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ワンオペ開業とやらないと決めたこと

 独立し新たに塾を開業しようとしたときに、いくつか「やらないと決めたこと」があった。それはワンオペで塾を運営するために必要に迫られたこともあれば、前職経験から、どうしてもやりたくなかったこともある。ではさっそく「やらないと決めたこと」を紹介していきます。

1. 人を雇う
 半年くらい前に、早稲アカ時代の同僚と飲んだ時に「全てのストレスの原因は他人との関わり」と彼が言っていて「おおー!」と思いましたが、実は彼も激務とストレスで体調を心身とに崩し2年前に早稲アカを退職していました。

 自分も会社員時代には上司、部下、さらにはモンペなど全方位的にトラブったこともあり、第2(3?)の人生でなにもその轍を踏むこともなかろうと考えた訳です。ところが結局開業2年目の時に、1期生を補助スタッフとして雇ったのです。理由は簡単で、夕方の時間帯が満席になり、講師1対生徒2だと収まりきらなくなったので、補助スタッフを入れて1対3や1対4で授業をやってみたのです。が、これが見かけ以外の効果は無かった 笑。

 一応彼女は上智に現役で入った訳だし、自分が直接教えていた訳だから、かなりイケるのではないかと思って声をかけたのですが、左にあらず。まず上智に受かった程度(=上智の入試問題で70%くらいの正答率)だと高校生を教えるのは英語力的に厳しい。特に高1高2生は学校のテキストを使って指導することが多いのだけれども、この手の教材は解答がないことが多い、というか学校の先生が配付してないことが多い。(不思議なもので偏差値的に上位の学校は解答を配付しているところが多く、下位になると配付していないところが多くなる

 それにしても、なんで学校の先生ってテキストの解答配付しないのだろうか?(ま、なんとなく理由はわかるけど笑)で、その手のテキストってなんか解き難いんですよ。入試問題じゃないから別解も考えられたりして。なので普通の大学生ではなかなか教えられず、結局「先生これって答えはなんですか?」とか「答えは何となく分かるんですけどどう説明したらいいんですか?」なんて質問が講師からバシバシきて返って面倒くさい 。あとはやっぱり、「なんでそう動くの?」とか「暇なのはわかるけど本読むか、ここで」なんて些細なことでストレスを感じたりすることも多かった。

 あと、個人で塾やってる規模だとどう考えても事務スタッフは不要。特に始めたばかりなんて生徒もいないし。早稲アカの社長からはやめる時に「事務員とかどうするの?」って聞かれた。というのも早稲アカだと新校出す時は必ず校長、専任講師、専任事務の3名という社員3人が最小単位だったから「塾を開く=事務員を雇う」、という発想についついなってしまうのだろう。しかし、個人が、それも個別指導の塾出すのにさすがに事務スタッフは不要。ちなみに授業中に電話がかかってきたら普通に出ます !

2.  定期的面談
 これも前職時代は年3回の講習会前には必ず全生徒の面談を入れてました。が、やめました。というのもこの手の面談の目的は2つで、一つは退塾防止用のガス抜き。もう一つは講習会の参加率アップと特別講座のプロモーション。早稲アカは集団塾なので増コマというよりは特別講座、特に夏期合宿と正月特訓の受講率アップに血道を上げていた。というのもこの2つ、会社の利益率アップの要だったので。

 ということで吉田塾では定期的面談は無くした。吉田塾は講師が私一人なので、私や私の指導法に不満があれば辞めて頂いて結構だし、その際に特に引き留めもしないので。つまり退塾防止用にわざわざ面談をする必要がないのだ。

 またプロモーション(というかサジェスチョン)は授業時に直接生徒にすれば事足りるので、わざわざ親御さんを池袋に呼び出して面談をする必要もない。もちろんご家庭から要望があれば随時面談はするが、開業して5年弱の間、入塾時以外の面談は本当に数えるほど。そしてその面談は大概指導内容に関するものというよりは子供が不登校になった、とか両親の離婚とか家庭内や学校でのトラブルに関するものだった。

報告書

3.  報告書、月のお知らせ
 単純に面倒くさかった、ということもあるけど、全体に対する連絡事項はホームページにアップすればいいし、報告書、というか指導内容の報告は毎回書面に記録して生徒に持ち帰らせているから不要だった。

 あと、塾長講話的なものもまあ、権威付けには必要なのかもしれないけど、生徒の親が皆中卒とか高卒とかの時代ならいざ知らず、今は、特に東京の中高一貫校に通わせている家庭の父母なんて自分より高学歴だったり知識人であることも多かろうからこれもこっぱずかしい。という訳で毎月生徒宅へなにがしかを郵送なりメール送信するような仕組みは採用しませんでした。

4.  営業電話
 営業活動はもちろんするけど、いわゆる営業電話はしないことにした。以下標準的な問合せ対応の流れ。

①ネットからの問い合わせ
②電話なりメールで体験授業の日時確定
③体験授業&面談(保護者同席)
④一度家庭に持ち帰って判断してもらい後日結論をもらう

で、営業電話をしないというのはこの面談が終わった後に「どうです、入塾しませんか?」というクロージングの電話をしないということ。だって、教える人間が自分しかいない訳だからこの電話は無意味だよなあ、と思う訳です。

 つまりもし自分のことを気に入ってくれていたら、入塾の連絡がすぐに来るだろうし、気に入らなかったから電話してこなかった訳で、そこに「体験授業はどうでしたか?」とか「ぜひ入塾して下さい!」とかいう電話を掛けても相手からしたら時間の無駄だし「息子が先生の授業は分りにくかったと申してまして…」なんて言われた日にはしばらく立ち直れないし ・・・。

 とりあえず1人でやってる小さな塾だから、自分のことを気に入って、信頼してくれる人に入塾してもらい、その人達のために全力を尽したかったのです。ちなみに自分が独立した時は47歳で、講師として、現役で働ける時間もそんなに残されていないかもしれないので、やる気が無いとか、親に無理矢理通わされている生徒に関わるヒマはない、と思っていたのも事実です。

5. 退塾阻止
 これも入塾の時の勧誘と同じですが、講師=営業=塾長、なので基本的に退塾したい、という生徒を引き留めるのは無駄なことが多いです。もちろん「ボタンの掛け違え」的なことはあるのでしょうが、「すみませんが、家庭の事情で今月一杯で辞めたいのですが・・・」と電話がかかってくれば、自分の授業になにかしら不満があって辞めるという決断をしたのだろうし、よほど憎まれていなければ面と向かって「吉田塾さんの授業を受けても一向に成績が上がらないから、他塾に変えます」とは言わないでしょう(笑)

 これが大手塾であれば、責任者が出てきて「授業にご不満ですか?わかりました。ではこちらの講師はいかがでしょうか?」と言って事態の収束を図ることもできるでしょうが、ワンオペではそれもできませんから、基本的に「去る者は追わず」というスタンスで「退塾阻止」のために長時間面談する、ということはやらないことにしてしています。

5.  ネクタイ、スーツ
 これも企業塾ではあるあるですが、早稲アカは社員もアルバイトも男性はスーツにネクタイ着用が義務でした。これも元をたどれば、「学生のアルバイト講師をさも正社員であるかのように見せるため」だったと思われます。時代の流れからいつの頃からか夏はクールビズということでノーネクタイになりましたが、それでもスーツ着用は変わらず、ジーンズは不可でした。

 で、これキャラを立てるためとい訳でもないですが、吉田塾ではスーツはやめて夏はジーンズにアロハ、それ以外はジーンズにコットンの白シャツにしています。これは楽だから、という以外になにも目的はないでが、副次的に英語の講師っぽい、というか予備校の講師っぽいというかそういう印象は与えているかもしれません。


6.  ブース
 個別といえばブースというか衝立がつきものですが、なんか見晴らしが悪くて嫌い です。よって最初からブースをつくるつもりはなかったのです。もちろん集団授業も並行して行うつもりだったことも理由の一つとしてありますが、個別のブースなんかなくても本当に集中したら関係ないし、またブースがないことで個別なんだけど集団のような緊張感というか場の雰囲気を作ることもできる、とも考えてのことです。

 そしてブースを作らなかったことで指導方法が自然と教え込む個別指導から自分で考えさせ積極的に作業させる自立?自律?学習的要素を織り交ぜることが可能になったのだと思います。まあ、これは結果論ですが。

7.  パンフレット
 よくメールでの問い合わせで資料送付をお願いされると「特にホームページに掲載されている以外の情報はありませんのでそちらをよくお読み下さい」と返信します。実際に必要な情報はホームページにすべて挙げているので送るものがないのです。あ、唯一挙げていないのは「入塾申込書」です。大手にいるとどうしてもカラーのきれいな「入塾案内」がないといけないような気がしますが、別になくて困ったことはこれまでに一度もありませんでした。

8. オリジナル教材
 オリジナル教材はですね・・・まあ、作りたい人は作ったらいいと思うんですけど、市販教材よりよくできたオリジナル教材はなかなかお目にかかれない(笑)もちろん、昔私も、さんざん作りましたけど、そういうのを今見返すと、結構こっぱずかしいものが多いです。もちろん、集団授業をやる場合なんかはオリジナル教材がある方が授業はやりやすいのですが、予備校のテキストもそうですが、どうしても(授業が前提だから)解答・解説が薄くなりがち。誤植も多いし。
 ということで、今は一切自分で教材を作ることはありません。(本は出版しましたが)よく問合せにいらした保護者さんで「先生の塾では教材はオリジナルですか?」と聞かれる方がいらっしゃいますが、あれはどういう意図なんでしょうか?そのような方は「名講師の門外不出のオリジナル教材」があると思っている人もいらっしゃるのでしょうが、そんなものがあればきっと出版化されてベストセラーになっていることでしょう

9. 残業
 そういえば、独立するときにやらないと決めたことがもう一つ。それは残業。まあ、1人でやってるから就業規則もないんですが、最後のコマが終わったさ速攻で帰ります。最終コマが終わるのが19:50または21:25。で、30分後には確実に塾をでます。まあ、その分、朝はその日の授業が何時からでも10時に塾に行って色々とやっていますが。

 ちなみに個別だから?予習はありません。というかしません。もちろん集団授業をやっていたときは予習をしていましたが、いまはその必要がないのです。もちろん英語力自体は鍛えている。だから早稲アカ時代より今の方が入試問題や各種資格試験問題の解答能力は確実に上がっていると感じる。特にリスニングとスピーキングは確実に上がっている。なにせ、暇に任せてネットで英語を聞きまくり、スカイプでネイティブと話しているので。

 で、授業は13:00〜14:30が1コマ目、次が14:35〜16:05。ここに高卒を入れている。少し休憩を入れて16:45〜18:15、18:20〜19:50ここに中高生が集まる。最後が19:55〜21:25ここは部活やってる子や近所の子達用の枠。なのですが、今年は吉田塾も「働き方改革」と称して金曜土曜はこの最後のコマを無くした!そうすると何もなければ最短で20時きっかりには塾を締めて飲みに行ける!

 なお、2019年の6月にLINEのオフィシャルアカウントを作ったので、生徒や保護者からの連絡も大半がLINE経由になって、早く上がっても別段支障が無くなったのも有難い。ちなみに休みは日曜日+5週目にあたる各月の29,30,31日。あとは盆と正月に少しまとめて休みを取る感じです。

 なので月の休みは月間で4〜7日。ブラックですか?とてもじゃないけど前職時代の年間110日+有休というわけにはいかない。まあ、週休完全2日制にしてもいいんだけど売上がざっくり5/6になるのでまだその踏ん切りはつかないです。今次男が大学2年生なんで、やつが卒業したら週休2日にしたいなとは目論んでいますが。とはいえ、今が別段体力的にキツイ訳でもないので無理に休まなくてもいいんですが。

 という訳で、独立してからは月末に旅行に行くことが多くなった。月末が週末に当たらなければ旅費もホテル代も安くて有難い。あと、夏休みもお盆の後週にずらして入れてるので海外も比較的安くいける。まあ、勝手に休みを決められるのも個人塾のいいところですね。誰かが言っていましたが「自分で自分の働く時間を決められる人は人生における幸福度が大幅に上がる」ようです。

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