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さぁ雪かきだ!

打ち寄せる締め切りを波を乗り越えて、ついに白い海に出港できる。

「さぁ雪かきだ!」

久しぶりにトラクターのドアを開ける。キャビンに乗り込む。少し埃っぽい車内が懐かしい。

ハンドル右下にキーを差し込み、右にひねる。

ブワン、ブワン、ブワン、ブワ、ブワ・・・

「あれ?」

もう一度

ブワン、ブワン、ブワン、ブワ、ブワ・・・

数度繰り返すと、ブワ、ブワ・・・だけになりやがて静かになる。どうやらバッテリーの放電が進み、エンジンをかける事ができなかったようだ。

「まじかぁ」

しかし、美幌に来てから車もトラクターも何度もバッテリーが上がる経験をしたぼくは落ち着いている。

「仕方ない、充電しよう」

キャビンから降り、バッテリーが搭載されているトラクターの前方に回る。フロントカバーを持ち上に引っ張り上げる。

上がらない。

「そうそう、横に引っ張るやつがあったわ、これかな?」

ぐっと力を込める、それほど引っ張れなかった。

「これでいけるか?」

フロントカバーにまた手をかける。しかし、開かない。フロントカバーのロックのつまみの調子が以前から悪いのだ。

そこからフロントカバーを開けるために四苦八苦。最終的にはサイドカバーをすべて開けて、手を突っ込んでロックを無理やり引っ張り開けることに成功した。

そして、充電開始。もう陽は落ち始めている。

1時間ほど充電して、エンジンをかけてみる。

ブワン、ブワン、ブワン、ブワァン、ブルブルブルブルブル

かかった!しかしもう夕暮れ。

「うん、除雪は明日だな」

こうして雪かき初日は明日に持ち越されたのでした。

最後まで読んでいただきありがとうございます。東京から北海道オホーツクの美幌町に新規就農した4人と1匹家族の農業、子育て、おすすめスポットなどをほぼ毎日更新しています。もしよろしければ「スキ」「フォロー」をお願いします!
(登場人物)
ぼく:東京大学で農学博士取得後、ベンチャーで8年勤務。その後、北海道で新規就農。
幸枝さん:ぼくの妻。北海道大学で生命科学修士、ぼくと同じベンチャーで同期入社。2015年に結婚。
つむぎ:3歳の長男。北海道で元気いっぱいに成長中。電車、働く車、飛行機など乗り物大好き。
スピカ:2歳の猫。女の子。網走の病院で保護されていたところからぼくの家にやってくる。
櫂:0歳の次男。長男が騒ぎ回る横で、どっしりと寝ている大物感を漂わせる。

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