あぶらとり紙のはなし
Photo by debupinoko サンクス
全文無料公開。なげ銭サンクス。
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わたしが中高校生の頃は『油取り紙』というものが流行っていた。
それでみんな皮脂を取ったものだった。だいたいポケットティッシュのサイズぐらいの大きさより少し小さいくらいのもので、そのうちに「京都から出た」という油取り紙がすこし流行って。
「さすが京都のは和紙が有名なだけあって油がよく取れる」などと、なんかよくわかったようなわからないような話をみんなでしていたものだった。
そのうちにティッシュでも意外と油がよく取れるんじゃないかとなり、みんながティッシュをつかいだし、あぶらとり紙は見かけることがなくなっていった。
今日たまたま ハンバーグを レストランで食べていて顔に皮脂が浮いているのを見かけて油を少しポケットティッシュで拭いたので、思い出したところだった。
あのころはマットな皮膚感がよくて、いまのファッションように顔も髪もペタペタつやつやとはまったく違う傾向がメインだった、かもしれない。いまでもわたしにとっては髪も皮脂もマットなほうが好ましく思えるのだが。
(ついでながら、いまのティーンエイジャーなどに流行っている太くて白っぽいはげの多いジーンズはわたしの世代から見ると恥ずかしい典型であった。わたしの世代では濃い色または思い切りダメージのどちらかだったと思われる。)
皮脂というのは、前に皮膚の本を読み終えて思うに、人間の外界とのバリア機能を果たすために発動している、免疫や修復または維持として働いてくれている資源エネルギーだ。
おそらく、思春期の皮膚乾燥や皮脂過剰などは「洗いすぎ」が主な原因であろう。洗いすぎたダメージを皮脂で治そうとしてくれているのを邪魔だと思ってまた洗いすぎにより荒らしていく。
しかし、むかしは今と違って、なんでもググる*なんて無かったので、なんでも調べ物はひとに聞くまたは雑誌または図書館の出番であった。ものは知らないのが「ふつう」の時代である。いまスマホで限定的な情報は増えたが、賢くなったかと思うに、どうも難しい。
われわれは、きっと今もあの、不要なほど使われた油とり紙のさらさら薄い紙ケースすなわち無知と青春のシンボルを胸ポケットのどこかに持っているのではなかろうか。世にはググれないことが、きっとある。
約20年前の話である。あっという間だな。
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※ググる……Google検索エンジンを使用してインターネットに誰かがアップロードした情報のみの中で検索して閲覧し、情報を得ようとすること。
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