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保険金詐欺容疑者が留置所で自殺 留置所で自殺は可能か? 450日の留置経験から語る。

大阪府高槻市で資産家の女性と養子縁組をして殺害し、保険金を騙そうとした容疑で、7月20日から大阪府警福島署に留置されていた高井凛容疑者が首をつって自殺した。

はっきり言ってトンデモないことが起きた。                  最後に述べるが、これは警察が容疑者を殺したと思われても仕方ない。  

そもそも留置所で自殺は可能なのか?450日間留置所生活を経験してきた私からすると、可能だ。                             私は留置所で2回、自殺未遂の現場に立ち会った。                 その経験から、なぜ今回の事件を府警は防げなかったのか、この事件をニュース通りに受け取っていいのか。つまり警察が殺したのではないか・・・検証しようと思う。

留置所の自殺防止

私は兵庫・神奈川・山梨・静岡・東京の留置所をたらい回しにされた。    それぞれ自殺防止には気をつけているようだった。               私はケロっとしているので、結構ざっくばらんに留置システムについて教えてもらった。

基本的に留置所では部屋にものを入れない。                       常に入るものは着ている衣服だけだ。                           昼間は本やメガネ、ペン、ノートなどが入るが、夜はこれらを出して布団を入れる。                                 この布団を入れるタイミングでたいていの留置所は居室をチェックする。     夜中に自殺する人が多いのと、本を隠す奴(私)がいるからだ。      このチェックは結構厳しい。中に入っているチリ紙の隙間や、たたみの隙間も見ている。                                  さらに部屋に入るときは、入念にボディチェックがなされる。

今回は高井容疑者がこのタイミングで「ヒモ」を隠し持っていたと思われるが、ちゃんとチェックしていれば確実にバレる。                  このチェックをきちんとやっていたのは兵庫、山梨、静岡だった。      夜中の見回りはだいたい15分に1回だった。                          山梨と静岡は30分に1回くらいしか現れなかった。                      この時顔が見えていなかったりすると、寝ていても起こされる。       この見回りは兵庫と神奈川はかなりきちんとやっていた。

また朝、布団を出した後や、運動(つめきり・髭剃り)の後に部屋やロッカーをチェックするところもある。山梨と神奈川がやっていたと記憶している。この時、金属探知機を使っていたと思う。            又、月に1回、さらに詳しく点検するところもあった。これは兵庫以外すべての署でやっていた。                                ロッカーの中やたたみの下まで徹底して調べる。

さて最後の月1点検以外、一切東京の名が出てこないことにお気づきだろうか。                                      東京では私は麻布署にいたが、ここは本当にガバナンスが緩い。             月1点検もタイミングを前もって留置人に伝えてしまうので、みんな隠し持っている物をロッカーに返しておける。                     そして私が自殺現場に立ち会ったのもここだ。

2回死んだ囚人

令和3年の9月末だったと思う。                                 麻布署は横並びに1~6室あり、扉を隔てて7室、さらに扉を隔てて8,9室があった。                                       私は5室で、5室の前に「担当台」がある。                     麻布署では朝8時くらいに部屋に掃除機を入れる。この時が職員にとって一番忙しい。                                   

その日は同部屋の3人のうち私が掃除当番で、長老のオジサンが担当台の方を見てボーっとしていた。                           担当さんが通りかかったときオジサンが声をかけた。                 「8番トイレ長くない?20分入ってるよ。」                   なぜこんなことが分かるのかと言うと、担当台の横に何室が何分トイレに入っているか分かるモニターがついているからだ。                   これも自殺防止の一環である。

担当さんがお礼を言ってダッシュで8室へ行くと、すぐ怒号が聞こえた。  「オイ!返事しろ!大丈夫か?」1分くらいすると外からたくさん人が入ってくる。                                     「AED、AED!」                               私たちはとっさに何が起きたのか、理解した。後から聞いたところによると、8室の囚人はズボンをトイレのドアに挟んで、首をつっていたらしい。       口の中にティッシュが入っていたという。                          偶然オジサン囚人が気づいたから良かったが、担当さんがきちんと注意していなかった以上、死んでいた可能性も高かった。

8室の囚人は一命をとりとめ、1週間の入院の後に帰ってきた。     その後彼は7室で24時間監視体制におかれることになった。常に職員が目の前に座り、部屋を見ているのだ。

しかし10月の10日前後だったと思うが、夕方にものすごくバタバタした日があった。夕方8時くらいだったと思う。                     突然7室で大きな音がした。                              「オイ!聞こえるか?」「ベル押して!!」                        ベルというのは警報機のことで、これを押すと署の全体から留置所に人が集まってくる。暴動が起きた時に鎮圧するためだ。                         囚人のわれわれからすると、また?って感じでだったが、2回目も幸い一命をとりとめたようだった。

手口は大量のティッシュを飲み込み、上着の袖で首を縛るという、とても本気とは思えない稚拙なものだった。                         なぜ2回目が起きたかと言うと、監視要員の職員が他の仕事を手伝っていたからだ。  

                                   麻布署はチェック体制もずさんな上、職員の統率も取れていなかった。   誰が誰の指示で動き、何をしているのか、お互いに理解しあえていないように感じた。こういうところで自殺は起きる。                    人はその気になれば、ペン1本で自殺できるのだから。

なぜ大阪府警は自殺を防げなかったのか

この答えは簡単。                                      チェックを惰性に任せてテキトーにやっているからだ。                      私が見た限り、麻布署以外の留置では自殺は相当難しかっただろうと思う。  きちんとチェックをしていれば、それだけで威嚇にもなるので、基本的に事故らない。  

                                        今回8月19日に容疑者が雑談で「逃走」という言葉を出したため、「特異被疑者」に指定し、監視を強めていたとのことだが、9月1日に死ぬまで 13日もある。                                     一般的に警察は、一週間何ごともなければ忘れてしまう。                     「特異」なら、31日夜の部屋の点検で「ヒモ」が見つからないはずがない。                                                      私の経験上、やる気のないベテラン担当なんかは、身体チェックでポケットしか触らない。                                    おそらくこのことを容疑者は分かっていたのだろう。                 結構頭はしっかりしている人だから。                             私の予想では「ヒモ」はチンポケ(ちん〇のポケット、パンツの中)していたのだろう。                                      職員はそれを見抜けなかった。                              またロッカーは月2回確認しているというが、逆に言えばそれしかしていないということだ。                                  特異被疑者なら毎日すればよい。

                                  この事件は必ず防げたはずだ。                                     安倍氏銃撃事件と同様、警察の前例踏襲、思考停止、士気の低さが招いた悲劇だ。ではこの事件が招いた悲劇とは具体的に何なのだろうか。

警察が殺しちゃったんじゃないの?

今回の事件で失われたのは、第一に保険金殺人事件の真相解明のチャンスだ。これでは被害者関係者は浮かばれない。                    しかし最も重要なことがある。それは、高井容疑者はあくまでも容疑者であって、犯人と分かっていたわけではないということだ。          言ってしまえば、一市民が誰も中のことは分からない、留置施設で死んだのだ。                                      こんなことが日本で起こる訳がないとはわかっているが、私はあえて以下のような論陣を張ろうと思う。

「警察が〇ろしちゃったんじゃない?」つまりこういうことだ。                  保険金殺人は無罪だった。事件自体一年以上も前なので、府警は焦って高井容疑者を詐欺やら文書偽造でパクった。けど割れないので色々証拠をでっち上げて、メディアにリークして煽ってみた。                         でもどうも口を割らない。このままでは裁判を維持できない。        けど今更釈放できない。                                       「えい!やっちまえ。自殺ってことにしよう。」                        もちろん私はこんなことはありえないのは百も承知だ。         しかし、残念ながら同じことが中国・ロシア・フィリピン・タイ・アフリカ・中東で起こったら、みんなはどう考えるだろうか? 

国際スタンダードでは「留置所で人が死ぬ=国が殺した」なのだ。    だから収容施設で人が死ぬようなことは絶対にあってはならない。     しかしどうにも府警はこの認識がないようなので、権力監視の観点からもぜひ、「府警が〇ろしちゃったんじゃないの?」と言う話が広がってほしいと思う。 

                              以上



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