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ゲイである事をカミングアウトするという事③

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 自由が丘はメンズの洋服店が殆どない為、カフェや雑貨店しか巡れないが月1にはビレバンに必ず入って何も買わずに出ていくというのは彼なりの儀式だと思っているので俺も付き合う。今日は女性誌「LARME」を立ち読みしていたが、「それお前にとって一生役に立たない本だぞ」と思っていたがもう突っ込まない。しょうがない。だって、中身は女の子なんだし。
ビレバンを出ると周りのカップルを見渡して「ねえ、カズさん」
「ん?」
「やっぱり男女カップルは良いよねえ、だって女性が日傘を用意したら男性が持って相合傘になってくれるもん」
「ん?いいよ、日傘持ってるし」
「いいよー、でもここらへんにいる男性って白いパンツに高そうなビーサンで手持ちバックのオジサマが多いよねー」
「なあー、しかもそういう奴って必ず結構年の離れた若い奥さんなんだよなー」

 そういうしょーもない話をしながらスーパーあをばへのエスカレーターを下り、祐一の晩御飯の買い物に付き合う。最初は一緒にスーパー行くのも抵抗があったが、2年も経てばどうでも良くなった。
「本当、自由が丘って意外とスーパーとかクリーニング屋とか徒歩圏内に揃っていて新しい店もどんどん建つし便利だよねー」
「ああ、最初は近くにコンビニしかないよう僻地で家賃安い所に住んでたけど、徒歩圏内に何でもある地域に住む方がLiving costが安くなるというのが俺の結論です」
「うんうん、そうだよねーでも荻窪から遠くない?」
「まあ、1時間かかるけど丸の内線帰りは座れるし」
「ああ、そうか、終点だもんねー」
と言って、祐一はカゴにローリエを入れた。

 俺はゲイ友達とかコミュニティを作るのが全くもって嫌だったが、祐一のせいでたまに二丁目でゲイ友のトモキさんとタカシさんに会う事になる。2人は俺達より一回り年上だ。あとトモキさんには彼氏が3人いるが、皆仲が良いらしい。
 今日は二丁目のレストランで4人で飲む事になっている。
「カズ君ノンケにしか見えないよねえ」とタカシさん。
「しかも女性のアイドル好きだから周りにばれにくいもんねえ」とトモキさん。確かに。今まで生きていて勘ぐられた事は一度もない。

たまたま色々な事が溜まっていたのか俺にしては饒舌だった。
「何か、ゲイってだけで特別視しちゃいけないとか、人と違って皆良い、みたいな事を何で言われなきゃいけないんだよな。」
「ああ、特に僕らの世代はカズさんより上だからもっと理解がないよ。」とトモキさん。
「ユウちゃんは良いよー、そんなゲイに寛容な親なんていないよー」とタカシさん。
「そうだよー。しかもあいつらゲイは皆マツコデラックスのように喋りが上手いと思いやがって。あともうちょっと古い世代はゲイは皆黄色い髪にしたがっていると思ってて」
「それは、ウソでしょう。タカシさん!」と祐一が笑う。
「ねえ、そういえばあのゲイの会社員が無理矢理カミングアウトしたってニュース見た?あんなのされるとマジ最悪だよね~。日本の会社、終わってるわ」

あ、と思った。

 タカシさんとトモキさんにはどうして祐一が休職しているかは教えていない。
「そうだねえ。まだ日本の社会は理解が足りないよね」
と笑って祐一が答えた。

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