★5/酸化還元反応 順天堂大学2023A日程第2問/問3

問題

$${1.00×10^{-1}mol/L}$$のヨウ素溶液$${1.00L}$$に硫化水素を通じ、硫化水素を完全に反応させたあと、二酸化硫黄を通じてこれも全て反応させた。遊離した硫黄を除いた溶液を溶液Aとする。ヨウ素、硫化水素、二酸化硫黄は以下の反応式【1】,【2】の反応がおこる。

$$
\begin{split}
&I_2+H_2S\longrightarrow 2HI+S…【1】\\
\fbox{ }&I_2+\fbox{イ}SO_2+\fbox{ロ}H_2O\longrightarrow \fbox{ハ}HI+H_2SO_4…【2】
\end{split}
$$

 溶液$${A}$$を$${100ml}$$ずつビーカー$${B}$$とビーカー$${C}$$に分けとり、ビーカー$${B}$$ではデンプンを指示薬として$${5.00×10^{-2}mol/L}$$のチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定したところ$${80.0ml}$$を要した。ただし、ヨウ素とチオ硫酸ナトリウムは反応式【3】にしたがって反応するものとする。

$$
I_2+2Na_2S_2O_3\longrightarrow2NaI+Na_2S_4O_6…【3】
$$

一方、ビーカー$${C}$$に塩化バリウム水溶液を充分に加えたたころ、$${0.699g}$$の硫酸バリウムの沈殿が生じた。次の問い$${(a)~(d)}$$に答えなさい。ただし、気体を溶解させることによる体積変化はないものとする。必要があれば以下の原子量を用いよ。
$${H=1.0, C=12, N=14, O=16, Na=23, S=32, Cl=35.5, Ba=137, I=127}$$

(a)化学反応式の係数(イ、ロ、ハ)として正しい組み合わせを①~⑥の中から$${1}$$つ選びなさい。

$$
\begin{array}{ccc}
①(1,1,2)&&②(1,2,1)&&③(1,2,2)\\
\\
④(2,1,2)&&⑤(2,2,1)&&⑥(2,2,2)\\
\end{array}
$$

(b)反応式【2】におけるヨウ素と二酸化硫黄、反応式【3】におけるチオ硫酸ナトリウムはそれぞれ酸化剤と還元剤のどちらか。正しい組み合わせを①~⑥の中から一つ選びなさい。

$$
\begin{array}{|c|c|c|c|}
\hline
&ヨウ素&二酸化硫黄&チオ硫酸ナトリウム\\ \hline
①&還元剤&酸化剤&還元剤\\ \hline
②&還元剤&還元剤&酸化剤\\ \hline
③&還元剤&酸化剤&酸化剤\\ \hline
④&酸化剤&酸化剤&還元剤\\ \hline
⑤&酸化剤&還元剤&酸化剤\\ \hline
⑥&酸化剤&還元剤&還元剤\\ \hline
\end{array}
$$

(c)通じた二酸化硫黄の物質量は何$${mol}$$か。最も近い値を①~⑥の中から一つ選びなさい。

$$
\begin{array}{}
①2.00×10^{-3}mol&&②3.00×10^{-3}mol&&③3.00×10^{-2}mol\\
\\
④5.00×10^{-2}mol&&⑤9.20×10^{-2}mol&&⑥1.70×10^{-1}mol\\
\end{array}
$$

(d)通じた硫化水素の物質量は何$${mol}$$か。最も近い値を①~⑥の中から一つ選びなさい。

$$
\begin{array}{}
①2.00×10^{-3}mol&&②3.00×10^{-3}mol&&③3.00×10^{-2}mol\\
\\
④5.00×10^{-2}mol&&⑤9.20×10^{-2}mol&&⑥1.70×10^{-1}mol\\
\end{array}
$$

解答

(a)
特に触れることもないので簡潔に。反応式の係数を求めると
$${I_2+SO_2+2H_2O\longrightarrow 2HI+H_2SO_4}$$
となるので$${(イ,ロ,ハ)=(1,2,2)}$$となり③が正解。

(b)
ヨウ素は$${I_2→I^-}$$に変化しており電子を受け取って還元されているので酸化剤。
二酸化硫黄は$${SO_2→SO_4^{2-}}$$に変化しており硫黄の酸化数を調べると$${+4→+6}$$に上がっているので酸化されていることが分かる。よって還元剤。
チオ硫酸ナトリウムのナトリウム部分は酸化還元反応には寄与しないのでその他の部分に注目すると$${S_2O_3^{2-}→S_4O_6^{2-}}$$に変化していることが分かる。硫黄の酸化数を調べると$${+2→+2.5}$$に上がっていることが分かるので酸化されており、還元剤であることが分かる。
以上から⑥が正解。

(c)
ビーカー$${C}$$において、溶液$${A}$$と塩化バリウムの反応は以下の式で表せる。

$$
H_2SO_4+BaCl_2\longrightarrow BaSO_4+2HCl
$$

この時生じた硫酸バリウムは$${0.699g}$$であり硫酸バリウムの分子量は233であるから$${3.00×10^{-3}mol}$$生じたことになる。
また、この反応式において硫酸と硫酸バリウムの$${mol}$$数は同じである。また反応式【2】において二酸化硫黄と硫酸の$${mol}$$数は同じであり、以上から通じた二酸化硫黄と生じた硫酸バリウムの$${mol}$$数は同じである。よって$${3.00×10^{-3}mol}$$であり正解は②。

(d)
 反応式【3】は反応式【1】【2】で処理しきれなかったヨウ素を滴定する操作を表している。ここで滴定に要したチオ硫酸ナトリウムの量は$${5.00×10^{-2}mol/L×8.00×10^{-2}L=4.00×10^{-3}mol}$$である。よって残っていたヨウ素はその半分の$${2.00×10^{-3}mol}$$である。
 (c)で通じた二酸化硫黄が$${3.00×10^{-3}mol}$$であることが分かったが、これは反応式【2】より還元されたヨウ素の量と等しい。つまり、反応式【2】【3】で合計で$${5.00×10^{-3}mol}$$処理したことになる。しかしこれはあくまでも$${100ml}$$のビーカー内での処理量なので、実際は$${10}$$倍の$${5.00×10^{-2}mol}$$処理している。
 そして、全体のヨウ素の量は$${1.00×10^{-1}mol}$$であるので【2】【3】で処理しきれなかった分を【1】で処理したと考えれば良い。よって求めるべき量は$${1.00×10^{-1}mol-5.00×10^{-2}mol=5.00×10^{-2}mol}$$
そして通じた硫化水素の量は反応式【1】よりヨウ素の量と同じなので$${5.00×10^{-2}mol}$$となり④が正解である。


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