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浮力の神様

ふかわりょうさんのエッセイ集『世の中と足並みがそろわない』(新潮社)が好評なようです。書評でタモリさんのことに触れていると知り購入しました。「浮力の神様」と「わからないままでいい」の二編でタモリさんの話題が出ています。「浮力の神様」ではタモリさんこう表現しています。
「どこに行くにも力が入っていない。(略)脱力というか、まるで浮力だけで動いているように見えました」
浮力という表現はタモリさんにピッタリだと思いました。つまり、自分というものがなく、周りに動かされている。もちろん、ただ流されて生きているという意味ではありません。自分が目の前のことを面白がっているうちに、いつの間にか高い水準での流れに乗っていて、何をしていても楽しいので、何に対しても力む必要がなくなったのではないでしょうか。自力でやる必要がないとも言えると思います。

やる気のある奴は去れ

エッセイの中でもタモリさんが「やる気のある奴は去れ」と話している箇所があります。この言葉は目標に向かい、やる気のある暑苦しい奴は目標しか見ていない。本当はその周辺こそが面白いのに、という意味合いの言葉です。これまた力が抜けています。自分で成せることなんてない。どこか悟りの境地まで感じさせます。

わからないままでいい

ふかわさんが、テレビ局のメイク室で大竹まことさんと隣り合わせたときにこう言われたそうです。
「例えばタモリさんいるだろ?毎日お昼の全国ネットで映っている。それでもタモリさんのことって、みんなわからないんだよ。すごいだろ?これだけ知られているのに。わかられたら、面白くないんだよ」
ふかわさんはこの会話がきっかけでわからないことが魅力だと気付き、どこが面白いかわからない、という批判にも動じなくなったそうです。

タモの見えざる手

15年以上も前のことになりますが、タモリさんが飲食店を経営されていることを知り、一度訪ねてみることにしました。場所は静岡県のサントムーン柿田川店に入っている太助というお店です。まだスマホがなかったのか私が持っていなかったのか忘れましたが、自宅のパソコンで住所だけをノートに書いてとりあえず時刻も調べず東北新幹線に乗り込みました。
小学校の授業で使った地図を見ると三島が最寄りのようでしたので東京で乗り換えて三島で降りました。どういうルートで行けばいいか分かりませんが、とりあえず近くに行けばなんとかなると思い、バスに乗り、適当なところで降りました。幹線道路沿いだろう、とあたりをつけて大きい道路がありそうな道を方向も分からず歩いていくとサントムーン柿田川店にたどり着くことが出来ました。
現代であればグーグルマップなどを使い最短ルートでたどり着けたでしょうが当時の私は、住所だけを頼りに、いわゆるひとつのカンピューターでたどり着くことが出来たのです。お店でお好み焼きとタモちゃん特製ギョーザとビールを堪能して帰りました。
今思い返すと無計画で適当だなぁと思いますが、私のタモリさんが好き!とういう気持ちが沸騰し、考えるより先に行動した事が奏功したようです。何も考えていなかったからこそ、タモの見えざる手に導かれたのかもしれません。そして、この力が抜けているのに上手くいった、というのがタモリさんの在り方なのかもしれない、と思い返しました。

違和感をごまかさない、ふかわさん

この本はふかわさんが世の中の大多数と自分の感覚が合わないときの違和感をごまかさずに拾い上げ、ユーモアを持って綴っています。正直、タモリさん目当てで買ったのですが、真面目過ぎてギャグになってしまうような面白さがあり、ふかわさんの純粋さも感じることが出来る本でした。ふかわさんの良さを教えてくれるきっかけをくれたタモリさん、どうもありがとう!
タモリさんの素晴らしさを再認識させてくれたふかわさん、どうもありがとう!(「」内の引用は『世の中と足並みがそろわない』ふかわりょう 新潮社より引用いたしました。)

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