立ち食いそばと吉永小百合さん

画像1


そばの神田は立ち食いそばを5店舗、着席型を2店舗展開する仙台の会社だ。仙台市民であれば誰もが知っている店である。立ち食いそばでありながら、九州枕崎産の鰹節、鯖節を使った自家製つゆに自家製生麺から茹で上げるこだわりで「立ち食いそばのレベルではない美味しさ」「老舗蕎麦屋よりも美味い」と評価されている。https://sobanokanda.com/
 
 組長はスポーツジムの知り合いで60代男性である。組長はジムで汗を流した後、朝飯にそばの神田を利用することもあるという。ちなみに組長と言ってもその筋の組ではない。単なるジム仲間達で飲み会をする時に「組の飲み会」と使うためのただのグループ名である。そんな組長から、昔そばの神田に吉永小百合の写真が飾ってあったという情報を得た。早速市内の店舗をまわってみたが写真を見つけることは出来なかった。

そばの神田は繁盛店で客の回転も早いためとても従業員さんに話しかけられる状況ではない。ネットで調べてみると吉永小百合さんの写真があったという書き込みを見つけることは出来たが、いつ頃、何故お越しになり、何を召し上がったのか、を知ることは出来なかった。
同じ組所属の飲食店経営の親方(70代)に写真の件を聞いてみると、写真のことは知らなかったが、以前そばの神田近くに日活の映画館があったので宣伝で来仙した時に食べに来たのではないか、と言われた。しかしはっきりしたことは分からないので、店を運営する、かんだ商事有限会社に問い合わせた。すると本業以外の質問にも関わらず丁寧な返信を頂くことが出来た。以下はそのメールである。


「いつもそばの神田をご利用いただき、誠にありがとうございます。
ご連絡が遅れ、大変申し訳ございません。

お問い合わせいただきました件、
私が存じている範囲でお答えいたします。

そばの神田として仙台で開業致しましたのは昭和44年でしたが、
それ以前は先代社長が東京お茶の水で小さい立ち食い蕎麦屋を営んでおりました。
その頃、早稲田大学の学生さんであった吉永小百合さんが立ち寄ってくださり、
写真を撮らせていただいたそうです。
本当にかわいい学生さんであったと、
先代が宝物にしていた写真を飾らせていただいていたそうです。
現在は著作権なども厳しくなり、
飾らせていただくことは遠慮させていただいておりました。

この程度の情報しかなく、申し訳ございません。

吉田森様が吉永小百合さんの写真に興味を持ってくださり、
不思議な感動を覚えました。
当時の初々しい吉永さんの気持ちに合わせて、
当店の蕎麦を楽しんでいただけると嬉しいです。

新型コロナウイルスもなかなか終息を迎えず、
まん延防止等重点措置の真っただ中ではありますが、
吉田森様もお体に気を付けてお過ごしくださいますよう、
お願い申し上げます。

またのご来店を心よりお待ち申し上げております。」

先代の社長さんもつらい時期があったのかもしれない。しかし吉永小百合さんの写真を見るたび、初心を思い出して奮起したり、当時の事を思い出して感慨にふけったり、小百合さんの純粋さや清冽さに心癒されたりしたのかもしれない。
そのように想像するだけでも楽しく、ますますそばの神田のファンになったのだった。
そして、吉永小百合さんのように影響力のある人というのは、私たち見る側の人間を良い意味で勘違いさせてくれる存在なのだと思った。勘違いとは、吉永さん本人はそのつもりがなくても、「笑顔に勇気をもらった」「落ち込みを救ってくれた」などと私たちが勝手に解釈する事である。そんな勘違いをも許容してくれる存在、やはり素敵な方だな、と思う。

画像2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?