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3-3 DNAの複製①

 細胞分裂の際にDNAが複製されることはかなり前から言及していたが、その分子生物学的な機構についてはまだ話していなかった。この記事ではDNAの複製についてまずはモデルから学んでいく。

DNAの複製モデル

3つの仮説

アーサー・コーンバーグの実験によって、以下の3つの物質を入れた試験管内で親DNAと同じDNAを合成できることが示された。

  • デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP,dCTP,dGTP,dTTP、まとめてdNTPs)

  • DNAポリメラーゼ酵素

  • 鋳型DNA

 糖+塩基がヌクレオシドで、デオキシリボヌクレオシド三リン酸はヌクレオシド+リン酸基×3である。また、ヌクレオシドにリン酸基がくっつくとヌクレオチドになるので名称がややこしいですがしっかり確認したいところ。 

 DNAが上記の条件下で複製されることは分かったが、どういった機構で複製されるかが問題であった。以下に可能な複製モデルを3つ示す。

  • 半保存的複製:親DNAが新しいDNAの鋳型となり、新しいDNAは古い鎖と新しい鎖1本ずつから構成される。

  • 保存的複製:元のDNAは鋳型になるものの、新しい鎖には含まれない。

  • 分散的複製:元DNAの断片が新生DNAの組み立ての鋳型となり、元のDNAと新しいDNAがランダムに入り混じる。

 ワトソンとクリックの論文の時点では半保存的複製が有力視されていたが、コーンバーグの実験ではそれを確かめることが出来なかった。次に紹介する実験で、それが明らかになる。

メセルソンとスタールの実験

 DNAの複製モデルが半保存的複製であることを確かめた有名な実験。マシュー・メセルソンフランクリン・スタールは、密度標識と呼ばれる手法で親DNAと新生DNAを区別した。
 彼らは大腸菌を$${^{15}N}$$のみを含む培地(塩化アンモニウム培地)で培養した。通常窒素は$${^{14}N}$$であり、$${^{15}N}$$は少しだけ重い。しかもこの重い窒素は非放射性同位体であったため、扱いも容易であった。
 培養した大腸菌のDNAに含まれる窒素原子はすべてこの重窒素になっている。この大腸菌の一部を今度は$${^{14}N}$$培地で分裂させると、その分裂の際には「軽い窒素」を利用して新生DNAを作るが、この時出てきたDNAの重さは$${^{14}N}$$で培養したDNAと$${^{15}N}$$で培養したDNAのちょうど中間の重さになった。さらに分裂二回目には$${^{14}N}$$で培養したDNAと同じ重さのものと、一回目の分裂のDNAと同じ重さのものの2種類が観測された。
 そして分裂を繰り返すと、低密度のDNAが着実に増える結果が得られた。

image by Study-Z編集部

 以上の実験結果から、複製モデルが明らかになる。保存的複製の場合、一回目の分裂では$${^{14}N}$$と$${^{15}N}$$の重さ二種類が現れるはずであり、二回目以降の分裂も実験結果にそぐわない。分裂的複製はDNAの重さがバラバラになるはずであるため、二回目の二種類だけ現れる離散的な結果と矛盾する。
 このようにして、半保存的複製が唯一の正しい複製モデルであることが示された。

以下から引用


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