとも言えるかもしれません。

そうすると、公務員に限らず、民間の会社員でも同じことが言えるのでは?と思った方もおられると思います。

確かに厚生年金だけの話をすると公務員も民間も同じです(以前は共済年金だったことを除いて)。

ですので、話はそれますが、今、受給している方々のベースで年金額を悲観し、誤った方向性の議論をしないことが大事です。

コンスタントに昇給、保険料額が増えるモデルは年金額が多くなりやすい


一方で、公務員夫婦ともに共働きダブルインカムという形は上記のモデルとは違う2つの要件が備わっています。

ひとつ目に夫が公務員、奥さんも公務員の場合、自分で辞めない限り、よほどのことがないと専業主婦にならないということです。

夫婦ともに厚生年金に加入し続けるので、モデル年金と異なり国民年金の額(基礎年金の額)は専業主婦の方と同じですが厚生年金が支給されます。

ふたつ目に厚生年金に長く加入し続け、良くも悪くもコツコツ右肩上がりで減ることがないということです。

年金額を決める要素は加入期間と保険料の額です。高卒、大卒で公務員任用、定年まで働き続けるという終身雇用モデルが一番公的年金の額が増えやすいと私は考えています。
(働き方さまざまで今後は色々と変わってくるかもしれませんが今回は割愛します)。

公務員の退職手当は民間企業の退職金とは別物

ここまで年金払い退職給付や夫婦ともに厚生年金に加入し続ける終身雇用モデルだと年金額はモデル年金額より多くなるケースもあるといった話をしました。

加えて、退職手当の話をしましょう。
公務員の退職金は勤め続ければ増えます。公務員に限らず、当然と言えば当然なんですが自分で退職しない限り、勤務し続ければ増えます。

また、民間企業のようにリストラ、人員整理、合併、分割に伴う人員削減などもありません。加えて、降格、降級といったケースも役職定年を除きないように思えます。

現業職ですと、職種によると言わざるを得ませんが、国家公務員1種、2種、地方上級採用で大卒から定年まで勤め上げたというケースですと退職金というのは老後資産を考えるに結構なインパクトになります。

民間企業(私が以前、勤務していたようなインフラっぽい業種も含めて)ですと、退職金の額も様々、増え方も様々です。

民間企業ですと就労条件総合調査等で大企業、中小企業といった規模別に退職金の水準の資料もありますが、まぁ各社バラバラです。

一方、公務員の場合ですと退職金の計算式、どの位増えていくのかと支給条件は公開されています。条例で決まっていたりもしますし、支給金額もガチガチに決まっています。

この古典的な長期勤続に伴う報酬の典型例とも言える退職金は終身雇用の典型である公務員と相性が良く、老後資金としてアテにできるという点が民間企業と全く別物だと考えます。

公務員の退職手当と民間企業の任意の退職金制度は別物と考えて頂いても良いかもしれません。

編集後記 

前回と今回のWebコラムで、「老後資金が不要なケースを解説」という壮大
なタイトルにしてお話ししてみましたがいかがでしたか?

公務員が代表的ですが、ジョブ型、20代から1,000万円近くもらえるといった民間IT企業のような報酬形態とは違いますが、終身雇用モデルは終身雇用モデルなりの良さというのがあります。

今回解説したような公務員共働きダブルインカムの方は「民間企業で退職金や企業年金もない」といったグループと老後資金の資産形成という観点で比べると全然別ですので、夫婦関係に亀裂が入るか、自分から退職するといったことがなければ”積立投資”ではありませんが、”積立労働”していると捉えて頂いて、健やかに暮らすにあたってはなんとかやれる老後資金というのが作りやすいです。

(逆に大きな夢は見れないと言えるかもしれませんが・・・)

ということで最後までご覧頂きありがとうございました!