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祝砲10発、上々の新体制

祝砲が轟々と鳴り響いた。新体制の船出として、これほど賑やかなことも珍しいだろう。

ロベルト・マルティネス新監督が率いるポルトガル代表は、EURO2024予選の最初の2試合に臨んだ。終わってみれば2試合で10得点、そのうち4得点が元気いっぱいの英雄・クリスティアーノ・ロナウドのものだった。

新監督は、いかにストライカーの世代交代を進めるかということに頭を悩ませているはずが、出場すればこれだけ点をとってしまう男だ。どう説明を施したとしても、ベンチに置く選択を取りづらいことは間違いない。

リヒテンシュタイン戦

相手が小国であろうと、良いスタートが切れたことはポジティブに捉えることができるだろう。ロベルト・マルティネス監督は新システムの3バックを駆使し、チームは危なげなくリヒテンシュタインに勝利した。

ロベルト・マルティネスの3-4-3

この日の布陣は、初招集のゴンサロ・イナシオを左のCBに配した3バックだった。WBは右がカンセロ、左がラファエル・ゲレーロ。中盤にパリーニャとブルーノ・フェルナンデス。最前線にクリスティアーノ・ロナウドが鎮座し、その背後にサポート役としてジョアン・フェリックスとベルナルド・シウバが配置された。

リヒテンシュタイン戦のスターティングフォーメーション

この布陣で特徴的なのは、ブルーノ・フェルナンデスとベルナルド・シウバのポジションチェンジだ。この2人は比較的フリーにポジションを移動する。ブルーノが外でボールを受けるなら、ベルナルドが中でフリーになる。ベルナルドが下がって配球するなら、ブルーノが中で楔を受ける。この2人の関係性に、カンセロの抜群の攻撃センスが加わり、出来上がったトライアングルはリヒテンシュタインの左サイドを蹂躙した。その破壊力を持って生まれたのが、前半のカンセロのゴール、そして後半立ち上がりのベルナルドのゴールだった。

後半は、クリスティアーノ・ロナウドが自身の大記録を自身の2ゴールで祝う時間となった。彼はこの日、ポルトガル代表として197試合目の出場。これにより、クウェート人のバーダー・アル・ムタワを抜いて、世界一多くの国際キャップを持つ選手となった。19年7ヶ月4日、代表通算120ゴール。もはや偉大すぎてまったくピンとこない数字だ。

守備ではパリーニャのデュエル勝率が光る。守備的MFが必要なさそうにも思えるこの試合で、彼は20回のデュエルに勝利した。そのうち11回は空中戦で、インターセプトが3回。ポルトガルのターンが永続していた背景には、彼の運動量が存在した。

ルクセンブルク戦

3バックの新システムに手応えを感じつつ、アウェーでのルクセンブルク戦に臨んだ。

ロベルト・マルティネスは、初戦からメンバーを3人入れ替えた。3バックの右にアントニオ・シウバを配し、リヒテンシュタイン戦で右CBをこなしたダニーロは左CBへ。両WBにはそれぞれダロトとヌーノ・メンデスがが起用された。

ルクセンブルク戦のスターティングフォーメーション

立ち上がりから得点を重ね、楽に試合を運ぶことができた。ルクセンブルクをお得意先としているクリスティアーノ・ロナウドは、これまで10試合で9ゴールを記録していた。この試合で2得点を記録し、これで11試合11ゴール。お得意様としての絆をまた一つ深めたようだ。

ルクセンブルクの守備は決して組織的とはいえなかった。ポルトガルがDFライン背後へのボールを供給すれば、ほとんどが決定機となっていた。間で受けること以上に背後を意識する姿勢を感じたこの試合では、大勝した前節よりもさらなるダイナミズムを感じさせる攻撃を繰り広げた。

3CBの一角に求めるもの

この2試合でロベルト・マルティネスは、3CBの一角には必ず"守備的MFもこなせるプレーヤー"を配置した。基本はダニーロ・ペレイラが左右のCBをこなすうえに、ダニーロ・ペレイラを下げてルベン・ネヴェスを投入したリヒテンシュタイン戦では、4バックに切り替えるのかと思いきやパリーニャをそのままCBに下げることを選択した。

3バックにすることで後方に人数を集め、やや攻撃が重くなる懸念はある。そのデメリットを吸収しようとしているのが、この守備的MFを起用する手法だろう。ルクセンブルク戦では、ダニーロ・ペレイラの基本ポジションは左CBであったが、終盤の時間帯にはアンカーに入る場面もあった。この可変こそが、ロベルト・マルティネスの目指す戦術的柔軟性なのだろうか。

この可変は、終盤にレオンを投入したときにより効果を発揮した。3-4-3のままレオンを投入するよりも、4-3-3に切り替えた上でレオンを明確にウイングとして配置する。レオンによって生み出された84分のPK獲得、そして88分のゴールは、この明確な役割変更が功を奏したものであるように見える。

「クリーンシートは疾風よりも価値がある」

指揮官はクリーンシートに満足している。

10得点のほうに視線が寄せられてしまうが、2試合をクリーンシートで終えたことも評価に値する。就任時の会見では、1-0よりも5-4で勝つ方が好みだと語っていた指揮官は、失点をゼロに抑えたことに大きな価値を見出している。


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